誕生日を知らない超ブラック企業勤めの青年が慶應義塾大学への進学を目指した話①

序章

初めてダイキ(仮名)君と会ったのは2016年の11月。出会いのきっかけはとある家庭教師掲示板だった。そこを通じて一通のメールが私の元へ届いた。

「一人でここまで勉強してきましたが、これからどのように勉強をしていいのかもわかりません。アルバイトしながら生活し学校に通っています。このままだと今後もまともな生活ができるようになるとは思えません。今後の人生と今までの自分を変えるために大学に進学したい。できれば東京六大学のどこかへ行きたいのですが、こんな自分でも可能性はありますでしょうか」

 このメールの送り主は、当時高校3年生のダイキ君である。彼のメールからは熱意とともにある種の焦りが伝わってくる。高校3年生がこのタイミング(受験まで残り3か月ほど)で家庭教師を依頼してくるということは、経験則でいうとかなり難しい(偏差値40くらいから残り3か月で逆転したいなど)依頼内容だろうと推測できる。しかし他の家庭教師に断られた結果、行き着いた先が自分である、クモの糸の立場になっていると勝手に想像すると断ることはできなかった。そして、それは彼との長い長い二人三脚のはじまりでもあった。



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