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2021年7月3日静岡県熱海市での土石流災害について(第4報) 降水量既往最大値との比較

 熱海市伊豆山での土石流災害が発生した前後の、静岡県付近の降水量分布を作図してみました。

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 まず、6/30~7/3の気象庁AMeDAS観測所における1時間降水量の最大値です。この5日間の中で最も多かった時間の降水量ですので、記録時刻は一定ではありませんが、石廊崎以外はいずれも7月2日又は3日に記録されています。最も多いところで60mm(非常に激しい雨)前後で、多くは20-30mmの「強い雨」にとどまっています。

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 こちらは上で挙げた1時間降水量の既往最大値に対する比です。既往最大とは、AMeDAS観測所が整備された1976年以降の観測値の中で最大という意味ですが、観測期間は観測所により長短があります。また、観測期間が10年未満の観測所は表示していません。既往最大値更新箇所はなく、短時間の降水量で見ると、特に激しい状況は見られなかったと言えそうです。

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 こちらは24時間降水量の同期間の最大値です。平野部で200mm未満、山間部で300mm前後、最多はこの範囲内では神奈川県になりますが箱根で540mmとなります。降水量はここが難しいところで、24時間降水量何百ミリが大きいのか、大きくないのか、「場所によって大きく異なる」ので一概には言えません。

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 そこで、既往最大値との比という情報が重要になります。こちらは6/30~7/3の24時間降水量最大値の既往最大値に対する比です。既往最大値を更新した観測所は図中では静岡県西部で2箇所ありますが、比は100%そこそこで、大きく上回った状況ではありません。

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 こちらは6/30~7/3の72時間降水量最大値です。平野部で400mm未満、山間部で400-600mm。箱根はちょっと多くて805.5mm。800mmと聞くと驚きますが、箱根で800mmならばそれほど驚くには値しません。

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 こちらが72時間降水量の既往最大値に対する比。箱根は74%と、既往最大よりは小さな値です。箱根は令和元年東日本台風の雨量が多かったから・・・、と思いそうですが、実はその時の72時間降水量は既往2位で、1位は1983/8/18に1092mmという大物がいます。なお、今回の805.5mmは既往3位は更新しそうです。

 図全体で見ると、既往最大値更新箇所で7箇所。しかし比はやはり100%そこそこ、というところです。大きいことは大きいけど、極端に大きいわけではない。また、熱海市付近の観測所ではいずれも既往最大を更新していません。

 網代の降水量の記事でも書きましたが、今回の雨は、ある程度強い雨が、強弱を繰り返しつつ、だらだらと降り、長時間降水量はやや多くなったというのが特徴かと思います。集中的な雨が降った状況ではなく、特定の時点での災害発生の危険性を強く警戒するようなことが、大変難しい降り方だったのではないかと思っています。


記事を読んでいただきありがとうございます。サポートいただけた際には、災害に関わる調査研究の費用に充てたいと思います。