見出し画像

伊坂は「吉田博展」に行った

 3月の初めに、『没後70年 吉田博展』に行った。場所は東京都美術館。イヤーーー。良かった……。本当に良かった……。こんなに深く呼吸をしているのは久々だと感じたし、それは絵画に描かれた空気が、この会場をも満たしているからだと何度も思った。
 山の空気を吸うみたいな体験。
 日の当たっているところ、当たっていないところ。
 それらの空気が交じり合って、自分の腕や首を『ふっ』とかすめていく感覚。
 本っ当に良かったんですよ。明るすぎない屋内空間で、心ゆくまで展示に感動できて……。いい時間だったな……。どう感じるべきとか、次あれしなきゃとか、そういうのが全くなかった。気づいたら2時間過ぎてたし。目の前のものに心を委ねて、何か感情未満のもので心身が飽和するのを楽しめてた。そんな感じだったよ。ほんと絵画展って不思議。間近く寄ってじっと見てたのに、いつしか二歩三歩と離れて棒立ちになってるの。途方も無いものを眺めているような。緻密で雄大なうねりの中を歩いてた。

 確かどなたかがRTしてくれた情報で知ったと思うのですが、吉田博展。あのRTが無かったら今の私は無い! 皆さんのRTによって生かされてるよ。本当にありがとう。でね。なんで急に美術館行ったんだよっていうのをね、日記として残しておきたいと思った。そう。まあ緊急事態宣言が関係しているんですね。

 2021年1月7日。1都3県に緊急事態宣言発令。
 この緊急事態宣言は2/7まで続いて、品川にある『原美術館』が41年の歴史に幕を下ろし、ひっそりと閉館していた。
 えっ……
 美術館って、行けなくなるの?

(老朽化のため閉館だったらしく、コロナのためというわけではないらしい)
 ウソ……。美術館って行けなくなるの……。友達いないくせに「いつか誰かと行けたらいいな」とか悠長なことを思ってたから……。普通に悲しかった。知り合いが「好きそう」ってオススメしてくれてたのに。
 公式HPの『閉館しました』って文字を見ながら項垂れた。原美術館設計したのってトーハク本館を設計した渡辺仁だったんだよな。調べれば調べるほど行きたかったなっていう後悔が募る。うう……。

 行けなかったからって死ぬわけでも病むわけでもなんでもない。でも本当に「なんでもない」のかな。美術館に限らず、色んな舞台や展示が中止になってて、いや、もう行けるときに行こう、緊急事態宣言明けたら行こう! って腰を上げてかなきゃ、心まで意味のない自粛モードに陥りそうで、それが嫌だった。無理に用事作って外出するとかは絶対しないけど(基本は体力ゴミカスのインドアオタクなので)、行きたい場所へ行くという権利を、自由を、許される範囲では行使したい。そして行ったのが吉田博展だった。

 そしたら本当に、本当にいい時間が過ごせて、うわ美術館っていいじゃん…! こういう疲れ方好きだなって。

 それで記念にミュージアムショップで(うわ全部素敵!)(これも買おう!)ってポストカードを買った。ポストカードはいいぞ。お土産に最適。数枚買ってもお安いので罪悪感がない。これは母に送ってあげよう、これは後輩ちゃんに。これとこれは自分用。結構買った。でも素敵なものを買っちゃったゾ! と嬉しかった。

 それで〜、それでそれを飾るためにさー、後日地獄のような工作会を一人開催することになるんだけど……、その話はまたおいおい(笑)

「暮らす」の話をすこしずつ