ロック好きは、先入観ナシで「きのホ。」を聴くべし。

アイドルにもロックはあるんだと気づいた話。
ロック一筋で、特にアイドルに興味はない自分が、「きのホ。」を聞いて、ちょっと違うぞ!?と思ったので、いくらか書いてみる。※注:「きのホ。」は「きのポ」と読む。

わざわざnoteに登録してこれを書いているのは、
「これ、“アイドル”のくくりじゃないやろ」
「とりあえずロック好きは、きのホ。聴いてみれ」
と伝えたくて。

自分がイメージする「アイドル」って、渚でポニーテールのあなたが君を好きでパズルな鼓動で星に嘘をつかない僕を叫んで夢見て想いを追いかけようよ……的な先入観がなきにしもあらず(偏見)。

20年来のロック好きとして、U2、ツェッペリン、RHCPを始めとして、レディヘやOASISはもちろん、Little BarrieやThe La'sとかMy Vitriolとかも好んで聴いてきた。

それを踏まえて、
「きのホ。はロックである」
と、伝えたい。
ロック好きなら、きのホ。聞くべし、と。

学芸会的なお歌唄いでもなく、お遊戯会のような予定調和でもなくて、音楽に生き様を乗せて晒して、リスナーに刺激や疑問や、ときに闘争心や意味を生み出すのがロック。
そう考えている身として、きのホ。はロックを体現してる(ように見える)。

「ロックの定義」は、もちろん人によっていろいろそれぞれ。
ただ自分の解釈で乱暴に言うなら、ロックは「現状に満足してない人たちの唄」であって。歌唱の巧拙は二の次。ピストルズ然り、初期のU2然り、サンボマスターもそう言ってる。

共有できる感情だったり、「じゃあ自分は?」と考えるための示唆があって、そこからの解放があってこそのロック。
一方で「アイドル」の曲は、いつでも無条件に寄り添って応援して共感してくれる(※個人の印象)。

と考えるとしたら。
きのホ。の曲は、寄り添わない。

「君らは今 こんな時代に生まれてきて何にも感じないの」
「今は頑張らなくても良いという歌が増えて 同意できない」
「この闇に触れてから 同じ台詞言ってほしい」
「お前はいいけど俺は嫌 俺はいいけどお前は嫌」
「私には私のリアル 君には君の詩がある それだけでいい」

寄り添わない。
応援なんてしない(笑)

反抗こそがロックだとは思わないけれど、きのホ。(の歌詞で)は、あなたの気持ちわかるよとか、一緒にがんばろうとか、そのままでいいよとか応援するよ、なんて「アイドル」みたいなこと、言わない
キラキラ明るい世界の人間があなたを想う、みたいな曲じゃない。むしろ、アイドル(=偶像)なんかじゃなくて、もがく姿や不満や、葛藤や視点や風景を晒すのみ。
って、……ロックやん?
(ロックでも、オフスプとかJETみたいな歌詞はあったりしつつ笑)


歌詞だけじゃなく、もちろん音だってちゃんとロック。
現状リリースしている音源はアルバム2枚、シングル3枚。
その中でも特に、直近のシングル4曲は、ただただロックの音を出してる。冒頭の30秒でわかる。気づく。

4曲聴いてもたったの2分。
きのホ。の曲を聞け!2分だけでもいい。急いで聞けよ、と。
SpotifyAmazonApple

『片鱗』なんて、いきなりギターで切りつけたかと思えば、直後のベースはマーカス・ミラーですか?フリーですか?ドラムはBloc Partyですか?(言いすぎですか?)

『渋滞』では、ツェッペリンばりのリフに、ファンク感の漂うリズム隊。ビッグビートで進みつつ、2'16''からの展開なんてわかりやすすぎるくらいにRHCPのオマージュ。(なぜだか2019年グラミー賞のダフト・パンクとファレルとスティービーワンダーを思い出した)

ってくらいに、ロックの耳で聴いたら、ロック好きの琴線を刺激する。
「アイドル」の先入観で聞けば、そりゃ「こういうアイドルの曲もあるのね」かもしれないけれど、ロックの耳で聞くとちゃんとロックやってる。

2枚のアルバムは、ボーカルに引っ張られて聞くと「アイドル感」の印象は確かにある。まだまだ拙いし、当然アイドルとしてプロデュースする上で、アイドルっぽくしてる部分もあるんだとも思う。
ただ、その中でも3割ちょっとは、ちゃんと「ロックしてる」曲が紛れてる。

『夜の庵』や『預言者』、『やなやつ』、『ブリリアント帰り道』、『観月京』あたりは、裏で流れてる音がぜんぜんアイドルの曲じゃない。
『観月京』なんて、かつてのアジカンが「ちょっと中華風な曲を」って演っていたと言われても違和感がないし、『預言者』のギターのカッティングと後半のベースの渋さよ。『ブリリアント帰り道』のドラムのスマパン感、『やなやつ』だってミッシェルの新曲かと……はちょっと違うかも。

まあ、どこまで行っても、音楽の趣味は人それぞれ。
ロックの定義もアイドルへの向き合い方も、人それぞれ。
それらを大前提としながら、結局何が言いたいのかというと、

「きのホ。」は、アイドルグループじゃないぞ!?
という話。

ああ、伝わるかな……。
つまりは、5人組の若い女性のメンバーを「きのホ。」として見るとアイドルっぽいけど、きのホ。を「プロジェクト名」だと捉えてみると、見え方が変わるし、なかなかにロックなプロジェクトチーム。

5人の女性メンバーが「きのホ。」というよりも、「きのホ。」という器があって、そこにプロデューサーやらミュージシャンやらファンの意向やら、不満や変化や反抗や疑問までも含めて、ロックの要素をぶち込んでる。5人のメンバーはそれを前面で表現する役割。

そんな捉え方で見てみると、ロックファンが「きのホ。」を見逃すのはもったいない気がしてくる。

メジャーデビューから10年の時を経て、きのホ。の全曲の作詞作曲を担当するハンサムケンヤ。アイドル業界の経験もなく、異質のコラボ(どぶろっくやDOTAMAや眉村ちあきとか)やイベントを仕掛けるプロデューサーの新井ポテト。そもそもの始まりは、奇才の漫画家うすた京介がかかわってる。
その上、世界的に評価されてる映像作品をつくる杉本晃佑がMVを担って、各楽曲のギターはメジャーからインディーズまで活躍するプレイヤーが個性に合わせて入れ替わる。レコーディングは、くるりにもかかわるstudio SIMPOの小泉大輔。さらにはなぜか、元ラーメンズの片桐仁までも巻き込んでる……。

他のアイドルがどうなのかはわからないけど、これだけで充分ロック。
ロック好きとしたら、ビートルズでのエプスタインの活躍(暗躍?)も、レッチリのギタリスト交代劇も、U2の三部作ごとに変わる作風も、ビョークとミシェル・ゴンドリーの連携も、そこまでを含めて一喜一憂、歓喜落胆をしてきたはずで。

だから、
そこまで含めて、きのホ。はロックである
と、言いたい。
異論反論はいくらでもあるのは承知で、ただ「ロック好きの自分として、すごいと思った」という話をつらつらと。

きのホ。official

5人のメンバーにしても、たかだか1年半の活動で急激に成長しているのが音源を聴いていても感じられる。それこそメンバー全員が、「現状に満足してない人」たちのようで、現段階での巧拙を抜きにしてロックの素養を感じてる。

そういうところまでを含めて、ロックファンこそ、きのホ。を聞いてほしいという想いを込めて。ロック好きの人たちに、きのホ。広まれ!!

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