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言語のない世界をうらやんで惜しむ話

宇宙一可愛い我が息子の話です(真顔)。1歳過ぎたあたりから喃語が始まり、宇宙語を虚空に向かって延々としゃべるタイプだったんですけど、なかなかそれから先に進まなかったんですねー。

私もズボラ育児をハッシュタグにして掲げているような親なんで、三歳児検診でギリギリ「経過観察にしといてあげるね」と担当医におまけしてもらってもなお、まあ遅いもんは遅いからしょうがないねえと構えているような次第です。当然、早期教育とか一切やりません。

まあズボラと同時に矜持でもあって、世の中、大半のことは自分のコントロール外なんだというわきまえは凄く大事だと思っているんです。それについてはまた別途つれづれしよ。

で、息子はなんでものんびり発達しているようで、能力もありつつ生来のすっげえ慎重派(悪く言うとめちゃくちゃチキンであること)が多大に影響して、歩くのも半年から一年くらいかかったんですよね。

結構みんな記録してると思うんですけど、母子手帳とかに。何歳から座ったとか寝返りしたのは何歳何ヶ月とか歩いたのは、走ったのは、って。人から伝い聞く情報でも、「歩かない歩かないと思ってたら急に歩き出すよ」なんてのが主流で、へーそんなもんなのかと思って観察してたらまー全然そんなことなかったね!!!

ハイハイとかもそう。始めたなあ、ちょっとずつうまくなってるなあ、が積み重なって、半年後・一年後くらいに「おお、もういっちょまえにできるようになってるな」って感じ。発達の仕方なんてほんと一律じゃないっす。だから困るんだ、いつ歩けるようになりましたか?って質問。歩く練習を始めたな〜ちょっと歩けるようになったかも〜二三歩出たね〜よちよち歩けているかな?位でもう半年経ってるんですよ。どのタイミングを「歩けた」と見なせば良いのか!笑

より高度な発達事項になればなるほど、この期間が延長されていくわけです。というわけで、言葉に関してはうちはず~~~っとなだらかに発達、いつだって現在進行形で、「急にしゃべりだすよ!」はマジでうちには通用しません。日々少しずつすぎて、半年前くらいの動画を漁らないと違いに気づけないくらい。

でもこれ、私的にはとてもとても観察のしがいがあってとても嬉しく受け止めてます。人間が言語的にどう発達していくのかをたっぷりと、細かく、見せてもらってるんで。

もちろん基本は真似。息子、私の性でオタクっけが強いので、より台詞くさい(笑)。いろんな台詞を真似している。宇宙語のときも、発語はうまくいっていないけど抑揚的に何がしかの台詞を言っているんだな、ということは分かる程度。で、短い、聞き取れてかつ発語しやすい音が多い単語から使えるようになっていく。まあ彼の場合はなぜかテレビなんかの悪役の、こぶしのきいたセリフ回しなんかがツボだったらしく、「かくなるうえわ!!」とかよく言うタイプだった。おもしろいな。

行為と結びつくとか、絵と結びつくとか、具体的な言葉はもちろん早いです。むしろ抽象度の高いことばは一体どうやって理解しているんだろう!?って感じですが、まあご想像通り経験値です。間違いもたくさん。発語が遅いのは口腔の形も関係していたようです。私のせいで英語まぜまぜ生活になっていたのも原因かもしれませんがもう知らん知らん。なるようになる。

まあでもこれだけ時間がかかると、逆に言葉を使い始めたときにどっきりするんですよ。えっ、言語を獲得した…!みたいな。

しゃべらない人間と生活をともにしながら、毎日のようにその顔を覗き込んでは聞いていたあの頃。「ねえ、頭のなかどうなってんの?言葉を使わずに、いま、どんな風に考えてんの?」もちろん返事はありません。あー、その頭の中割って見てみたい。

言語の無い世界って、どんなもんなんでしょうか。知らない言語が使われている外国に突っ込まれたときみたいなもんでしょうか。言語が無い世界で、彼はどうやって思考しているんでしょうか。映像でしょうか。思考自体が幼いことはさておき、映像で思考するってどんな感じでしょうか。

抽象度の高いことは思考できなそうです。実際にあるものでしか思考できないわけですもんね。難しいことを考えなくていい息子は、とてもシンプルで楽しそうに生きてました。記憶力も弱そうよね。泣いてもけろっとしやすくてとてもいいじゃないか。

我々にとって言語で思考するのってもう癖づいているんで、これを抜くのは相当難しい。でもちょっと考えてみると、実は言語抜きで思考できるとめちゃくちゃ速いのでは??とも思える。理系の人は数字や数式で思考したりしてるらしいし。私も図や絵で思考していることは良くあるけど、やっぱ言語と同時だなあ。

ことばを愛しことばを主力として生きている、そういうタイプの方は一度は考えたことがあるんじゃないでしょうか、「ああ、思考を一回止めたい、そしたらすぐ眠れるのに」。ちまたには頭の中が静かになるお薬も存在するそうで、ちょっと誘惑に駆られるけど、生気もなくなりそうな気がする。

息子はそろそろしゃべりだし、言語のある世界にやってきました。記憶力が格段に良くなり、色々なものの関係性や因果関係を把握するようになり、複雑なコミュニケーションを取るようになりました。過去と未来がある世界に出て来た息子は、これからは何を見ても思考するようになるんでしょう。

初めて口論できたときはやっぱり面白かったです。言語が使えるようになると、急に人間味を帯びますね。なんかちっさい人間が誕生してとてもおもしろかった。まあ議題は「おしりたんていのおしりは臀部か顔面か」だったんですけど。

花や木を見ても、美しいとか汚いとか考えること無く、まっすぐ向き合うことができた世界。人はいつしかそこを出て、あれこれ思い悩む世界にやってきます。ああ、惜しい。こちらはこちらで楽しいけれど、あの世界がとても恋しい。しゃべり始めた息子を前に、まだそんなに急がなくてもいいよなんて思ってしまう毎日。もうすぐ5歳なんだけどね。

しかし最近になってボーっとドライブしているときに、「ねえ、何考えてんの?」と聞いてみたら、なにもかんがえてない、みたいなことを言ってました。まだ言語のない世界にいられるのかもしれん。いいなあ。

ちなみに言語発達に一番寄与したのは耳掃除でした。聞こえてねーんですわ、耳掃除が嫌いすぎて。

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