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株主のみなさまとの新たな対話の形を―。これからの石井食品を築く「株主ミーティング」を振り返る(前編)

石井食品は、2023年6月21日(水)に開催した定時株主総会に先立ち、6月10日(土)に「株主ミーティング」を開催しました。

株主総会では、株主総会招集通知で提示した報告事項についてご説明を行い、決議事項について株主のみなさまが決議を行います。しかし、株主総会での決議という重要な決定を行っていただくために、株主のみなさまに対して、事前の情報開示をもっと充実させられるのではないかという気持ちを抱いておりました。わたしたちは、石井食品の理解をさらに深めていただき、また今期の取組をしっかりお伝えし、きちんと株主のみなさまと対話をしたいという思いがありながらも、長引くコロナ禍でなかなかこのような対話の場の創出を実現することが出来ずジレンマを感じておりました。

このような思いから、代表の石井智康をはじめ、各取締役・執行役員と株主様がカジュアルかつ深く対話のできる「株主ミーティング」を数年ぶりに復活させ、開催いたしました。今回は、株主総会の11日前に、3部構成で実施しています。

この株主ミーティングの開催内容を、2回にわけてお伝えいたします。第1回目の今回は、第1部・第2部、その他会場の様子についてレポートします。

第1部前半:服部幸應先生「食の未来について」

服部幸應氏
(学)服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長/医学博士、日本食普及親善大使

石井食品は、これまで「食育」について服部先生から学ばせていただく機会を設けてきました。そのご縁もあり、今回は「食の現状」や石井食品をはじめ「食品会社に期待すること」をテーマに、お話していただきました。

服部先生の活動の中で大きな転機となったのは、1985年に毎日新聞の連載で「病院食」について問題提起したことだったそうです。入院した友人を通じて知った病院食がおいしくない、夕食の時間が早すぎるという現実をコラムにされました。その結果、その病院の理事長が同じく毎日新聞のコラムで服部先生にお返事をつづり、TVでも取り上げられ、1年もたたずに東京都の病院の夕食の時刻が変更されるという現象につながりました。これがきっかけとなり、服部先生は食事の大切さを社会に問いかける必要性を強く感じたそうです。そこから粘り強く活動を続けられ、2005年の「食育基本法」制定にも食育調査会の一員として尽力されます。

この「食育基本法」には、「ダイバーシティ(生物多様性)」「サステナビリティ(持続可能性)」「エコロジー(環境保全性)」という3つの概念が、服部先生の働きかけにより盛り込まれています。2015年に国連で制定された「SDGs(持続可能な開発目標)」でも用いられている概念が、10年も早く取り入れられている先進的なものです。

この「食育」を大人から子どもまで広く伝えるために、食育ピクトグラムというものも作られています。

(出典:農林水産省, 食育ピクトグラム を元に構成)

この他にも、和食の素晴らしさや、食事と疾患の関係、日本の有機野菜化に向けた動きなどをご紹介いただきました。
詳しくは、服部先生の著書「「新食育入門」服部幸應監修 食育を正しく伝える人になる。」をご覧ください。

ご講演を受け、代表の石井智康(以下、社内での呼称である「智康さん」と記載いたします)から、「食育基本法ができてから起きている変化」や「食育の未来」「食品会社としてやるべきこと・焦り」について質問しました。

服部先生によると、残念ながら食育基本法制定以降も、未だあまり日本の食育教育に大きな変化がないということです。なぜなら、変化によって職を失う人が出てくる等、影響が大きいからです。結果、30年計画を立てて、徐々に変化を起こそうとしているそうです。

昨今は、世界情勢が混乱したことで、入手が難しくなる農作物が突発的に発生する事態も起きています。このような変化に耐えられる日本にするためにも、食育基本法を一人ひとりがしっかり理解し、国も政策を推進していくことが大切と教えていただきました。

最後に服部先生からは「石井食品の姿勢が好きだ」とのエールをいただきました。石井食品としても短期ではなく、長期的な活動の柱として、服部先生の教えをいかしてまいります。

第1部後半:石井健太郎元会長「真(ほんとう)においしい とは」

石井健太郎
昭和63年 石井食品㈱代表取締役就任。平成25年より石井食品㈱取締役会長。
退任した今も、農家に足を運び農作物や土の状態を自ら確認している。


石井健太郎元会長(以下、社内での呼称である「健太郎さん」と記載いたします)は、「真(ほんとう)においしいものとは」についてお話ししました。

この言葉は、石井食品のVISIONである「真(ほんとう)においしいものをつくる〜身体にも心にも未来にも〜」からきています。健太郎さんは、70年間に渡って「真(ほんとう)においしいものとは何なのか」を追求し、これは広告キャッチコピーとして販売促進のために掲げている言葉ではないという結論に辿り着きます。その経験について紹介します。

健太郎さんは、昨年、熊本県天草市で出会った”あおさ丼”が忘れられないと言います。お米にあおさが乗っただけというシンプルな料理だったにもかかわらず、そのおいしさに大変感動したそうです。
そこで感じたのは、「おいしいもの」とは「身体が真(ほんとう)に欲しているもの」ではないかということ。昔から、おいしいものが採れる場所には、自然と人が集まり、文化が形成されてきました。そんな気づきから、古くから伝わる全国の伝統的な料理を口にするために、健太郎さんは今も全国各地を奔走しています。

これらのおいしいものを守っていくためにも、石井食品は農家さんを直接訪問し、適正価格で農作物を購入してきました。農家のみなさんは食品会社が交渉しにくるということは「値下げ交渉をされる」と勘違いされることが多く、以前は石井食品のこの姿勢に驚かれる農家さんも多かったようです。

他にも、ミートボールの生産で使用しているトマト。以前は、大量生産されたトマトを使用していましたが、様々な地域のトマトを試しながら、現在はイタリアのアルチェネロの有機トマトペーストにたどり着きました。
参照:https://www.ishiifood.co.jp/news/p1371/
石井食品「イシイのおべんとクン ミートボール」においてオーガニックの先駆者アルチェネロの有機トマトペーストを本格使用2023年2月下旬より順次、全国販売スタート

このような取り組みの根幹には、「多少コストがかかっても、安全で身体に良い商品を作るべきではないか」という思いがあります。
健太郎さんにとって、この思いに至るきっかけとなったのは、石井食品の「おせち作り」のプロジェクトの経験です。毎年秋頃から、年始のおせちの生産に向けた試食会が日々行われます。9月頃から本格的に始まるこのプロジェクトですが、11月頃になるとお腹の調子が悪くなることに健太郎さんは気づきました。そして、「これは、添加物をたくさん摂取していたからではないか」という結論に至ります。(※筆者注:あくまで個人の感想・見解を記載したものであって、添加物の効果・効能を示すものではありません。)

これをきっかけに現在の石井食品の基本方針である「無添加調理*」が決定しました。このこだわりを貫くには、石井食品が単独の取り組みでは難しく、仕入れ先の協力も必要です。仕入れ先が対応できないならば、自ら原材料の加工から行う覚悟での方針転換でした。しかし、徐々に石井食品の考えに賛同・協力してくれる企業が増え、現在の素材と調理工程が実現できています。

*無添加調理…石井食品が製造する過程において、食品添加物を使用していないことを指します。詳しくは、「石井食品の三大原則」をご確認ください。

石井食品が無添加調理に方針を転換してからわかったのは「素材がよくないとおいしくならない」ということ。安心・安全、そして素材のおいしさ、これらを全て組み合わさり「真(ほんとう)においしい」が作り上げられているのです。

ぜひ株主のみなさまも、石井食品が安心安全を追求するにあたって、ご意見をいただきたいとのメッセージで、講演を締め括りました。

第2部前半:株式会社minitts 代表取締役 中村朱美氏

「20分で分かるイシイの佰にぎり 開発秘話」

株式会社minitts 代表取締役 中村朱美氏
1984年生まれ。京都府亀岡市出身。京都教育大学英語科教育卒。飲食店や不動産事業を営む株式会社minittsを経営。「日経WOMAN ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019 大賞」をはじめ、約10年間で16の賞を受賞。

中村さんの経営する飲食店「佰食屋」は2012年11月29日(いい肉の日)に京都で開店した「1日100食限定」、しかもランチのみ営業という特徴を持つ、国産牛ステーキ丼専門店です。この100食という業態でもお店が続く秘訣は、一見「制約」と思える要素が生む大きなメリットがあるからです。

フードロスを限りなくゼロにできる
100食と決まっているため、仕入れ量などが明確。フードロスは限りなくゼロに近く、毎日冷蔵庫が空っぽになる仕組みが作られているため、店舗には冷凍庫がないそうです。

勤務時間が短くなる
業務の予測がつくため、勤務時間は最長でも9時〜17時45分で残業なし。この10年間で36協定を結んだ経験はゼロ。また、正社員でも勤務時間を柔軟に変更できる制度になっています。

色々な人が働ける〜ダイバーシティ〜
柔軟な勤務体系にしたことにより、子育て中の女性やシングルマザー、高齢者や介護中の方はもちろん、文字がかけない方や服役経験がある方など、多様な方が働ける職場になりました。

行列ができるほど大人気の「佰食屋」でしたが、新型コロナウイルスの流行が襲います。夜間営業がなかったため協力金も出ない中、中村さんはソーシャルビジネスで新規事業を立ち上げることを決意します。

ビジネスを通じて解決しようと考えたのが「大量廃棄・フードロス問題」。解決の方法として、消費期限が製造後18時間と短い「おにぎり」の消費期限を長くするアイデアを思いつきました。

アイデアはできたものの、実現方法に頭を悩ませていた時に行われたのが、中村さんの地元である京都府亀岡市で行われた「亀岡牛ハンバーグ・カレーコンテスト」。ここに審査員として参加し、亀岡市長にアイデアをプレゼンテーションします。このプレゼンテーションを隣で聞いていたのが石井食品の智康さんです。ここで智康さんが「それ、うちでできますよ」と中村さんに伝えたところ、なんとそのまま共同開発の話が”即日”まとまり、石井食品の「佰にぎり」誕生に至りました。


即日決まった協働開発の話から、商品が出来上がるまでにかかった時間は1年間。この期間で試作を行った回数は200回に上ります。その結果出来上がった3種類の味に加え、現在は新たに2種類の味の開発を進めています* 。

*新味の2種類は、株主ミーティング後の2023年7月14日に発表いたしました。

「国産鶏ごぼう飯味」「国産鶏のチキンライス味」

この「佰にぎり」には4つの大きな特長があります。

  1. 製造から100日常温保存可能

  2. 一個でタンパク質10g以上

  3. 複数人でシェアしやすい四角い形のおにぎり

  4. もちろん無添加調理

最後に、中村さんは「ソーシャルビジネスは普段の生活の中から出てきた個人の課題から始まることもある」ということを伝えます。視点を変える、気づきを大切にする。そんな考え方の転換から世の中をよくすることにつながるのではないでしょうか。

当日の会場の様子

当日は、石井食品本社の講演会場の他、1階のコミュニティハウス Viridian(ヴィリジアン)横に設置したモニターからのライブ配信、またご自宅からオンライン配信でご参加の方もいらっしゃいました。

本社1階の様子。モニターでのライブ配信やパネル展示を楽しんでいただきました
総会の議案や財務状況の資料も展示し、ご理解いただけるよう努めました
コミュニティハウスViridian(ヴィリジアン)には、
社長メッセージや社員の会社に対する手紙を掲示しました
当日朝、八千代工場で作った株主ミーティング用のお弁当は、社員が自らお配りしました

当日は150名を超える株主のみなさまに本社へご来場いただきました。ご来場の方の約4割が、お一人ではなくご家族を連れてのご参加だったところも、石井食品らしさの表れではないかと感じます。

第1部と第2部(前半)は、石井食品を日々支えてくれている3名の方々の講演を中心にお送りしました。第2部後半の代表の石井智康による2023年3月期 82期 ご報告と、3部の株主様とのディスカッション広場では、より株主のみなさまとの対話の様子をお届けしたいと思います。