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コミケで1冊も本が売れなかった話。

まえがき

 8月14日、記念すべき100回目のコミックマーケット2日目に、サークルとして初参加した。地方勢の私にとって、これを書き始めた18時21分は、帰りの飛行機に乗るべく空港に向かっているタイミングである。
 単刀直入に言うと、初参加のコミケで本が1冊も売れなかった。お手伝いしてくれた方にスペースを任せていた時間もあったので、確定ではないが、多分参加者の誰1人も見本誌すら開かなかっただろう。

 「コミケ 0冊」で調べると、私と同じような人が沢山出てくるし、今では壁サークルの人でも、昔を振り返ってその話をしていたりする。つまり、自分が作った本が売れないこと自体は珍しくないようだ。
 とはいえ、この事実に対して何もアクションをしなければ、恐らく次回作を出しても誰の目にも留まらないだろう。今回は自分自身の考えの整理として、また、もし自分と似たような境遇になった方に寄り添えればと思い筆を取った。書き殴りの文章なのでどうかご容赦いただきたい。
 さて、ではどうして1冊も売れなかったのかについて考えていこう。

どうして売れなかったか

 まず、出した本について。
・2013年にサービス終了したギャルゲー「君と一緒に」の期間限定ヒロイン「中島瑞穂」について描いた本。超絶マイナー。今のインターネットで知っている人は私だけじゃないかと思うし、実際に2万ものサークルがある中で当サークルしか同作品の同人誌を出していなかった。ゲスト寄稿する際も、絶対に相手が知らないキャラだが構わないか確認した。
・B5 14ページ。扉と奥付が1ページずつ、ゲスト様の寄稿関連が4ページなので実質8ページ。そのうち5ページが漫画やイラストが入っているもので、3ページは文字のみ。
・同人誌どころか漫画ページの製作自体が初めてで、漫画の描き方から原稿データの作り方まで分からない状態から描き始めた。

……言いたいことはわかる。でももう少しだけお伝えしておきたい要素がある。

 サークル主=私について(2022/8/14現在)。
・サークル運用しているTwitterのアカウントはフォロー21人、フォロワー30人。ほとんど呟いておらず、お品書きについても前日22時ごろに投稿した。
・上記のツイートを拡散していた日常垢はフォロー121人、フォロワー141人。
・Twitterを使っていて何かがバズったことどころか、RTやいいねを合わせて20件を越えた記憶が無い。
・Pixivのフォロワーは51人。
・今までで1番反応があったイラストは閲覧数600、いいね70程度。

 お待ちいただきありがとうございます。それではご唱和ください。
「どうして売れると思った?」

 おっしゃる通り、振り返ってみると売れない要素しかない(内容については恐らく誰も見ていないので今回売れなかった要素には関係が無い)し、それに対して異論は全く無い。だから、一冊も売れなかったことに対してのダメージ自体はそこまで大きくはない。

どうして売れると思ったか

 逆に、「まあ完売は無理でも何冊かは売れるだろう」と慢心していた理由についてもお伝えしておく。
・毎回数万人が訪れるコミケなので自分の絵を見て買ってくれる人がいるだろう。
・コミケWebカタログでお気に入り数が9件あったので、その数くらいは買ってくれるだろう。
・コミケ開催中にお品書きツイートやpixivの投稿に2件程いいねがあったので、買ってくれるだろう。

 特に1番上が大きい。コミケ準備会のツイートを見るに、C100の2日目の参加者数は約8.5万人だったようだ。前日は8万人と聞いていた。それだけいれば、1人くらいは本を買ってくれてもいいんじゃないか?という気持ちになってしまう。
 しかし、全員が当サークルの前を通る訳ではないので、本が売れるかどうかに関してはこの数字に大きな意味は無い。開催前はそれに気づくことは無かったが。
 それに加えて、どのサークルもマジでめちゃくちゃ絵が上手い。設営のタイミングから、周りのクオリティの高さに辟易した。

 要するに、コミケに煌びやかな夢を見過ぎていたということだ。開場後にだんだんそれがわかってきて、冷静に自分の状況を見つめ直せた。だから、売れなかったことに対して理不尽さは全く感じていない。「薄々そうかと思ってたけど、やっぱりか」といった感じで。
 最初は、開場から閉場までずっと自分のスペースにいるつもりだったが、「誰も手に取ってくれない」という現実を直視できず、何度か買い物と称して席を離れた。ろくにリサーチもしていない会場内を、宛てもなくうろついた。現実に気づいていたものの、流石にそれを受け入れられる器量は持ち合わせていなかった。

どうして売れなかったか②

 それでは翻って、一般参加側の立場から考えるとどうだろう。
筆者は、C93,94,95,99の参加経験がある。過去の経験とC100で回ったサークルについて思い返してみると、以下の共通点があった。
・TwitterあるいはPixivでイラストを見てフォローしていた方のサークル。
・コミケのカタログを眺めて自分が好きなジャンルでなおかつ絵柄が好きなサークル。
・コミケ前日までに流れてくるお品書きを見て、いいなと思ったサークル。

 また、一般参加にも小慣れてきて、今回の参加時は次のようなことを意識した。
・Webカタログで全体に目を通して気になる絵柄、作品を書いているサークルをリストアップ。予め決めていたところのみ購入。Twitterでお品書きが確認できなかったサークルには立ち寄らなかった。

 そう、お気づきの通り、
・各種SNSのフォロワーもほぼおらず、
・全サークルのうち2万分の1の超マイナーな原作で、
・前日の深夜にお品書きを投稿している
ということは、自分がサークルを探す時に取る手法に何一つ引っかかっていないのである。
 もちろんサークルの選定基準や方法は人それぞれだが、逆の立場だった時に自分のサークルが立ち寄る候補に入っていないのであれば売り上げが0冊でも致し方ないのではないだろうか。

 さらにもう一つ。今回は40冊程度の同人誌を購入したが、業の深いことに「買ってよかった同人誌ランキング」なるものを自分の中で作っていた。そこでふと、自分の同人誌はどこだろうと振り返ってみると、そもそもランキング圏外だった。コミケで頒布されている本のレベルの高さと、自分の稚拙さを思い知ってしまった。コミケには「本気」のヤツしかいない。もちろん自分の本も、今出せる全力で作り上げた作品ではあるが、練度が違い過ぎた。

あとがき

 と、散々ここまで描いたものの、軽い気持ちで同人誌を作ったことについては全く後悔していない。なんならC101にもし当選すれば、同じ原作の新刊を出そうとまで考えている。今回の1回の経験だけで筆を折るのは簡単だし、似たようなケースでショックを受けて活動から離れてしまう人も少なくないと思う。けれども、たとえ1冊も売れなかったとしても、今自分が出せる全力を出して作った本だと思えるから。加えて、自分が作りたくて作った本だから。

 ただ、一つだけ申し訳ないと思っていることがある。それは今回お誘いしたゲストの方々についてだ。前述したような、自らのエゴで知りもしないキャラクターを描かせておいて、己の実力不足でゲスト様の絵が世に広まらないのは本当に悔しい。元々イベント後には公開して構わない旨はお伝えしてあるが、それでも辛い。これから少しでも上手くなって、手に取ってもらえるような作品を作りたいと強く思う。


 創作活動をされている方は、人それぞれ「創作する理由」があると思う。私が今回の本を作ろうと思ったのは、「俺の嫁の魅力を知ってほしい」と思ったからだ。1冊も売れなかったなら、その目的は達成できたとは到底言えないだろう。
 何度も読み返しているnote記事の中に、「成長の陰には努力と時間の浪費があって当然」という言葉があり、この言葉が好きだ。今回の自分の経験も、後から振り返った時に「成長のために必要だったんだ」と思い返せるようになれればいいと思うし、そうなりたい。

2022年8月14日 横月レイジ


Twitter:https://twitter.com/Dishonazy

Pixiv:https://www.pixiv.net/users/7764450



2022/8/22 追記
C101応募のサークルカットが出来ました!

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