動画コンテンツの視聴者フィードバックをアンケートで集める方法

近年、企業が生み出す動画コンテンツは、「情報コンテンツ・キャンペーン告知・生配信イベント・ライブコマース」などの形で展開され、インパクト・情報量・ライブ性・シリーズ展開などの訴求力の高さから、最重要のコミュニケーション施策の一つです。

一方で、「労力の割に露出が伸びない」「企画演出の判断基準が無い」「タレント起用効果が不明瞭」など、継続的な運営や効果的な活用に至るには改善活動が欠かせず、動画配信における露出力・訴求力・計画力に対する懸念事項は尽きないものです。

そこでおすすめしたいのが「動画の視聴者アンケート」を実施する方法です。動画のアンケートと言うと大型宣伝広告の効果検証の時に行うイメージがありますが、定常的な動画配信・動画投稿の場面で視聴者にアンケートを実施する方法は有効です。

今回は「動画の視聴者アンケート」の活用法を解説します。

※「動画」の定義について、企業が公式のYouTubeアカウントやInstagramアカウントを通じて発信する生配信イベントや通常のコンテンツ投稿を想定して以下を説明します。バズ目的のショート動画やVlogなどは検討外としているのでご了承ください。

--------------------------

▼ 動画視聴者アンケートの企画メリット

動画視聴者アンケートの企画メリットは、主に2つあります。

企画メリット

* * *

①配信要件を最適化できる

動画の配信企画が成功するかどうかは、ターゲットユーザーの視聴習慣にも左右されます。配信プラットフォーム・配信時間帯/投稿時間帯・配信時間/再生時間、アーカイブの有無などにより、シンプルに見る・見ない、見れる・見れないが決まってきます。

読者アンケートを使うと、動画に対する生活習慣や視聴目的を尋ねる質問項目を通じて自社ターゲットの動画視聴習慣を把握でき、他のメルマガやプッシュなどの施策と同様に、ベースとなる配信要件を最適化して動画の視聴確率を上げることができます。

* * *

②企画や演出を強化できる

動画の効果検証には、インプレッション・再生数・再生時間、シェア・購買数など様々な指標が存在しています。しかし、再生関連データだけ見ていても「対策」は立てづらいものです。評価や実態はわかってもどのように改善すればよいかは不透明です。

読者アンケートを使うと、動画の中身に焦点を当てた質問を通じて、演者や企画の効果を問うことができます。しかも、ファンユーザーはもちろん全国のターゲット視聴者を対象にして詳細に属性情報を分析することで、効果的な企画演出を把握できます。

* * *

ここまで、動画視聴者アンケートの企画メリットを説明してきました。動画コンテンツそのものはクリエイターの企画力によりクオリティが決まってきますが、どのようにターゲット視聴者に届けるかという「How」の要件を考える時に、読者アンケートはコンテンツの可能性をさらに深めていく引き出しとなってくれます。

--------------------------

▼ 動画視聴者アンケートのモデルケース

定常的な動画投稿をアナリティクスツール以外で分析する方法はまだ一般的にはあまり取られていませんが、提供プロダクトの生配信イベントを行うアプリ事業者が視聴者アンケートを実施する流れは確実に増えてきています。

動画体験を視聴者の日常における1つのイベント体験と捉えるなら、生配信も定常的な投稿も同じ価値を持つはずであり、ライブ的な要素を持ったイベント性の有無にかかわらず等しく検証対象としていくことをおすすめします。

以下では、動画視聴者アンケートで代表的な4つのモデルケースを解説します。

モデルケース1

モデルケース2

--------------------------

▼ ①実態把握モデル

実態把握モデルは、「視聴者の自社動画視聴習慣の把握に使う」調査モデルです。日常生活における自社動画の視聴習慣や、消費行動における自社動画の存在価値を把握することは他のデータ分析では難しく、アンケートを活用する意義が大いにあります。

実態把握モデル

* * *

<質問構成>
①あなたは[○○](メディア名称)をどれくらいの頻度で視聴していますか(単一回答)【視聴習慣】
②あなたが[○○](メディア名称)を見る時の視聴形態をお選びください(複数回答)【視聴形態】
③あなたが[○○](メディア名称)を見る主な目的をお選びください(複数回答)【視聴目的】

核となる質問構成は、①視聴習慣、②視聴形態、③視聴目的となります。

まず、①視聴習慣の質問を通じて、自社動画の視聴頻度を確認します。この質問の選択肢は定量的な頻度で構成できるとベストですが、配信・投稿頻度にも左右されるため、直近1年程度を基準として、ほぼ毎回/ときどきなどで構成しておくとよいでしょう。

次に、生配信・ライブ形式のイベントの場合、②視聴形態の質問で、生配信・アーカイブなどを確認します。これらの①②の質問を通じて、自社動画の生活における意義や、視聴頻度や視聴形態による視聴者ユーザーの動画への関与度の高さを理解できます。

最後に、③視聴目的で企画の魅力や演出の工夫に対する評価を聴取します。動画コンテンツに対する回答傾向として、テーマのほか、出演者・コメント/チャット・情報発表・暇つぶしなどが考えられ、企画/演出/編成の強化領域を模索することができます。

* * *

ここでは、テレビ東京が放送している経済情報を中心とするニュース番組「WBS ワールドビジネスサテライト」の視聴者アンケートの例を見てみましょう。

<WBS ワールドビジネスサテライト>視聴者アンケート
①視聴頻度 Q.番組の視聴頻度は?(毎回/週数回/週1回/月1回/視聴しない)
②視聴時間 Q.番組の視聴時間は?(開始15分/開始30分/最初から最後まで/途中から/その他)
③視聴目的 Q.番組の視聴目的は?(最新情報/関心テーマの情報/分析・解説/独自の特集や企画/トップインタビュー/出演者/スキルアップ)

「WBS」では、番組視聴者を対象としたアンケートを実施しており、①視聴頻度②視聴時間の質問を通じて、日頃の番組視聴習慣を聴取していました。特に番組開始からの視聴時間(≒完全視聴率)は夜の激戦区である放送時間帯を考えると有効な情報です。

また③視聴目的では、経済コンテンツ・経済コメンテーター・経済界の人的ネットワークを活かした選択肢を通じて番組の強みを検証しています。1つのテーマのもとに多数の視聴者がそれを楽しみに同時刻に集う形式は、大きなコミュニティに匹敵します。

--------------------------

▼ ②希望聴取モデル

希望聴取モデルは、「視聴者層に最適な動画編成の確認に使う」調査モデルです。動画の配信や投稿のルーティンは、自社の運営形態(営業時間)によりある程度規定されていきますが、アンケートを使うと視聴者側の事情も考慮に入れることができます。

希望聴取モデル

* * *

<質問構成>
①[○○](メディア名称)の配信(更新・実施)頻度として、あなたがちょうどいいと思うものをお選びください(単一回答)【希望頻度】
②[○○](メディア名称)の視聴(配信・再生)時間として、あなたがちょうどいいと思うものをお選びください(単一回答)【希望時間】
③[○○](メディア名称)の配信(公開・実施)時間帯として、あなたがちょうどいいと思うものをお選びください(単一回答)【希望時間帯】

核となる質問構成は、①希望頻度、②希望時間、③希望時間帯となります。

①②③の質問を通じて、前問の実態ベースに対して今度は希望ベースでの視聴者の分布や割合を把握することができます。②希望時間については、配信分数あるいは再生時間を尋ね、番組形式では30分~120分、通常動画では1分~15分あたりを目安とします。

もちろんここで得られるのはあくまで視聴者の希望であり、すべて実現するのは難しかったり、正しいとも限りません。ですが、アンケートを取っておくことで、作り手都合になりがちな配信や投稿を、企画/演出/編成の面から調整する余地を模索できます。

* * *

ここでは、XFLAGが運営するパズルRPGゲームアプリ「コトダマン」のユーザーアンケートの例を見てみましょう。

<コトダマン>ユーザーアンケート
①希望頻度 Q.希望の実施頻度は?(月4回以上/月2回以上/月1回程度/3ヶ月に1回程度)
②希望時間 Q.希望の配信時間は?(2時間以上/1時間30分程度/1時間程度/30分程度)
③希望時間帯 Q.希望の配信時間帯は?(18時/19時/20時/21時/…)

「コトダマン」ではアプリ側のイベント実施と並走するように定期的にユーザーアンケートを実施しています。①②③の質問を通じて、頻度・分数・時間帯などの配信実施要件の希望を視聴者から聴取して、YouTubeでの生配信イベントに役立てています。

生配信・アーカイブ問わず、配信の実施要件を生活のルーティンにフィットさせる取り組みは重要であり、「○曜日の○時にアクセスすると見たい情報(コトダマンで言うと最新情報や攻略情報など)がアップされる」という意識を育むことができます。

--------------------------

▼ ③効果測定モデル

効果測定モデルは、「演者の起用効果や意識変容の確認に使う」調査モデルです。商品・サービスの魅力を伝える動画では、誰が出演しているか(薦めているか)は重要な要素であり、YouTuber・インフルエンサー・タレント社員の起用効果を見極めます。

効果測定モデル

* * *

<質問構成>
①あなたは[○○](演者名称)がイメージキャラクターを務める[○○](メディア名称)のことをご存知でしたか(単一回答)【動画認知】
②あなたはこの動画で [○○](演者名称)が[○○](メディア名称)のイメージキャラクターを務めることについて、どのような印象を持ちましたか(自由回答)【動画印象】
③あなたはこの動画で [○○](演者名称)が[○○](メディア名称)のイメージキャラクターを務めたことで、[○○](ブランド名称)に対してどのような印象を持ちましたか(複数回答)【動画効果】

核となる質問構成は、①動画認知、②動画印象、③動画効果となります。

アンケートでは①②③の質問を通じて、イメージキャラクターを起用したことによるブランドの認知や印象のリフトアップを把握することができます。ユーザーステータスも取得しておけば、既存と新規それぞれへの効果の程度も見極めることができます。

また、効果測定モデルでは企画のアップデートの都度アンケートを実施しておくと、前回比較により変更や改善の成果をいっそう認識しやすくなります。ですので、動画のシリーズや企画・演出を変えるタイミングでアンケートを実施できるとベストです。

* * *

ここでは、ゴルフゲームのロングセラー「みんゴル」(アプリ)のユーザーアンケートの例を見てみましょう。

<みんゴル(アプリ)>ユーザーアンケート
①利用動機 Q.利用のきっかけは?(SNS投稿/広告/YouTube動画/友人/ストアランキング…)
②公認YouTuber認知 Q.公認YouTuberの存在を知っている?(知っており動画も見ている/名前だけ知っている/知らない)
③希望の動画企画 Q.希望の動画企画は?(フリーコメント)

「みんゴル」のユーザーアンケートでは、動画展開の中でもアンバサダーの起用効果を検証するため、①利用動機や②公認YouTuberの認知を尋ねていました。他にも存在する各種情報接点の中で、動画施策の認知と影響力を探る質問構成になっています。

また、③希望の動画企画(自由回答)はアンバサダー企画を充実させる観点から質問が用意されており、企画の切り口とバリエーションが重要になるYouTube展開において、ファン及び視聴者の声をもとにアンバサダーの効果的な起用を模索しています。

--------------------------

▼ ④実演企画モデル

実演企画モデルは、「実演販売で購入を促す演出の検討に使う」調査モデルです。動画配信中に実演形式で商品を紹介して販売するライブコマースは世界的に成長産業であり、日本でも機能を実装するプロダクトが増えているので最後に紹介させてください。

実演企画モデル

* * *

<質問構成>
①あなたが[○○](自社または他社のライブコマースメディア名称)の実演販売で、ご自身で自分用に購入したことがある商品をお選びください(複数回答)【購入商品】
②あなたが[○○](自社または他社のライブコマースメディア名称)の実演販売で商品を購入する決心の後押しになった演出としてあてはまるものをお選びください(複数回答)【購入の後押しになった演出】
③あなたが[○○](自社または他社のライブコマースメディア名称)の実演販売で商品を購入すると決めた時の気分や感情を自由にお書きください(自由回答)【購入時の気分や感情】

核となる質問構成は、①購入商品、②購入の後押しになった演出、③購入時の気分や感情となります。

このアンケートでは総じて自社または他社のライブコマースメディアを調査対象とします。まず、①購入商品の質問で購買実績が高いカテゴリを確認し、実演販売に向く商材や演出を把握します(化粧品やファッションであることが多いので品目まで尋ねる)。

次に、②購入の後押しになった演出の質問で、動画配信/再生中に購入のきっかけとなったポイントを探ります。ここは商品説明・価格発表・コメントなどがよく上位に来ます。③購入時の気分や感情の質問も含め、インサイトに合わせた演出を強化します。

この調査モデルで目立った企業事例をまだ見たことはないのですが、ECや動画/コミュニケーションSNSのプラットフォーマーがこぞってライブコマース事業に参入しているここ数年の現状を見ると、今後リサーチのニーズが増していくテーマだと思われます。

--------------------------

▼ 取材記事のお知らせ

データマーケティング・マガジン「マナミナ」にて、今回の記事テーマである「動画の視聴者アンケート」をテーマにしたインタビュー取材をしていただきました。実務での応用方法などはこちらでも解説していますので、よかったら併せてご覧ください。

▼ 自社の動画コンテンツ運用を改善する「動画視聴者アンケート」2つのメリットとは?|マナミナ(この記事の取材解説です)


いただいたサポートは執筆休憩時のお茶請けなどに大切に使わせていただきます★