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ボイストレーナーと医療資格


やや長いので、上記の目次から読みたいところだけを読んでいただいて構いません。

最近よく聞かれるので、今現在の考え方をメモ程度に書いてみようかと思います。制度的なことも含めて書くので、有資格者の皆様、もし間違いあったらご指摘いただければ幸いです。また「こういうメリット / 見方もあるよ」というアイデアがあれば、それもぜひお聞かせいただけないでしょうか。

よく聞かれる「何か医療資格があったほうがいいでしょうか」。
「僕が作ってみたい界隈」においては、YESです。

「連携」が一定程度のクオリティに達した

先日はXにてこんなことを書きました。

今、50人近くのクライアントさんを抱えていますが、これでもまだお断りしている状態で、手一杯のところまで来ています。本当にありがたいことで、加えて「ここまで来れたのだな」という気持ちです。これまでやってきたことの答え合わせになっているなとも思えます。よかった。

特にコンディショニングトレーナーとして連携をとっている飯島タイシさん。彼との連携は、もう間違いないレベルまで来ています。なんとなくお任せ、するのではなく、明確にオーダーを彼に伝えています。「頭部前方変異の解除と胸椎可動域がもう少し出せればいいなと思います。目視レベルだと後重心なのですが、足部からのアプローチなどで改善できますかね?そのた、僕の方で気づかないことがあれば全身スクリーニングしていただいて、またご報告ください」。こんな感じです。詳細は省きますが、彼からはそれに対して、120点の回答をいつももらっています。生徒の「声がするする出るようになりました」という報告とともに。

このやり方は、きちんと方法論をまとめれば、僕と彼以外でもできるはずだと思っています。僕らはゴッドハンドなどではなくて、あくまで解剖的にありうること、運動学的にありうることを仮定して、トレーニング / セッションを進めているだけにすぎません。「すごいこと」というよりは「真っ当なこと」をひたすらに続けているだけです。

このやり方をシェアしていくにあたって、やはり解剖学は必須です。解剖学はメソッドではなく、メソッドの前の基礎知識です。すなわち「言語」です。言語を使いこなすことで、連携がやっと始まります。なんとなくおまかせ、ではなくオーダーを出し、それに対して報告をもらいます。その報告を理解して、トライアンドエラーをしさらにトレーニングを構築していきます。僕のXでのポストはよく難しいと言われますが、それは難しいのではなく、言語が違うから、というだけです。解剖学がわかる方=言語を知っている方なら「ああそうだよねそりゃ」「ああそういうふうにも考えられるね」と言ってもらえる内容だけをポストしています。大したことは言っていないんです。

チームを編成することの可能性

このことはレッスン現場にのみいきるわけではありません。僕自身はほとんど経験もありませんが、「コンサートの帯同トレーナーチーム」が編成可能になっていきます。僕は鍼灸資格を取得予定です。コンディショニングトレーナーによる本番前のエクササイズに加え、強い緊張がある筋にたいしては鍼の効果でその場で緩めることができます。加えて僕らは音楽に対する最低限の知識と経験を持っています。ですから、適当なことはしません。「とりあえず柔らかくしとけばいいだろう」とは思っていません。「音楽家 / 歌手のトレーニング、治療」のスペシャリストとして、連携をとりつつ、疲労を抱えたアーティストが最高のパフォーマンスを発揮できるようにサポートができます。

さらに「レッスン現場」で起きていることをカルテにまとめれば、「コンサート現場」で違うスタッフが帯同したとしても、そういう理想のチームがならば対応可能です。それがスペシャリストとしての仕事でしょう。

レッスン現場での連携
・コンサートでの帯同チーム編成
・レッスン現場⇄コンサート会場での連携

これを一つのチームで、自分の作った看板で、成し遂げたいと思っています。それが36歳の、岩崎の夢です。ボイストレーナーを始めてから13年ほど経ちました。あまりにも大きな夢でしたから、夢として語っていいかどうかもわからず。どうやって実現するかわかりません。それでも勉強を続けてきました。飯島タイシとの連携をとって、そのクオリティが一定程度に達したこと。このことが僕には大きなニュースでした。やっと、夢の「後ろ姿」が見えたなと。多分、実現可能です。それも、あと10年程度で到達できるはず。もう13年やってきたので、あと10年と言われても正直言って「あとたったの10年じゃん」としか思えません。やってのけたいと思います。

医療資格について

医療資格。こうしてチーム編成をして、帯同までやりたいとなると、医療資格はあると良いでしょう。どの医療資格がいいか、という話題になってきます。冒頭の質問に加え「ではなんの資格をとれば?」というのはやはりよく聞かれることです。

理学療法士

まず理学療法士ですが、解剖に圧倒的に詳しくなるのなら、まず理学療法士でしょう。動作分析に関してはもうずば抜けた目を持ってらっしゃる方が多いと感じます。自分に解剖学の導入を施してくれたのも理学療法士の先生でした。本当に、理学療法士の先生方には多くのことを学ばせて頂いています。注意しなければならないのは「医師の下」でのみ医療行為が行えます。つまり、理学療法士と看板を掲げ、独自の判断では行えません。うちのチームにいる飯島タイシなどはもともと理学療法士ですが、彼はNASM-PES(トレーナー資格)を取得していて、実際、彼が行っているのはトレーニングの範疇です。(ストレッチ / 加えて筋力向上のためのエクササイズなど)。ですからうちのサービスとして提供する際は「コンディショニングトレーナー」として仕事をしてもらっています。この線引きについてはよくXでのコメディカル界隈では話題になるところでもあります。

言語聴覚士

ボイストレーナーから言語聴覚士になられた「いわお」さんの記事は読まれるといいかと思います。


ただ、諸ボイストレーナーの先生方にお勧めするかと言われるとかなり怪しいです。
パフォーマンスすることを考えると、理学療法士や鍼灸師などの方が推奨できるかなと。
他方、圧倒的に脳には強くなれるので、脳科学で捉えていきたいなら言語聴覚士ですね。
音楽は高次過ぎて研究対象となりにくいですけどね、やむなしです。

雑記:進学関連より

神経系からのアプローチ / 研究を行うのならSTがいいが、おそらくプロのボイスユーザーに対してのフィジカル面でのアプローチを考えると、より適正な資格があるのだろう、ということではないでしょうか。ちなみにうちのチームでは、音声外来で勤務されているSTの先生とは連携を取らせてもらっています。内喉頭で疑わしい症状がある場合は、STの先生に連絡した上で、本人に音声外来にいくようにしてもらっています。大変に助かっています。

鍼灸師

これは僕が選んだ理由を説明するだけになりますが、まず開業権があります。つまり、自分の「院」をもつことができます。もちろん、自分の判断で、施術を行うことができます。これが強みです。コンサート会場の楽屋で必要になればその場で鍼を打つことができます。鍼は東洋医学のイメージが一般的には強いですが、西洋的なアプローチはスポーツ現場で非常に好まれています。即時的な効果が強いからです。明日には効果が出る、ではなく、鍼で狙った筋 / 筋膜に打つと、その場ですぐに筋が緩みます。つまりスポーツ現場での相性がとにかくいいのです。鍼は美容鍼、スポーツ鍼など、応用が効きます。それは鍼の即時性があってのことだと思います。

あんまマッサージ指圧師

一般の方には知らない方が多数いらっしゃると思うのですが、そもそも「マッサージ」は国家資格です。「もみほぐし」などの言葉は、マッサージと分別するためにある言葉だと推測します。つまり、人をさすったり、押したり、揉む、という行為を自己判断で行うには本来資格が必要です。マッサージ行為が許されているのは、このあんまマッサージ指圧師と、医師のみです。

未来を考えるとクリーンに行うことが大事

何が許されているか、許されていないか、というのはグレーゾーンもあり、コメディカルの方はうまく調整しながら現場をこなされている印象がありますが、今後のことを考えていきたいと思っています。一つの看板で、一つのチームとして、ボイスユーザーをサポートしていきたい。業界全体を変えることはできませんが、「理想的な形で音声教育をしている界隈がある」という状況を作りたい。そういう未来を創りたい。そう考えると、なるべくケチのつかないチーム編成が作れるようにしていく必要があります。結論から言うと、ボイストレーナーの方は鍼灸師とあんまマッサージ指圧師がおすすめです。なんのケチもつかず、レッスン中にも、コンサート帯同でも、施術が可能です。もちろん、他の資格には一つ一つに利点がありますし僕が気づいていない側面もあるでしょう。たかが鍼灸学生が言っていることですから、先輩先生方、もし誤りがあればご教授いただければ幸いです。生意気な記事を書いているなと思いつつも、恥を忍んでボイストレーナーの先生方に伝えておきたく、筆を取っています。

医療科目を体系として学ぶこと

解剖学、生理学、この辺りのことはどの資格でも勉強ができます。当たり前ですね。医療系科目なのですから。「解剖学は独学で」とおっしゃる方も多いのですが、独学で学ぶ前に、体系として学校で学ぶことを強くお勧めします。学問ですから、「つまみ食いして学ぶ」と言うのは、ほとんど意味をなさないケースが多いように思います。パッケージングされた「解剖学」を一通り終え、つまり単位を取得し、基礎を抑えた上で自分が補強していきたいところを学んでいく。これが適切ではないかと思います。事実、僕が学校に入る前にも「解剖学解剖学」と言いながらも「組織」とは何のことかもわからず、もちろん「上皮組織 / 結合組織 / 筋組織 / 神経組織」だとかそんな言葉もよくわからず(ググっても文字面で理解したような気持ちになるだけです)ただひたすらになんとなく、解剖学系の文章を読んでいました。解剖学は言語であり、また分類 / 体系の学問です。そういう全体のなかで、局所的な構造を考えていくことが大事です。そうでなければ、他の教育者から与えられた情報をただ鵜呑みにするだけです。深まらないのです。文章を読み込み、自分で理解し、はたまた疑いと仮説を立ててることができません。解剖学とはそのためにある「基礎医学」の一つなのですが、「基礎医学を言葉の意味が曖昧なままつまみ食いする」というのは本来の目的とはかけ離れているように思います。

終わりに

以上です。昨日はセミナーでした。やはりボイストレーナーの方に「今後どうやって勉強していくか」を聞かれましたが、思い切って「医療系専門学校に行っては?」と伝えました。もう、そこまでいくと、本当に、人生決まっちゃいますけどね。
でも楽しいと思います。まだ日本の音楽業界にない体制を構築していくことも、80年程度の長い時間を、勉強に捧げることも。長いじゃないですか、人生。好きなことを学び続けるのは楽しいですよ。終わりがないし。終わりがないのは、イコールで、飽きない、ということです。ボイストレーナーの勉強から鍼灸学校に入ったことは、僕にとっては「大きな夢」と「勉強し続けることの面白さ」を二つもたらしてくれました。共感してくれる仲間がきっと増えるタイミングなんじゃないかと思います。走りたいなあ、一緒に。医療資格を持っていないとダメ、とは言いませんが選択肢として持っておくのは、損はないかと思っています。以上です。学生の身で生意気な記事でした。修正点があれば随時編集していきます。



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