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大麻取締法の改正を噛み砕いてみる③政令

 新たな大麻栽培法の中で、細かい基準などは「政令で定める」とされています。この「政令」について、どう改正されるのか見ていきたいと思います。
 なお、これを書いている2024年7月11日現在、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令はまだ公布されていません(7月上旬公布予定だったのですが)。
 ですので、厚生労働省ウェブページにある、関係政令改正案への意見募集(パブリックコメント)に掲載されている内容を見ていきたいと思います。

【①麻薬及び向精神薬取締法施行令の一部改正】

  1. 麻薬営業者は、(紙だけでなく)情報通信技術を利用して麻薬の譲受証に記載すべき事項の提供を受けることができるが、この提供を受けることができる者に「大麻草栽培者」を加える。

  2. 精神保健指定医は麻薬中毒者の診断のため「体内の麻薬の有無」を診査するが、この「麻薬」に大麻を加える。

  3. その他所要の規定の整備

【②麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令の一部改正】

  1. 科学的変化により容易に麻薬を生成する「みなし麻薬」として、デルタ9THCA、デルタ8THCAの2物質を指定する(麻薬と同様に規制する)。※大麻草にはTHCは微量にしか含まれておらず、多くはTHCAの形で存在しています。THCAは喫煙など熱を加えることでTHCに変化します。

  2. THCが含まれていても「保健衛生上の危害が発生しない量」であれば麻薬からは除外されるが、その濃度基準は①油脂は0.001%、②飲料は0.00001%、③その他グミやクッキーなどは0.0001%とする。

  3. その他所要の規定の整備

【③大麻草の栽培の規制に関する法律施行令(別途制定予定)の一部改正】

  1. 第一種大麻草採取栽培者(産業用)は、THCの含有量が基準値以下の大麻草の種子を使用して栽培しなければならないが、この基準は、大麻草の乾燥重量に占めるTHCの重量の割合を0.3%とする。

  2. 第二種大麻草採取栽培者(医療用)の免許申請手数料は180,600円、再交付手数料は12,300円とする。

【その他関係政令の一部改正】省略します。

 以上です。
 ①は、手続き上問題がないように、という改正内容と思います。
 ②では、CBD製品などのTHC含有量の濃度基準が定められています。この基準は、欧州食品安全機関が健康に悪影響を示さない一日当たりの摂取量として結論づけた「体重1キログラムあたり1マイクログラム」を参考に、体重50キロの人が国民・健康栄養調査における油脂、飲料、 菓子類の標準的な摂取量をとった場合に悪影響がない濃度、として算出されています。
 加えて、他国における CBD製品に係る基準値の区分を参考にした、と書いてありますが、他国の具体的な基準値の記載はありません。他国の基準値ではなく区分だけを参考にしたようで、ちょっと違和感があります。この基準には「厳しすぎる」との声も見かけますので、設定の経過など、もう少し調べてみたいと思いました。
 ③にある、産業用大麻のTHC基準0.3%というのは、厚生労働省の第2回大麻規制検討小委員会(令和4年6月29日)の資料にあるアメリカとEUの基準と同じようですので、これに合わせたようです。アメリカは1.0%への引き上げの動きもあるようですが、国産の低THC品種「とちぎしろ」なら0.3%はクリアできると思いますので、農家さんにとっては問題ない基準ではないでしょうか。

 ひととおり見てみると、揉めるのは②の濃度基準ですね。パブリックコメント前後で内容が変わることってあまりないイメージですが、汲むべき意見が寄せられたので予定より公布が遅れているということなのでしょうか。
 今後も動きを追っていきたいと思います。


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