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『物語の欠片』のカケラの裏話 イベリス

何だか最近、橘鶫さんの『物語の欠片』はKaoRuの挿絵付きの番外篇の出番が多いな、と思っている物語ファンの方もいらっしゃるかと思います。

私がお気に入りの物語のキャラクターの絵を描いては押し売りしている感も否めませんが、描けたらお見せしないわけにはいかない、とばかりに送りつけ、そこに鶫さんは毎回新しく素敵な物語を生み出してくださいます。
改めてこんなコラボができるなんて、私は幸せ者だなあと思います。

今回登場したのはイベリス
前後篇の二部編成で、これは番外篇では初の構成。
今回も拙画のほうは鶫さんの物語の記事でご覧ください。お話の後に全体像が載せられています。

なぜこのような形になったかと言いますと、私が勝手ながら二枚のイベリスを描いたからでして。
しかも描いた順番は前後逆で、最初に描いたイベリスが後篇で使われています。

イベリスは思い入れの強いキャラクターとは言え、一度に二枚描く、というのは当初、予定していませんでした。
ではなぜ二枚ほぼ同時に制作となったか、を中心に書いていきたいと思います。

もともとイベリスは好きな登場人物ではありましたが、私の中で物語を追うごとに存在が大きくなったのが、イベリスのお父さんでポハクの族長、パキラ
パキラは既に昨年の時点で描いていますが、その後もぐんぐん私の中で株を上げ、最近ではイベリスよりも気になる存在に。
『物語の欠片』の第二篇、パキラの治めるポハクが舞台になった『金色の馬篇』を初めて読んだ頃は、パキラは単に「イベリスのお父さん」だったのに、最近の私の中では、イベリスが「パキラの息子」に……この違い、分かっていただけますでしょうか。

今回イベリスを描くにあたって、『金色の馬篇』を読み直してみたのですが、そこでのパキラは初めて読んだ時とは全然違う姿で、場面も違った雰囲気の映像として浮かび上がりました。
初めて読んだ時は、「へえ~、イベリスの両親には、悲しい恋の物語があったのだねえ」程度にしか感じていなかったのに、今の私はパキラに感情移入しまくり。
『金色の馬篇』のカリンがパキラの悲恋の物語について語る第14話は、物語を最新話まで読み進めた今になって、私の「何度も読み直したい物語の欠片たち」ランキングの上位に躍り出ました。

そこで私がどうしても描きたくなったのが、その両親の悲恋の物語を知った時のイベリス。

その結果、描き上がったのが、今回の番外篇の後篇に使われた挿絵なのです。

ずーんと落ち込んでいるイベリスの左上には母シュンランのイメージの色を、右下からは、湧き上がる砂漠の砂とパキラの苦悩をイメージした色を乗せました。
イベリスの外見については以前から「大柄で金髪のポニーテール」と情報は得ていたので、苦も無く頭の中に居るイベリスを描き出してみました。

そして鶫さんにお見せしたところ
「イベリスのビジュアルはバッチリなんだけど、なんだかイベリスが小さく見える」
とのお返事。

おお、自分では気が付いていませんでしたが、何が原因なのでしょう?

大きい人も、紙の中に収めようと思ったら、その中に入るよう描かれるわけで、単に紙の中で占める面積が大きいか小さいかの問題ではないのでしょう。
ちなみに私のパートナーは身長184cm(しかもブロンドのロン毛…笑)
私が感覚としてイベリスの大きさを掴めていないというわけではないはず。

これはやはり絵のテーマが原因なのではないかと思いました。
両親の事情を知って、ポツネンと寂しがっているイベリス。
しかしこのテーマはどうしてもきちんと合格をいただけるまで描きたい。

「同じテーマでもう一枚描いてみましょうか」
と鶫さんにご相談したところ、
「もう一枚描くのなら、違うテーマで描いてみたら」
と言っていただいたので、スパッとこだわりのテーマを一旦忘れて、改めてイベリスに挑戦してみることにしました。

しかし、イベリスと言えばパキラ、になってしまっている私の脳内。
なかなかイベリスに関して他の物語がついて来ません。

そこで「イベリスという人物を描く」、ただそれだけを思って描いたのが、今回の番外篇の前篇で登場した絵です。
ババーンとイベリスのドアップ。
これでは当初鶫さんと決めていた「イメージ画を描く」という約束から外れてしまうではないか……とドキドキしながらお見せしたところ、鶫さんにとって「まさにイベリス」という仕上がりだったようなのです!
ふう~、良かった…。

結果的に両方の絵に合格をいただいたわけですが、やはり作品としては最初に仕上げた「ポツネンとしたイベリス」が断然気に入っています。


以上、『物語の欠片』のカケラの裏話、イベリス篇でした。
今回の制作の流れが分かりやすく解説できた自信はありませんが、とにもかくにも、物語の中の思い入れの強いテーマを形にできたことが嬉しくてたまりません。

今また、「さあ、次は誰を描かせてもらおうかな」と想像を膨らませては、ニヤニヤしております。

今日の一枚

前回アオイの裏話を書いた時は旅行中だったため、落書きアイテムで仕上げましたが、今回はいつものペンと水彩でのアオサギ先輩と青いRu鳥。
手癖が悪いことで有名なアオサギ先輩、今回はイベリスの職場から貴石の数々をかっさらって来たようです。……まさか、パキラとシュンランの思い出の石が混じっていたりしないでしょうね?先輩?


豆氏のスイーツ探求の旅費に当てます。