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455 慶應義塾大学医学部に栃木県地域枠

はじめに

7月26日付で「慶應義塾大学医学部栃木県地域枠の設置について」というお知らせが同大学のホームページに掲載されました。慶應義塾(慶應)のホームページを次に紹介します。

今日の教育コラムでは、この動きについて少しお話してみたいと思います。

概要

栃木県は、地域の医療を担うだけではなく、高度な医療を実践し、医学研究を牽引する「ハイレベル」な医療人材を確保するために慶應義塾大学医学部と地域枠を設けるという協定を結びました。
実施は、2年後の2026年度の入試から適応となります。栃木県地域枠の学生を1名受け入れることを目的としています。これに関わるスケジュールもすでに公開されています。

2025年
慶應義塾大学医学部一般選抜(栃木県地域枠)募集要項公開、説明会

2026年
出願(1月)
慶應義塾大学医学部一般選抜(栃木県地域枠)(2月~3月)
栃木県地域枠スタート(4月)

また、この制度を用いて医学部への進学をした場合においては、慶應義塾大学医学部卒業後、栃木県内において一定期間勤務することを入学条件としています。地域枠学生に対しては栃木県から修学資金が貸与され、勤務期間の満了によりその返還が免除されるとのことです。慶應義塾大学医学部がこうした形で地域枠というシステムを導入するのは栃木県が初で、現在では唯一のものとなります。

他の受験者への影響

この表は、ここ3年間の慶應義塾大学医学部の前期試験の募集人数などをまとめたものです。2019年度までは68名で一貫していましたが、2020年度以降には66名とわずかに減少しています。

慶應義塾大学医学部 志望者数等(過去3年分)

倍率は、3年以上前にもさかのぼると平均して約10倍から8倍といったところかと思います。受験生の人口が減少している社会の状況とはいえやはり人気も知名度もずば抜けています。
ちなみに慶應義塾大学医学部は、後期試験や学校推薦型選抜、総合型選抜などを実施していませんので、今回の地域枠に関しても前期の一次を実力で突破することは他の受験者同様に必要条件になります。
慶應義塾大学医学部の前期試験では、実際には募集人数のおよそ3倍程度の合格者を出します。募集人数が66名であれば、約180名は出す計算になります。慶應義塾大学医学部を受験する学生というのは、東大理科Ⅲ類や東京医科歯科大学医学部を併願する高学力の受験生が多いため、国公立大学と併願している場合に私立大学への入学を辞退する受験生も多いのです。そのため、あらかじめ募集人数より多めに合格者数を出す傾向にあるのです。

地域枠のもつ意味

慶大学医学部の学費は年間約400万円、卒業するまでに約2400万円かかると考えていいでしょう。これは学費だけですが、私立大学医学部の中では3番目に安い金額となります。他の私立大学医学部の年間平均が約500万円という数字と比較するとわかりやすいかもしれません。
地域枠制度は、都道府県による貸与型の奨学金制度で、都道府県の指定する区域で一定の年限従事することにより返還を免除されます。現在この地域枠の利用が広がっています。2007年から本格的に導入された地域枠制度ですが、当初は定員の約2%程度でしたが、2020年には定員の約20%にまで増加しています。また、地域枠制度の離脱率は、2013年は12%程度でしたが2020年には0.1%程度と激減しています。地域枠制度の離脱率の低さは着目するに値する数字だと思います。
学費を貸与されていることも関係しているかもしれませんが、やはり優秀で学ぶ意欲が高い学生が多いことがもっと関係しているのでしょう。

今後の影響

医師を目指す学生にとって大きな希望となることは間違いないのが地域枠です。栃木と言えば、独協医大や自治医大などがありますが、今後、慶應医大とも栃木が強いつながりを持っていく可能性もあるのではないかと思われます。地域と医学部のコラボレーションがますます今後も進んでいきそうな気がします。

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