見出し画像

2023年7月9日~10日の大雨による被災地現地踏査


久留米市田主丸町竹野

 2023/7/15に現地踏査。この写真は同地区の土砂災害でもっとも激しい被害が生じた一角。写真中央の川原のように見える付近で、5箇所の家屋がほぼ原形をとどめず流失・倒壊。うち2箇所は壁等の一部が残存していたが、3箇所は跡形もなく流失していました。なお「跡形もなく」とは書きましたが、本当に粉々になったケースのほか、まったく別の場所に流されて一部が残っているケースもあります。これらの家屋はいずれも土砂災害警戒区域内に所在。

 メディアでよく映されていた下流側からの光景。手前の川原のようなところは元々家屋がなかったが、写真中央建物の右側の上流側がほぼ原形をとどめず流失・倒壊した家屋が生じた一角。この写真の土砂到達範囲も土砂災害警戒区域。

 竹野地区の遠景。同地区だけでなくどの谷の下流側にも扇状地状の地形の形成が見られる。申し訳ないのだけど、この場所は過去に繰り返し今回のような土石流が生じてこのような地形になったところで、それは過去に終わった話ではないのです、と言わざるを得ません。

 竹野地区の土石流流下の現場を上流側から下流側に歩いてくると、転がっている岩石の大きさが次第に小さくなり、勾配2,3度未満のあたりに来ると土砂ばかりとなり、更に勾配が緩くなると泥が堆積。それらは基本的に地形に沿って(相対的に少しでも低い方向に向かって)流れている。これは土石流や土石流によって作られる地形の教科書的な説明そのままだと今更ながらに実感。快く思われないかもしれないけど、こうしたことは(関心の集まる)災害時にも伝えていかねばならないな、と思ったり。

竹野地区の家屋被害の位置図

 空撮映像と7月15日の現地踏査を踏まえ当方が判読した久留米市田主丸町竹野地区の家屋被害の位置図です。倒壊・流失といった極めて激しい被害に限定して判読しています。こうした被害の多くは土砂災害警戒区域の範囲内であるように思われます。
 図中Jの家屋の北東側(図は上が北)の土砂災害警戒区域の範囲外に土石流が到達し、家屋に被害が出ていることは確かです。ただし、この付近では外観上明らかな流失・倒壊に至ったとみられる家屋はJ以外には確認できないように思われました。無論、家屋に土砂が流入しただけでも当事者にとっては大変なことであることは言うまでもありません。倒壊・流失でなければ被害は軽微だなどとは全く思いません。

太宰府市国分1丁目

 2023/7/14に現地踏査。アンダーパスの浸水で徒歩移動中だったと思われる人が亡くなったとみられる現場。北東側入口はカーブしていて先が見えない。アンダーパスで車移動中の遭難例があった2016年清須市の現場とよく似ている。

 少し下ると地下部分が見えてくる。歩道は車道より1.2mくらい高くなっている。アンダーパスでよく見られる形態。

 写真ではわかりにくいけど、北東側入口(写真手前)から南西側入口(写真奥)に向かって少し下り坂になっている。北東側入口付近の浸水深は歩道面から約1.2m、南西側入口付近は同約2.9m。1.5m以上下がっている。

アンダーパスでの人的被害事例

 アンダーパスでの人的被害事例は、実は実数としてはそれほど多くありません。当方が調査している1999~2022年の風水害事例では計7人。調査対象事例以外で後2人を確認していますが、他に多数の見落としがあるわけではないと思います。また、徒歩移動中の事例は更に少なく、上記事例中では2022年の近江八幡市の1人だけです。2年続けて稀な事象が発生したとも言えます。


記事を読んでいただきありがとうございます。サポートいただけた際には、災害に関わる調査研究の費用に充てたいと思います。