宮崎駿から日本アニメ界に渡されたバトン―『君たちはどう生きるか』の作画協力の会社を見て
宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞の長編アニメーション部門を受賞した。めでたいことだ。
『君たちはどう生きるか』について、語りたいことは色々とある。一番好きなジブリ作品ではないが、一番衝撃を受けたジブリ作品だった。
それこそ、人生で初めてのパンフレットを購入するくらい。実は、パンフレットを購入したのは、作品が素晴らしかったのもあるが、もう1つ理由があった。エンディングクレジットでチラリと見た、あることを確かめたかったからだ。
それは、作画スタッフのクレジットの最後に流れる、作画協力をした会社の部分だった。自分が何に衝撃を受けたのか。今日はそのことについて書きたいと思う。それは、その作画協力の会社にクレジットされる会社の「新しさ」だった。
今までのジブリは「老舗」に依頼していた
今までのジブリ作品は、作画協力を依頼する会社はほぼ固定だった。作画の下請けなんかを中心に活動している、小さな会社が主だった。過去作の作画協力の会社を調べてみたので、まずはこれを見て欲しい。
まずは初期作品の代表作品、『風の谷のナウシカ』。
1984年公開である。こちらは動画協力、というクレジットになっているが、以下のような内容。覚える必要はなく、ざっと見てもらえればいい。
『紅の豚』。1992年に公開。
ジブリ作品としては6作品目のこの作品では、作画協力には下記の会社がクレジットされていた。
そして、『君たちはどう生きるか』公開までは、最新作であった『風立ちぬ』。こちらは2013年公開の作品。
どうだろうか。ここまで見て、ピンと来る会社はあっただろうか。ナウシカの「動画工房」と、風立ちぬの「カラー」くらいは、ある程度アニメに詳しい人なら知っているか。テレコムなんかも、それなりに有名なアニメを作っているが、やはり上記2つや「京アニ」なんかの超有名どころではない。記載されているのは、アニメーション作画の元請け会社として規模が小さい会社がほとんどだ。
そして、どれも中心にいるラインナップは変わっていない。恐らく、ジブリと同時期から存在する、いわゆる「老舗」のアニメーション作画の元請け会社を起用していた。
君たちは何を作るか
一方で、最新作である『君たちはどう生きるか』。これにクレジットされる作画協力はどういった会社がクレジットされていたか。パンフレットにはしっかりと掲載されていた。
前半は過去作と同じく、たくらんけやトロトロなど、老舗系のアニメーション会社が掲載されている(Production.IGも元タツノコの割と老舗)。
自分が驚いたのは、後半だ。『鬼滅の刃』や『Fateシリーズ』など、今や人気作品を多数担当している「ufotable」。間違いなく、昨今のアニメ文化を担っている製作会社だ。
さらに、驚いたのが、「Yoster Pictures」がクレジットされていること。Yosterといえば、原神、アークナイツなど、昨今の人気ソシャゲの製作会社。そこの映像コンテンツを担当している会社だ。2020年設立の、生まれたての製作会社である。
まさか、スタジオジブリがソシャゲのアニメを作成しているところに声をかけていたとは。この事実が、自分にとってすごく衝撃的だった。そして、感動もしてしまったのである。
今まで、自社のスタッフと、老舗のアニメーション会社とで作り上げてきたジブリ。そのジブリが新しい世代を担うアニメーション会社に協力を依頼するということ。勝手にそこから、宮崎駿の次世代への応援メッセージと思っている。
『君たちはどう生きるか』は、彼と一緒に作品を作り上げた若い人たちに問いかけている作品だったともいえる気もする。「君たちは何を作るのか」と。
最後に、パンフレットに掲載されていた、宮崎駿の『長編企画 覚書』よりある文章を抜粋したい。
宮崎駿が若手をひっぱりあげた作品が、世界から評価を受けたのは非常に嬉しい。製作に関わった皆さん、おめでとうございます。
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