350 国際弁護士
はじめに
大谷選手の元通訳であった水原氏が、銀行詐欺という罪でアメリカの連邦検察当局に訴追されています。大谷選手が財産の一部が盗まれたわけですが、罪状は、銀行を騙して大谷選手の財産を不正に送金させたという形で裁判が行われています。
大谷選手の被害額は、1600万ドル(約24億5000万円)以上となっており、日本だけではなくアメリカの犯罪史上でもダントツに巨額の被害額ということもあり注目が集まっています。
今日の教育コラムでは、この事件そのものの話ではなく今回の事件の司法的な対応についてテレビなどで明快に解説している国際弁護士の方々の姿を見ていてとても興味をもちました。中でも清原博弁護士の説明は明快でとても魅力的でした。今日は、そんな魅力ある方々の多い国際弁護士という仕事について少しお話してみたいと思います。
国際弁護士になるために
日本で国際弁護士をめざすためには、次のようなステップを一般的に踏んでいきます。
(1)予備試験に合格するか法科大学院に通う
(2)司法試験・司法修習を共に合格し弁護士資格を取得
(3)国際案件の多い法律事務所に就職する
(4)国際案件に携わり、スキルや知識を身につける
(5)国際弁護士として事案を取り扱う
見ていただいて分かるように、弁護士の資格を取り国際案件を多く取り扱っていくことで国際弁護士と名乗るといった形になります。特別に国際弁護士という資格はないわけですが、日本と外国の弁護士資格を持っているような方は国際弁護士と考えてもいいのかもしれません。
一口に国際弁護士といっても
①日本と外国の弁護士資格を保有している弁護士
②日本の弁護士資格のみ保有している弁護士
③外国の弁護士資格を保有している弁護士
といったような形で様々な弁護士が存在しているというわけです。
国際弁護士に必要なスキル
国際弁護士には、英語力が必要になります。日本で一般の弁護士が業務を行うなら、英語が必要になる場面は限られていますが、国際共通語として多くの場面で英語が使われています。
クライアントとのやりとりで話す場面も各場面でも、法律の関連文献や判例などを用いる場合も英語は必要なわけです。国際化していく社会では、もはや黙っていても英語を使う場面はどんどん増えていくわけですが、国際弁護士は世界中を活躍の場にできるわけです。
そのためには、ネイティブに匹敵するほどの高い語学力を持っていることが最低限必要です。アメリカの司法試験に何とか合格できるくらいのレベルでは、実務では使い物にならないと言われています。
求められている英語力
国際弁護士を意識している人の中には、アメリカのロースクールに留学する人も多数いますが、留学するためにも一定の英語力がなければ無理です。
高い英語力を持っていることは、依頼人とのやりとりだけではなく、裁判の場でも重要な点です。
こうした高い英語力が身についているうえで、国際弁護士には、傾聴力、交渉力、コミュニケーション能力、事後処理能力、論理的思考力といった優秀な弁護士に必要な資質と多様な価値観を持っている人々と関わる能力が重要だと言われています。
どんな仕事?
日本国内の案件に携わる弁護士は、民事・刑事などの事案について弁護活動をします。国際弁護士も同様に日本国内の案件だけではなく次のような国際的な案件に携わります。
・外国との国際トラブルに関わる法律相談
・国内企業と外国企業の取引
・外国の法律に沿った契約書の作成
・国際的裁判における弁護
・日本企業の海外進出
・外国企業の日本進出
因みに、アメリカのある州で弁護士資格を取得して、日本の弁護士資格を取得していない場合は、日本国内での弁護活動はできませんが、国内の弁護士とチームを組んでアドバイザーとして、弁護や法的な事務処理に関わることはできます。
弁護士という仕事の性質上、分かりやすく端的に物事を伝えることや状況を判断し、自分の言葉で話すなどといった力に長けているわけです。だからテレビのコメンテーターとして国際弁護士の方が出てくると、見ていて聞いていてすごくわかりやすく感じます。
やはり、能力やスキルというものは仕事に応じて磨かれていくものであり、国際弁護士というマルチタスクを必要とする仕事は、かなりそうした能力に特化されている必要があるのではと感じています。