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2021年7月3日静岡県熱海市での土石流災害について(第2報) 網代の降水量

  7月3日熱海市伊豆山での土石流災害、関連する降水量データについて第2報としてメモしておきます。

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 被災箇所の最寄りの気象庁AMeDAS観測所としては網代があります。現場の南約8kmほどとちょっと距離はありますが、箱根や三島だと距離も離れますし地形的にもちょっと違いすぎるので、網代を使うことにします。なお、気象庁以外の雨量観測所ならば他にも多数存在します。ただ、気象庁以外の観測所は、まとまった期間の統計値が整備されていないので、私の用途としては気象庁の観測所を使うことになります。

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 土石流発生2日前の7月1日からの網代の1時間降水量と72時間降水量の推移です。なお、都合により3日は17時までのデータです。雨自体は更に前の6月28日21時頃から降り始め、29日昼頃から約半日は雨が上がりましたが30日も少しずつ降り続け、1日からは強弱はありますがほぼ連続した雨となりました。3日17時時点の72時間降水量は408mmで、これは網代の1976年以降の72時間降水量としては2番目に大きな値となりました。

 72時間の降水量はかなり大きくなったのですが、1時間降水量はそれほど大きなものは記録されていません。最も強かったのは3日10時の27mm(強い雨)で、他は強くなったときでもおおむね10~20mm程度(やや強い雨)です。土石流が発生した時刻は3日10~11時頃のようですので、今回の一連の降雨の中ではピークとなった降水量が観測された直後の発生とは言えます。ただし、1時間27mmというのは気象庁の言葉では「強い雨」ではありますが、めったに起こらないほどの記録的な1時間降水量と言うほどではありません。

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 こちらは網代の今回の一連の降雨における降水量の最大値と、同地点およびAMeDAS全地点の既往最大値を比較した図です。72時間降水量(図左端の点)が既往最大値と同程度になっていますが、48時間より短い時間の降水量はいずれも既往最大値を明確に下回っています。長時間の降水量は多かったものの、短時間の降水量はそれほど記録的なものではなかったことがここからもわかります。

 今回の被災箇所付近での雨は、けっしてありふれた雨だったというわけではありませんが、あらゆる角度から見て記録的な雨だったとも言えません。また、どこかの時間帯に集中的に降ったのではなく、強弱(とはいえせいぜい「やや強い雨」程度)を繰り返しながら長い時間降り続けたというのも特徴です。まとまった降水量が予想はされていましたが、強い緊張感を持つ、あるいは緊張感を保ち続けるのはやや難しい降り方だったと思います。

 筆者は7月1~3日の間、被災地の西方約60kmほどの静岡市内にいましたが、雨の降り方は網代と比較的よく似た状況でした。どのように対応するか、判断することがなかなか難しい状況だったのではないか、との印象を持っています。


記事を読んでいただきありがとうございます。サポートいただけた際には、災害に関わる調査研究の費用に充てたいと思います。