見出し画像

RTA in Japan Summer 2021 参加レポート#1(技術ボランティア)

この記事は全2回構成の第1回となります。

関連記事や情報

【RTA in Japan Summer 2021 参加レポート】
・#1(技術ボランティア)※この記事
・#2(解説)

【RTA in Japan Summer 2021 反省会配信】
自分の配信で反省会をしました。5時間少々と長いですが、興味ある方は是非ご覧ください。

【過去イベントにおける技術ボランティア関連のレポート】
RTA in Japan Online 2020 参加レポート#1(技術ボランティア)
RTA in Japan 2020 参加レポート#1(技術ボランティア)

ボランティアへの応募動機

 過去記事と一部内容重複する点もありますが、現時点の思いも含めて改めて述べたいと思います。

 RTA in Japanのサイトによると、現在の運営は主催のもかさんを含めて8名のようで、2020年6月に一般社団法人化が発表されたものの、全理事は役員報酬ゼロで活動されています。24時間で複数日程をぶっ通しで実施するイベントでは、運営だけでは充実した体制の確保は難しく、円滑なイベント進行のためにボランティアスタッフの公募をしています。

 私はRTAのプレイはほとんどやったことがない、基本的にリスナーの立ち位置の人間ですが、リスナーとして普段楽しませてもらっているRTA界隈に対する自分なりの恩返しと、自分自身の欲求を兼ねてボランティア活動に参加しています。ちなみにRTAイベントのボランティアをやると、こんなことがお得です!

RTA界隈での交流を増やせる
 ボランティアスタッフは、RTA走者・リスナー問わず応募ができますので、色々な方との交流ができます。イベントやボランティア役割によるかもしれませんが、スタッフ専用のDiscordのボイスチャンネルなどもあり、何もない時は雑談したり、何かあった時にはいつでも相談できる体制が組まれている場合が多いです。聞き専でもそういったところに積極的に参加しておくと、色んなウラ話が聞けたりもしてとても楽しいです。

マニュアル資料が見られる
 イベントでは規模によりけりですが、人数構成は基本的に運営よりもボランティアが多くなる上、必要な作業に対するスキルは個人によってバラつきがあります。ボランティアはイベントに携わることが初めての場合もあるので、初めての方でも問題なく作業ができるように、マニュアル等の各種資料が共有されます。これらの資料の作り具合を見ることで、自分がイベントを開催したい時などに役に立つと思います。

配信に必要な技術やソフトウェアの知識が勉強できる
 RTA in Japanは日本で開かれる大規模RTAイベントであり、配信に必要な技術・機材・サービスなどは、最先端で便利なものを常に模索されているようで、一般社団法人化したことで法人でしか利用できない機材やサービスなども用いられていると思われます。個人レベルでも使えるものはあるので、自分自身が配信活動をしている場合や、同じようなイベントを行いたい時には非常に参考になると思います。

 個人的に特に参考になったのは、配信ソフトウェアであるOBSで、他複数のソースをまとめられる「グループ化」というソースと、ソース表示に色の設定ができる「色の設定」機能でした。いつも使っているソフトだからこそかもしれませんが、知ったつもりになっていて意外と知らない機能があることを勉強させてもらいました。

画像1

技術ボランティアの作業内容

今回のボランティアの役割は4つあって、それぞれ以下の通りです。

・チャットモデレーター
・Twitter管理
・プロデューサー(募集当初呼称:音声担当)
・ゲームシーン管理(募集当初呼称:映像担当) ※ 今回担当した作業

 プロデューサーとゲームシーン管理が、いわゆる配信に関する技術的なボランティアです。私は技術的なことをやりたかったのですが、プロデューサーに必要な音声周りの操作はとても苦手意識を持っている上、オフライン会場でやっていた時のようなごっついミキサーを操作できるスキルが必要なイメージが付いてしまっていたので、結局今までのボランティアでの経験もあるゲームシーン管理で応募して、無事採用して頂きました。

 ただ終わってみて振り返ると、プロデューサーはボランティアの応募人数が少なかったためか、シフトに運営の方が多めに入っていましたし、やってもいないのにイメージだけで決めるのは良くなかったと考え直しました。

 RTA in Japanのボランティアは、運営の方が常時ボイスチャンネルに常駐しているくらいサポートが手厚く、実際今回の私のゲームシーン管理でも、自分ではどうしようもない事態が発生して運営の方に対応してもらったこともありました。どうあっても最後には運営の方に頼らせて頂くことには変わりないので、次回は新たな役割にチャレンジしてみたいと思います。

 さて、今回の配信構成は前回に比べると結構変わっていました。前回はボランティアが操作するPCは1台共有で、そのPCで配信から音声、映像まで管理していたと記憶しています。しかし今回は仮想PCを何と8台ほども用意して、それぞれのPCで役割分担し、ボランティアは各自の役割のPCに、Parsecというリモートデスクトップ的な遠隔操作をするためのソフトウェアで接続して作業を行います。細かい内容は、プロデューサーのボランティア担当だったポンズさんの記事内「技術担当ボランティアの役割」を参照ください。

 詳細は上記記事に詳しい構成図が載っていますが、私なりに解釈した簡易的な図を作ってみました。

画像4

 今回、スタジオAとスタジオBで完全に分かれていて、いわゆる本番中と準備中が都度入れ替わる形となっています。スタジオAで本番映像を流している時は、次の出番が来たらスタジオBで準備し、プロデューサー側でスタジオA・スタジオB・待機画面・CMなどの切り替えを行います。

 前回は上記の図に載っている役割を、1台のPCと担当者2名(PC操作と配信確認)でやっていました。OBSのスタジオモードという、配信に載せる映像を本番と編集中で切り替えられるモード対応していましたが、チェックできる内容に限りがありました。しかし今回の構成では、例えばスタジオAで本番中の場合、待機中のスタジオBのPC上はいくら触っても配信には影響がないので、ほぼ全てのチェックを待機中のスタジオ上で行うことができます。ボランティアが操作するPCでは配信をしているわけでもないので、誤ってOBSを閉じてしまったり、誤クリックで配信終了のボタンを押してしまうなどの事故もなく、安心して操作することができます。

 このやり方によって、個別のトラブルが発生しない限りは次のゲームまでの待機時間がかなり短くできていたと思います。せっかく今回から協賛頂いて待機画面のBGMをご提供頂いていたサクラチルさんには申し訳ないところでしたが…。

 また、今回は走者の配信は主に「SRT」と呼ばれるプロトコルでRTA in Japanの用意するサーバーに送信されていました。これもかなり最新の技術のようで、常に最新の技術情報を追いかけて巨大なイベントで採用するという運営の方々の情報収集力・判断力には頭が下がります。

 RTA in Japanの技術担当であるhoishinさんのツイートによると、今回海外走者もいた中で、10Mbpsの映像が1秒ないくらいの遅延で届いたという報告がありました。また、PCや回線の環境が異なる100人以上の走者が、色んな成功や失敗を含みながらも新しい技術を使ったこと自体が、貴重なナレッジとして蓄積されたという点もあるようです。

 SRTの問題点で言うと、いくつかのケースで「画面の下半分が乱れる」という事象がありました。SRTは「レイテンシ」と呼ばれる通信の遅延時間を設定する必要がありますが、走者は事前に配信テストを行っていて、その際にpingコマンドによってサーバの応答時間から計算した値でレイテンシの設定をしています。

 しかし本番になると同じ設定でも上手くいかず、画面の下半分が乱れてしまうケースが出てきました。その時はまずレイテンシの値を調整してみて、それでもダメな場合は従来の「RTMP」のプロトコルによる配信を使うことで概ね解決していました。新しい技術を導入するにも、もしそれがダメだった場合の代替手段はきちんと準備しておくという大事さがよく分かります。

 ゲーム準備に関することは以上で、ここが作業の大半です。後はゲーム開始と終了の際に、NodeCGと呼ばれるレイアウトを管理する仕組みで、ブラウザ画面の操作からタイマーのスタートとストップをするだけです。タイミングは事前の資料に記載されていて、特にスタートは基本的にカウントダウンで始まるので分かりやすいです。ただ、ストップのタイミングはゲームの性質などもあって掴み辛いところもあるので、走者の方の応募時の動画を見て確認するようにしていました。

 また、これでタイマーストップのタイミングを確認しておくと、次の走者を呼び出す時間(目安は終了の30分前)もそこから辿れば分かるので一石二鳥です。現在進行中のゲームの予定時間が30分未満の場合は、そのゲームに切り替わった時点で更に次の走者を呼び出したりと柔軟に対応していました。こういったこともあって、今回の2スタジオ制が非常に上手く機能していたと思います。

コマーシャル

ーーーコマーシャル開始ーーー

 さて、ここは筆者によるRTA in Japan Summer 2021で披露されたオススメゲームを紹介するコーナーだ! 今回の紹介ゲームは「ギャラクティックストーム」!!

 走者はかわいいライオス氏、昨年末のRTA in Japan 2020では、格闘ゲーム史上最強のボスと言われているジェネラルを倒す必要がある「カイザーナックル」を走った彼、あの時は余りの凄まじいプレイに、エンディングで主催のもか氏が話している時にサブリミナル的な映像が差し込まれたほどだ!(注:ただの不具合です)

 カイザーナックルを走った時は大学生だったらしい彼も、時が経って今回は社会人になっての参戦! RTA in Japan参加が上司にバレても何のその!

 「この作品の魅力は何と言っても曲とグラフィック、そして演出面のオーパーツっぷりに尽きます。」

 「私はこいつを芸術的な映像作品が見られるジュークボックスとよく言ってます。ゲームと言わない理由は至って単純、ゲームとしての完成度は最悪 だからです。」

 「ノーダメージクリアが不可能だと言われていると聞いたんですが、私ができているので可能です。

 「このゲーム、出回りが悪過ぎて相場が不明です。もしも私がヤフーオークションでこのゲームの基盤を出すとすれば私の言い値が値段です。

 開始前でこれだけのパワーワードの数々、ゲームが始まってからもこの流暢なテンションで実況・解説が繰り広げられるぞ! その様子は君の目で確かめてくれ!

 なお、かわいいライオス氏による感想noteもあるぞ、併せてチェックだ!

ーーーコマーシャル終了ーーー

自分から積極的に動いたこと

 ボランティアは、本来の役割をこなすだけでも大変で非常に重要です。しかし、余計なお世話なところもあるかもしれませんが、私個人としては誰から言われたわけではなくとも、皆が助かるかもしれないと思ったことは、積極的に取り組みたいと思っています。その中で、結果良かった悪かったことはありますが、次の2つの事例を紹介します。

非公式マニュアル(虎の巻)の枠組み作成

 こちらは、RTA in Japan 2019(オフラインイベント)の時に思いついてから、以後毎回取り組んでいるものです。24時間ぶっ通しで続いているイベントでは、人間はずっと起きていられないので当たり前ですが、イベント内で起きた事象をすべて把握することはできません。しかし、一度起こった事は概ね二度三度起こることが多いので、それらをまとめておく資料があれば、後の人はそれを読んでおけば多少は楽になります。

 不測の事態はマニュアルではカバーしきれないですし、マニュアルそのものはボランティアで勝手に編集するわけにもいかず、編集するにも都度運営の方にお願いするのも負担となります。Discordのチャットに残していても、ログが結構流れてしまうので追うのが大変です。そこで、ボランティアみんなが書き込める資料の枠組みだけ作成して、あとはみんなで自由に編集しよう!という非公式マニュアルを作ってボランティア内部に共有しました。

 今回、Googleのスライドを全員共有できる形で共有し、イベント期間の計5日間で実に13ページ分も追記されていました。皆さんのおかげで、自分がいない間に発生した新たな問題もスムーズに共有できたと思います。資料の内容は内部情報が入っていたりするので残念ながら公開はできませんが、私の作った最初のページだけ以下に貼り付けておきます。

画像2

 本当に大した内容ではなく「ここにみんなが遭遇した事象を書いて共有しようぜ!」ってだけの、たった1枚のスライドです。こういう仕組みを作ったことで貴重な集合知が集まっていく様子を見て、私個人としてもとても嬉しかったです。

プロデューサー、スタジオのDiscordアイコン作成

 今回、Discord上での走者とのやり取りにおいては、個人のアカウントを使うことがほとんどない仕様となっていました。作業内容で紹介した通り、自分の役割のPCに遠隔操作で入り込んで、そのPCでログインされているそれぞれの役割のDiscordアカウントを使います。

 これによって、走者と解説者は個人名ではなく自分が使う「スタジオAまたはBさん」と対応すればよいので分かりやすいです。また、ボランティア個人のDiscordアカウントとは権限が分けられるので、ボランティア個人が誤クリックで、本番用のボイスチャンネルに入室してしまう(音声が本配信に載ってしまう)ような事態を避けるという効果もあります。

 このDiscordアカウントのアイコンは、アカウント作成時のデフォルトのものでしたが、走者とやり取りする場合、走者はスタジオAかBどちらかしかやり取りしないので、分かりやすいほうが良いなと思ってアイコンを作り、運営の方に一応確認を取ってから変更させてもらいました。

画像3

 しかし、スタジオAとBの変更が上手く行ったと思って、もう一つプロデューサーのアイコンも作って変更しようとしたところ、Discordの本人確認のような機能が働いてしまって「登録した本人の携帯宛のメールアドレスを認証するまで、アカウントが制限されてメッセージのやり取りができなくなってしまう」という事態が発生してしまいました。取り急ぎ、運営の方に連絡して解決したものの、完全に良かれと思ってやったことが裏目に出てしまったという教訓になってしまいました。

シフト割り当て

 今回、驚くほど少なかったです。割り当てがあったのは以下の通りです。

・8/11(1日目)15:00~19:00
・8/12(2日目)18:00~22:00

 以上の1回4時間のシフト2回の計8時間だけでした。私は2回でしたが、他の方は3回の方が多く、私は今回「野生動物運動会」の解説も担当していたので、1回分少なくしてくれたのかもしれません。

 私は毎回、RTA in Japanの時は気合を入れて全日程を休みに入れるようにしていて、今回も全て仕事を休みにすることができました。なので、個人的には1日に1回のシフトくらいなら入っていても良いという気持ちで、応募時の参加可能時間も全部チェックを付けて提出していました。

 ただ昨今は、RTA in Japanのイベント規模が大きくなってきたことが、ゲーム応募・知名度・視聴者の増加だけではなく、ボランティアで応募してくれる方が増えているということにも波及しているようで、個人的には人数が多ければそれだけ負担が分散できるので、非常にありがたいことです。

総括

 今回の技術ボランティア「ゲームシーン管理」に関しては、今までの記事で述べた新しい仕組みが全体的には上手く回っていたことや、私のシフトの時間帯が長いゲームが多めで対応するゲーム数も少なかったです。SRTによる配信が上手く行かないケースに遭遇してバタバタしたことはあったものの、全体的には非常に楽に対応することができました。

 一方で、今回一番大変だったボランティアは間違いなく「チャットモデレーター」だったと思います。チャットモデレーターはTwitch配信のチャットに書き込まれる内容に関して、これは問題だと思われる発言内容を削除したり、あまりにも問題発言ばかりするユーザーはBANしたりといった対応をする必要があります。

 昨今のRTA in Japanのチャットの流れは凄まじいものがあります。その中で、問題発言が紛れていないかを見つける必要がある上、見つけたとしても削除すべきかどうか微妙な発言もあって、いちボランティアで判断してしまってもよいのかという側面もあります。常に難しい判断を迫られている中でも、チャットの状況は刻々と流れて行ってしまうという非常に責任の重い業務です。

 今回はチャットモデレーターは同時間帯に最大3人体制を取っていたようですが、手薄な時間帯は1~2名だったところもあるため、本当に大変だったと思います。削除された発言は、後にTwitch側でアーカイブ化する時に表示されないという重要な役割もあります。この場を借りて感謝申し上げます。

最後に

 イベントの最後に次回の開催が告知されました。年末は通常オフライン会場での開催でしたが、やはり時勢的なところで昨年末同様にオンライン開催となりました。しかし、開催してくれるだけでも本当にありがたいことです。私は第1回が開催された2016年の年末から毎回見ていますが、それ以降の毎年の年末はすっかりRTA in Japanを楽しむのが恒例となりました。

画像5

 しかも、今回は1日増えて6日間の開催予定ということで、日数が増えただけ大変な面もありますが、その分、少しでも多くの走者の方が出られることになったということでもあります。本当に良かったです。

 RTA in Japanは年2回の開催ではあるものの、夏は8月中旬、冬は12月末ということで偏りがあるので、夏から冬の間はたった4ヶ月半程度で短いです。既に8月も終わりに差し掛かって残り4ヶ月、楽しみに待ちましょう。そして必ず何かしらのボランティアでお手伝いさせて頂きたいと思います!

 次回は公開日未定ですが、私が解説を担当した「野生動物運動会」のレポート記事を書きますので、お楽しみに!

ーーー9/24(金)追記ーーー

参加レポート#2、野生動物運動会の解説編です。ようやく書きあげました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?