006-最初の目的地に辿り着く

なんとかバス停に着いて運転手に行き先を確認。ラズグラードに着いたら教えてくれと伝えてバスは発車。

ラズグラードに着くと運転手に声をかけられバスを降りた。着いたのは街の中心部なのか。

ここを目的地にしたのは、ブルガリアヨーグルトが大好物だったから。高校の時、ファスティングをするために断食。その時の唯一の食べ物がブルガリアヨーグルトだった。
もうひとつの理由は、今ではそんなことする人はいないだろうけど文通をしていた相手がブルガリア人で、ラズグラードに住んでいたアーニャがいたから。唯一の外国での知り合いだった。もちろん彼女に行くことは伝えていない。

時間は午前中、昼前頃だったか。
お腹も空いたので何か食べようと街を歩いていると。20歳くらいと小学生くらいの男2人に英語で声をかけられた。
ここに来るまでに色々なことがあり過ぎたので何も怖くない。昼間だし街中だし。

2人はどこから来た、何をしてるなどと聞いて来た。日本から来てお腹が空いたから何か食べるところを探している。と応えると、カフェに連れて行ってやるというので着いて行った。歩いてほどなくカフェに着いたけどメニューはまったく読めず。
飲み物となんでもいいから食べ物を彼らに注文してもらった。

出て来たのは小さなカップに入ったコーヒーと焼いたサンド。

コーヒーちっちゃ!コーヒーは小さい頃からMAXコーヒーを飲んでいたから問題ないけど小さ過ぎ。エスプレッソだと、言われたけどもちろん、そんなもの知らず。

砂糖を入れて飲めと。飲み方も教わって空いたお腹に詰め込んだ。24時間近く何も食べてなかったけど初めての食べ物。知らない若い男2人と一緒で緊張もしていた。
色々なことを聞かれ、知っている単語を並べて必死に会話をした。何を話したかはまったく覚えてないけど楽しい時間だった。
このあと予定はあるかと聞かれたが、そんなに急いで何かをするわけでもなく、まったく計画のない旅。目的地はラズグラードだけ。あとはロンドンから日本に帰るまではいつ帰るか、どんなルートで行くかも何も決めていない。お金が尽きるまでの旅。

食事が終わったら映画を観に行こうと、誘われ海外で映画も悪くないかと誘いにのる。カフェで代金を支払おうとしたら俺が払うからいいとおごってもらった。
怪しいと思うはずだけど、この1時間近くの間に彼らと話をしていた限り、ただ外国から来た、それもアジアのはずれの日本から来た旅行者に興味があっただけだというのも感じていたのでありがたくご馳走になり、映画館に向かった。もちろん映画のチケットも彼が払ってくれた。

あの時観た映画はフラットライナーズ。
キーファーサザーランド、ジュリアロバーツ、ケヴィンベーコンと知っている俳優たちが出ていた。全編もちろん英語、ブルガリア語の字幕が出ていたのが新鮮だった。
それでも内容はなんとなくわかるもんだった。なんだか初めての外国で観るには重い内容の映画。

映画が終わり外に出ると、これからどこに行くんだ?ということでまずはホテルを探してチェックインし荷物を置いたら、会いたい人がいると住所を見せた。アーニャの家は歩いて行ける距離で、近くのホテルをまで連れて行ってもらい家まで案内してくれると。

ホテルは街の中心にあり歩いてすぐのところ。そこからまた歩いて数十分、坂の途中に建つアパートメントが、彼女の家らしかった。アパート入り口まで案内をしてくれ、彼らにお礼を言い、何かお返しをしたいと伝えたか、彼はこう言った。

誰か同じように迷っていたりしたりする人がいたら、同じようにしてやれ、と。

自分より少ししか年も違わないのにこんな考えを出来るなんて。涙が出そうになった。なんの後腐れもなく知らない人に親切心だけで他人にこんなことをしてもらったのはじめてだった。

出来る限りのお礼の言葉を伝え彼らと別れアパートの階段を登った。

アーニャからもらった手紙の住所に書かれた部屋の番号を探して、玄関の前までたどり着くと、緊張が張り詰めた。
何年も手紙をやりとりしていたけど、写真でしかお互いに顔の知らない間柄。

玄関のベルを鳴らす。
ジーッという音がした。

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