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廃バッテリーとは何か?

4月18日の経済産業委員会において、村田きょうこ議員が非常に興味深い質疑をしていた。もちろん、「廃バッテリーの不正な海外流失」は以前から大きな課題になっている。

廃バッテリーの買い取り価格は上記サイトによると「1kg当たり20~58円程度」といったところである。

さらに、みんな大好き「世界経済のネタ帳」によれば、鉛価格の推移は以下のとおり徐々に上がっている。
2021年1月 1㎏当たり208円
2024年3月 1㎏当たり307円
ただし、ドルベースでは2021年に比較して上下はあるものの、1トン当たり2,100ドルとなっており変わっていない。従って、鉛は為替の影響により値上がりしているのである。

さて。

いわゆる、静脈産業における処理から再販にかけられる費用は、ここ3年間で最低で208-58=150円から、307-20=287円程度となっていたことがわかる。この150~287円を超えると、不正な手段で販売する、もしくは不法投棄する方が得、という結果になっていたのであろう。 

村田きょうこ議員の指摘の通り、リサイクル技術が発展する前は、不法投棄による環境問題があったので環境省が所管することが正しかった。そして、原材料・資源の確保としてみる場合には、経産省所管であることが正しいと思われる。ただし、円高で鉛の価格が低下している場合のように、処理から再販にかけられる費用が著しく低下する場合、再び不法投棄が行われ、環境問題化する可能性もあることを付け加えるべきだろう。

そもそも、「鉛を国内採掘していない」ということはどういうことを意味するのか?

「すべて輸入に頼っている」ということであるのも確かであるが、そもそも鉛の最終価格が他の精錬金属より安く、採掘から精錬にかかるコストを考えると「国内埋蔵資源を温存し、敢えて輸入したほうがトータルで安い」という可能性もある。

https://mric.jogmec.go.jp/reports/mr/20211108/159944/

レアな金属回収に向けたe-wasteの輸入促進の一方で、鉛バージン材料の輸入関税の引き上げを行い、国内流通量を減らすことで静脈産業の健全な育成に寄与すると判断する。しかしながら、そもそも鉛はんだが禁止されているEUに比べ、日本では許容され、さらに鉛はんだより鉛フリーはんだの方が2倍くらい高いのである。(;^_^A

欧州では鉛の使用を「RoHS指令」によって制限している。これは、電気・電子機器のリサイクルを容易にするため、また、最終的に埋立てや焼却処分されるときに、人や環境に影響を与えないように、EUで販売する電気・電子機器の有害物質を非含有とさせることを目的として制定しているものである。日本で生産される電子機器のうち、欧州で使用される可能性がある製品はこのRoHS指令に従って生産されるが、国内で使用する場合は対応の必要がない。

国内で「RoHS指令」が適応できないのは、残念ながら鉛の使用量が減少することで、鉛を生産している産業への業績影響が大きく、また鉛を使用した製品を制限すれば電気電子機器業界に負担がかかるからであろう。言い換えれば、それぞれの業界に配慮した結果ということになる。それがゆえに、動脈産業が強くなる円高においては、廃バッテリーに関わる静脈産業の利幅が少なくなり、結果としてモラルも低下して、鉛の生産をしている産業への負担となる、なんとも皮肉な結果である。

欧州との比較において、改めて最も重要なのは「環境」への国民的意識の向上だ、ということにならざるを得ない。どんな産業においても、「市場の失敗は、産業の不確実性を高める」ということに尽きるのである。

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