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画像生成AI放浪譚 - 啓蒙と嗜好のハザマ

画像生成AIが登場してから早くて数か月。Pixivという投稿サイトで「NovelAI」と検索し早い順に並べ替えると、2020年の投稿が目に付く。しかし、その投稿は現在NovelAIで頻繁に作成されているものと比べて少し稚拙であり、まだ黎明期であることがうかがえる。

新しいAI観

最近では、AIに関する話題が事を書かない。2019年ごろ、確かにAIは社会的に脚光を浴びていた。しかし、その当時AIというものが一体全体何を指し示しているのかは誰も理解していなかった。一部それに関して知見の深い人々がいたことは事実だが、あくまでも一部であり、世間一般的にはまだサイエンスフィクションの中に出てくるもの、くらいの認識でしかなかった。

よく考えれば「サイバーパンク」「加速主義」など、テック系が世に躍り出てきたのもここ数年だったように思える。振り返って2010年、確かにスマホは登場したものの、テクノロジーは楽しみをもたらしてくれるか、テクノロジーという社会の側面もあるよね、といった具合で、誰もがそれについて真剣に考えることはなかったように思える。

いや、そんなわけがない。2000年が明けた時点でテクノロジーをベースにした社会観は登場していたし、サイバーパンクも加速主義も、20世紀にはすでに提唱されていたものだ、というものも事実であり、端的に上のパラグラフを鵜呑みにはできないが、AIが文字やコードの世界から画像や映像の世界に出てきたこと、そしてそれが広く普及したインターネットにて公開されたことで、テクノロジーが朝起きてからすぐにアクセスできるようになった、事を考えれば2023年のAI観はどこか「新しさ」が付きまとう。

画像生成AIが盛り上がったのは2022年の10月から11月にかけてであり、基本的にその時期に最も多くの注目が集まったと考えていいだろう。

クリプト冬の時代

2022年の秋ごろに訪れたAIの興隆劇だが、その一方で暗号資産などクリプト界隈は冷えに冷え切っていた。最近ではようやく底が見え始めたと言われているものの、STEPNやAPE、LidoにSuiなど新進気鋭のプロジェクトが乱立していたあの頃を考えると、少し落ち着いた感じが見て取れる。

TerraLUNAの崩壊に始まり、stETHやUSDDのディペッグ騒動、3ACの破綻、最後にはFTXの経営破綻と、何とも言えない年になったと考えるクリプトホルダーは少なくないように思える。

コインデスクでは、これら多くの不祥事に関して鋭い知見で指摘する記事が多く存在しており、暗号資産の先行きや現状に対して様々な意見を述べている。

その中で、2022年を振り返り悪いことばかりではなかったともしている。例えばNFTの盛り上がりは2021年に比べてさほど劣るものではなく、むしろ開発が進んだとして評価している。NikeやEpicなどの大手企業がNFTの活用を進めたり、SBTや身分証明として活用する動きはさらに活発化しており、今後の見通しは良いものとされている。特に、NFTの二次販売は一次発行よりも多く、それがただのJPEGではないことが明らかになった。

NFTのほかにもMergeへのアップデートやDAOの開発もまた、2022年に起きた変化の一つとしている。今後イーサリアムは最終段階である「セレニティ」を完遂させ、真のイーサリアムへと姿を変えようとしている。イーサリアムがアップデートを終わらせるのは2028年ごろとされているが、そのころにどのようなテクノロジーが併存しているのかはわからない。

FTX騒動と画像生成AI騒動の共通点はあるのか?

無理やり並べて考える必要はないと思うものの、FTX騒動とStable Diffusionをめぐる論争にはある種の共通点が見えるようにも思える。それは、テクノロジーに対する盲目である。FTXはなぜ破綻したのか、それは市場トレンドが下降していたからだともうこともあるが、実際にその予兆はLUNAという通貨から見て取ることができた。

LUNAが崩壊したのは一種の恐怖売りであり、実際LUNAが4poolへと移行する際に投げ売りが発生するほどの不安があったかといえば、そこまでひどくはないように考えられる。しかし、LUNAやAnchorの不自然なまでの盛り上がりには不信感が生まれていたことも確かで、ディペッグが起こったことは当然だったのかもしれない。

USTやLUNAはGameFiやDeFiといったWeb3的なプラットフォームを利用しつつ、株式と連動したMirrorトークンでテスラ株やGAFA株を鏡像運用できるみたいな仕組みを取っていた。しかし、それは同時に現行の法定通貨である米ドルや日本円などが介在する市場と乖離しているものであり、USTやAnchor、LUNAが盛り上がるということは、金融戦争ともいうべき衝突や論争が必要不可欠であることは想像にむずかしくはない。

しかし、2021年末にDAOについて世間が多くの記事を排出していた折に、TradFiとCryptoFiとの間に起こるべき衝突はMediumやRedditなど、一部ネットメディアでしか見ることはなく、その規模と盛り上がりの速度を考えるに、明らかに水面下で何かが起きているか、それが表面化した時にテレビニュースとして大々的に報じられるのが不可避であることは、翌年5月の暴落を前にしても予知できることではあった。

そして、そのうえで、やはりTradFiCryptoFiは互いに世界のすべてを包含すべき対象であるため、TerraLUNAの崩壊程度で問題が解消されるとは思ってもいなかった。

コロナ騒動で、アメリカは不換紙幣ドルの流通量をそれまでの2倍ほどに増やしたが、ここで生じたあぶく銭が暗号資産へと流れたという考えはある程度正しいとは思っている。しかし、暗号資産やWeb3がイーサリアムを通じて構想しているものには、あぶく銭が冗談に思えるような野望を考えなければつじつまが合わない気もしている。

暗号資産は危険な投資なのか?

2022年は世間の脚光を浴び、Web3こそが次代のインターネットだといわんばかりの勢いがあった。しかし、今では日本やアメリカの著名な投資家、そして米国SECまでもがその存在に対して否定的になってしまっている。イーサリアムやビットコインのような巨大なプロジェクトであっても、一瞬で価値がゼロになる可能性があるのが暗号の世界でもある。

これから暗号資産に投資をしたいという場合、今のスキームではあまり賛同の意見は得られないように思える。今思い返せば、もともとはアジア市場で勢いがあったクリプトだが、今ではアジアも、その次に移った北米でも人気がない。本当に一部の有識者しか「ウォレットを作りNFTを売買する」ことは行っていないのが現状で、80億もいる人々に届くイメージがない。

最近のテック業界は、ことなにかがはやりだすたびに、かつてのスマートフォンの普及のように全世界に広まると考えがちだが、車やスマートフォン、ゲーム機やコールドウォレットは、それぞれユースケースが異なる。そのため、端的に世界を席巻するのが、その時にバズっているテックとは限らない。

そもそも暗号資産には2つの領域があり、民間か政府か、というところでかなりその対応が異なっている気もする。

民間、というと少し語弊があるものの、イーサリアムやビットコインは政府が積極採用するようなものではなく、どちらかといえばBlackcertsのような独自チェーン上に展開し、最初から利用目的が定まっているものが採用されている。

どういうことかといえば、何かを作り、「これからこのプロジェクトを成長させていきましょう!」というスローガンを持つブロックチェーンより、「このブロックチェーンはこれができますが、これはできません。そして、それだけです。アップデートは行いません」というもののほうがキリがよく、受けがいい。言い換えれば、むやみに野心的にならずに目的だけ添えてあるツール、そのような認識をいかに持たせているかどうかで人気度が変わってくると思っている。



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