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ラーメン大好き岡本さん

今日はスペースインベーダーの日なんだそうだ。だからゲームセンターの事について書く。

先日、大阪のゲーセンのコーハツに行って20年ぶりくらいに初代サムライスピリッツの対戦をしてきたんだ。
自分は昔から持ちキャラの王虎、相手は覇王丸だった。
しかしこの覇王丸、牽制の立ち中斬りと対空の立ち大蹴りしかしてこないガン待ちの覇王丸だった。覇王丸と言えば立ち大斬りなんだがそれもしてこない。ひたすら安全な戦法を取り続けるその立ち回りにすっかり醒めきってしまった。
このゲームがリリースされた1993年当時は自分は学生で仲間等と昼休みにゲームセンターに行って対戦をしていた。この頃はめちゃくちゃ楽しかった。まだ情報が行き届いていなくて各キャラの戦法も確立されておらずみんな手探りでやっている混沌とした状態だった。だからこそ面白かった。対戦ゲームというのは初心者でもワンチャンあれば勝てるんじゃないか?と錯覚させるくらいが一番面白いのだ。それがリリースから30年の時間が経過して対戦のセオリーが確立され上級者による煮詰まった対戦しかない状態になってしまった。それで思った。もうこのゲームは役目を終えたのだと。1993~1994年のまでの間に沢山の思い出をくれてありがとう。今はなき梅田の4ビルキャロットの大会に出て王虎でシャルロット3人をぶった斬った思い出とか、友人の家のネオジオで泊まり込みで対戦に明け暮れたあの日とか、その時にしか味わえない貴重なゲーム体験が出来たのだ。むしろ幸せだと思わないと。

ゲームというのは賞味期限のような物がある。例えば今の時代にドラゴンクエストIをやるのとファミコン当時にドラゴンクエストIをやるのとではゲーム体験というものが違う。今の時代のリメイクされたドラゴンクエストの方が操作性とかレスポンスとかゲームバランスとか見直されモダン化されているが、しかしファミコン当時攻略情報も無く学校のみんなと話題にして情報を生で提供しあって攻略していたあの頃の方がゲーム体験としては豊かなのだ。この豊かなゲーム体験はもう取り戻せない。いくら金を払っても時間は取り戻せない。

最近switchでソーサリアンが配信されたが、もうこの作品を今やっても意味がないんじゃないか?と思える。1987年の当時にPC-8801mkIISRをという高価なパソコンで遊んだから感動があったんだと思う。あの当時に古代サウンドを聴いてマシンの性能を最大限に引き出した全画面フルカラースクロールとかデカキャラとか珍しくて面白かったのだ。
自分がゼロ年代にのめり込んだゲームジャンルのFPSでもQUAKEIIIやUNREAL TOURNAMENTを超える感動というのはこの20年得られていない。
スマホゲームのINGRESSも2015年の沖縄アバドンに行って世界規模のゲーム体験をして盛り上がれた。
インベーダーゲームの時代からこういう風にゲーム体験をして感動とか盛り上がりとか熱狂とかリアルタイムに得ることが出来た。それは幸せな体験だった。INGRESSで沖縄に行ったのがあまりにも楽しかったので後に「沖縄って楽しいんだ」と思い一人で行って観光名所を巡ったんやが全然面白くなかった。後になって追体験しようとして失敗したいい例だな。

もうゲームセンターが再興することもないだろうし数々の思い出だけを当時の人間の心に残してその役目を終えていった。
そして自分は充分に楽しんだ。思い残すことはない。1993年当時も高校を卒業して大阪芸術大学を受験して落ちたんやが、しかしもしも受かっていたらあの近鉄長野線の南河内郡河南町という、奈良の近所のド田舎に通うことになって、多分交通費が掛かるからあのド田舎で下宿することなっただろうし、そうなると仲間等と格ゲーで盛り上がるなんて事は無かっただろう。心斎橋の学校に通うことになったから都会の大賑わいのゲームセンターで浴びるほど対戦が出来たからゲーム体験としては幸福だった。
youtubeで今のストリートファイター6のウメハラの動画なんかを観てても絶対相手に飛び込まない、高火力コンボをミス無く決めるという、相手のミスをひたすら待つような煮詰まった対戦をしていて、これは自分がやるようなゲームではないなと思った。今のオンライン対戦ではなく昔はオフラインで盛り上がれていたのだからどっちが幸せな時代かと言えばもちろんオフラインで盛り上がれた時代の方が幸福だろう。別に誰が悪いとかいう話ではない。ゲームという物には興行的にも賞味期限があるというだけの話で、ゲームセンターはその役目を終えたのだ。

かつて尊敬していた梅田のアクティロイヤルの店長の岡本さんも2003年にゲームセンター店長を辞め東京にラーメンの修行に行った。あの人には散々楽しませてもらったんやけどスッパリとゲームを辞めラーメンの道に行ってしまったのは当時ショックだった。でもその決断は正しかったかもしれない。ゲームセンターにもう明日はないがラーメン屋には明日もチャンスもある。あれから21年が経過したが岡本さんは今頃自分のラーメン店を持っているのだろうか?もしそうなら是非岡本さんのラーメンを一杯食べたいんだが。

自分は岡本さんみたいに綺麗さっぱり転身する事が出来なかった。いつまでもゲームセンターに拘って、世相が悪くなり客の質も低下しDQNが暴れるような店に齧りついたりしていた。正直言って選択を誤ったと思う。あの若い内に岡本さんみたいにラーメン屋の修行とかに身を投じていればよかった。ゲームから卒業するのが遅かった。まだ明日があると信じていた。

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