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実家で親元に居る実子がいちばん大変なのかもしれない

私は冷酷無情な娘だと思っている。

実家を捨ててきたのだから。

両親は、父の定年を機に故郷であるこちらに帰ってきて、私の住処から小一時間のところで住んでいる。
生まれ育ったところのことを思えば、随分もとの家族との物理的距離は縮まった。

母方の祖母の家からそう離れていないので、だいたい場所は知っているが、独身の弟と、日常的に出入りする結婚した妹と、母が居るその家へは行ったことも見たこともない。(父もそばにいるのですが、父のことは今回は省略)

いつからだろうか。
私がどんな理由であろうと、こう気ままに実家のことを、放りっぱなしにできるのは、母の傍で残ってくれた弟や妹のおかげだと感謝するようになったのは。

それは、私が嫁いだ先で、主人と義両親の関係を見てきているからだと思う。

私の実家と嫁ぎ先の我が家で、およそ同じようなことがおこっている。

早い段階で、親から何らかの制裁を受けたり、親とのしがらみを経験した長男・長女は、危機感を持ち、家を出るのも早いかもしれない。

残されたものは、平和かといったら、そうでもない。

親の価値観や考えはそう変わるものでないから、次は残されたものが同じように受けなければならない。
もちろん、家族の形態や、親のタイプや性格によるのだろうけど。

出ていったものが受けた時間より、より長い年月に渡って・・・。

私は嫁いできて二十数年、主人が義両親から受けるさまざまな事で苦悩する姿を見てきた。

主人は、私が嫁いできた当時と、現在とでは、義両親にたいする思いや、見方が随分と違う。
共に生活する時間が長ければながいほど、しがらみも生じるからだろう。
嫁である私は、あるラインを越えれば、「他人なのだから」とある程度割り切れるようになるが、主人はそうもいかない。

だから、一番しんどいのは、実家を継ぐ実子なのではないかと最近思えてきたのだ。

そうなると、母の性格を理解できているだけに、実家の状態もおよそ理解できる。
母の傍に居る弟や妹も苦悩しているのではないかと、想像できる。
特に、妹がいま、その役割をしているのではないかと思う。
母の思いの丈をぶつけやすいのは、妹に違いないから。

昨年、久しぶりに母方の祖母に用事があって訪ねたときに、数年ぶりに妹と会話する時間がとれたお陰で、一番言いたいことがいえた。

ありがとう。
あなたと弟が、母の傍で居てくれるから、私は実家のことを心配しないでいれる。
残されたものは、とても大変なことよく分かってるのよ。
私も、今、目の前で同じことが繰り広げられているのを見ているのだから。

本当に申し訳なく思ってる。ごめんね。

ただの自己満足と言えばそれまでだし、言ってよかったのかどうか分からないけど、姉として妹にできることは、これくらいだった。

言葉にして伝えないと、思っていることも伝わらないし、この機会を逃すといつ会えるかわからないと思って言った。

姉ちゃん、ほんとに大変よ。お母さんの傍で居るのは。

それ以上何を言うでもなく、一言だけ、妹は言った。

それはよう分かってるよ。ありがとう。

それ以上妹は何も言わなかったし、久しぶりに会ったと言えども会話は弾むわけでもなく、短い時間の再会に終わった。

主人にも、上に二人兄弟がいるけど、兄弟からの何らかの言葉があれば少し主人の気持ちも和らぐのかなと、会話をしていて思うことがある。

だけど、もし、独身の弟に嫁さんが居て同居してくれていたら、真っ先に嫁さんに言葉をかけるかな。

私は、主人の両親への苦悩を少しでも和らげることのできる、中和剤になれたらいいなと思う。





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