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"ドージャ・キャットの刺激的な転身: アルバム「Scarlet」の扉を開けて見えたもの"

Doja Cat(ドージャ・キャット)と言えば、誰もがその名を知る今をときめくアーティスト。ロサンゼルス出身の彼女は、SoundCloudでの活動をきっかけに星のように輝き始め、2019年のアルバム「Hot Pink」で全米チャートを席巻。特に「Say So」のRemixは、ニッキー・ミナージュをフィーチャリングに迎え、女性二人がパフォーマンスした曲としては初の全米1位獲得という快挙を成し遂げ、ギネス世界記録にも名を刻みました。

続く2021年、彼女は「Planet Her」を発表。このアルバムは世界13カ国でトップ10入りを果たし、その年の世界トップ10の売上げアルバムの一つとなるなど、その実力を証明しました。さらにグラミー賞のノミネートも受け、彼女の躍進は止まることを知りません。そして、2023年、Time誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に名を連ねるなど、その影響力は日増しに広がっています。

そんな彼女が、2023年9月に待望の4枚目のアルバム「Scarlet」を発表。今回の記事では、この最新アルバムにスポットを当て、詳しくご紹介したいと思います。興味を持った方は、ぜひ最後までお付き合いください。

レーベル  : Kemosabe Records & RCA Records
リリース日 : 2023年9月22日
名前    : Doja Cat
本名    :    Amala Ratna Zandile Dlamini
年齢    : 27歳
出身地   :    カリフォルニア州ロサンゼルス


キャリアにおける精神的な苦悩と本音

ドージャ・キャットは、3rdアルバム「Planet Her」によりSpotifyのストリームで女性ラッパートップの座に輝きました。さらに、SZAとのコラボレーションによるヒット曲「Kiss Me More」でグラミー賞を受賞し、その成功を受けて、BETアワードで「最優秀女性ヒップホップアーティスト」にノミネートされました。しかし、一部のファンからは、彼女の音楽が「ポップすぎる」との意見が寄せられていました。

これについて、ドージャ・キャットはTwitter(X)で「私をラッパーとして軽視しないで欲しい。最新のリリースを聞いて、私の作詞の才能を尊重してほしい」と反応。さらに、Rolling Stone誌での特集でも、「私をラッパーとして認識しない人々は、実際のところを理解していない」との立場を明確にしました。

インタビューでは、彼女は「伝統的なラッパー」のイメージにとらわれず、自分のスタイルを追求してきたことを語り、ラップという表現方法を自身のクリエイティブな手段として確立した経緯を明かしました。

私は最初からラップしてきたし、実際、最初はそんなに上手く歌えなかった。でも、時間とともに上手くなったわ。私は自分の声をツールとして使っているから、私がラップをできないと思われても全然構わないわ

さらに、彼女は4枚目のスタジオアルバムが「主にラップ」になること、そしてポップスはこれ以上手掛けないと明言しました。

私のラップの多くが平凡で陳腐だと言う人たちに同意するわ。
私もそう思う。何かを証明しようとしていたわけではなく、ただ音楽を作るのが楽しかったの。
でも、私がラップできないと言われるのにはうんざりしたから、今度は証明するわ。
今度のプロジェクトは、私がこれまでやってきたこととはまったく違うものになりそうで、ワクワクしているの。
そしてもうポップスはやめるわ、ポップスはもうエキサイティングじゃない。もう作りたくないの。

さらに、ドージャ・キャットは、自身の2枚のアルバム「Hot Pink」「Planet Her」が「金のためだけの作品」と「一般受けするポップヒット」として批判されていることに言及しました。また、過去にはインスタグラムのライブ配信で「やりたくないことをたくさんやってる」と感じていることをファンに伝えています。

私が言いたいのは、ただ気ままに音楽を作って、楽しんで、大好きなことをやって、何かを作ったりすること。
この5年間、そんなことはしていないような気がするわ。
私はやりたくないことをたくさんやってる。例えば、写真撮影は楽しいけど、それをする必要があるからやってるわけじゃない。ファッションは大好きだけど、それを義務感からやるのは嫌。
そういうことをするように強制されるのは嫌だ。ただ家でリラックスして、音楽を作りたい。そしてTVゲームを楽しみたいわ。

2日間で25万人のフォロワーを失う

パラグアイ事件:フェスティバル中止から一時引退へ

2022年3月、ドージャ・キャットが出演する予定だったパラグアイのフェスティバルが悪天候で中止となり、多くのファンが彼女を一目見ようととホテルに集まりました。しかし、彼女は姿を見せず、SNSの更新もありませんでした。これにより、彼女がパラグアイのファンを軽視しているとの声が上がりました。これに対し、彼女は音楽活動からの引退を宣言。Twitterの名前も「I Quit」と変更。しかし、2日後に感謝の意を示し、活動を再開しました。

ファンに「愛していない」と発言しX(ツイッター)で口論に

2023年7月、ドージャ・キャットはX(ツイッター)でファンへの愛情についてのコメントを投稿し、多くの反響を呼びました。ファンから「私たちを愛しているの?」との質問に、彼女は自分はファンを愛していないと明言。
彼女は自身のスタイルと原則に忠実であり、ファンは彼女の成功をサポートしていると指摘しました。それでも、彼女のコメントはある程度挑発的で、ファンが自らを「kittenz(子猫たち)」と名付けるのを否定し、別の愛称を提案するよう促しました。

私のファンは自分で名前をつけないわ。
もしあなたが自分自身を「kitten(子猫)」または「kittenz(子猫たち)」と呼ぶなら、あなたはスマートフォンを置いて、仕事を見つけて両親の手助けをする必要があるということ。

ファンの1人は「あなたが私たちに与えた名前を使っているだけだ」と反論しましたが、彼女は「アルコール依存症の10代の頃につけた名前だから」と答え、ファンが「kittenz」を使えない場合、どの名前に変えるべきか尋ねると、彼女は「アカウントを削除して、すべてを考え直して。まだ間に合うよ」と答えました。

続けて、ファンの1人は「(私たちを愛してる)と言ってほしいのを聞きたい」と返信しましたが、彼女は「知らないから、あなたたちを知らないから」と返答しました。この一連のやり取りで多くのファンが彼女に失望し、ドージャ・キャットのInstagramのフォロワー数は2日間で25万人減少しました。

アルバムについて

最新アルバム「Scarlet」を公開した彼女は、この作品でイギリスのエレクトロニックグループOpus IIIビースティ・ボーイズの音楽から強い影響を受けたことを語りました。


Opus IIIからの影響は私にはかなりのものだったわ。
彼らの音楽を通じて私の中の考えや感じることを知りたいなら、その曲をチェックするのがベスト。

そして、Beastie Boysについて言わせてもらうと、彼らは私の音楽的なインスピレーションの源の一つ。
彼らはハードでワイルドなラップをしてるけど、同時に私が心から愛している90年代のピュアなパンクや、セクシーでエレガントなテクノの要素も持っているのよ。そのヴォーカルの歪みや美しさを私の曲にも取り入れたくて。

ポップとしてどう受け取られるかは分からないけど、制作する際にはそんな感じを持ちながらやっているの。
真実味ある、フィルターのない、ハードコアなパンクの要素にフォーカスしていきたいわ。

収録曲について

この新作には全17曲が収録されており、彼女にとって初めてとなる、全曲がソロ演出でのアルバムとなりました。

「Paint the Town Red」

アルバムのオープニングトラックである「Paint the Town Red」は、2023年8月に先行シングルとしてリリースされ、彼女の2回目となる全米チャート1位を獲得しました。TikTokではこの曲が大ヒットし、61万8,000以上の動画で使われました。この曲は、18カ国の音楽チャートでも1位になり、SpotifyではUSトップ50デイリーチャートとグローバルSpotify 200デイリーチャートの両方で1位を記録。さらに、女性ソロ・ラップとしては初めての1億回再生を最速で達成する楽曲となりました。

Doja Cat - Paint The Town Red

「Demons」

2曲目の「Demons」は、2023年9月に先行シングルとしてリリースされました。この曲では、エミネムタイガなどのヒット曲を手掛けたd.a. got that dopeがプロデューサーとして参加し、ドージャ・キャットがハードなヒップホップビートをフィーチャーしながら、批判と侮辱に立ち向かうテーマを探求しています。この曲は、彼女が以前のポップサウンドからヒップホップへと音楽スタイルを変えたことを示しており、批評家からも高評価を受けています。また、曲のプロモーションにはSNSやミュージックビデオが利用され、ドージャ・キャットは悪魔のイメージをフィーチャーしています。

Doja Cat - Demons

「Gun」

7曲目の「Gun」は、このアルバムで5曲をプロデュースしているKurtis McKenzieと共同で制作されました。この曲では、透明感あるビートにドージャ・キャットらしい軽快なラップが楽しめますが、タイトルの「銃」はパートナーの「貴重な部分」を指しおり、同時に曲中では性的な歌詞が含まれ、挑発的な言葉が連続して登場します。

Doja Cat - Gun

「Agora Hills」

10曲目に収録されている「Agora Hills」は、恋愛の美しさを祝福する楽曲で、ドージャ・キャットは批判の声にも関わらず愛の力を堂々と披露しています。この曲は恋愛、欲望、そして愛情というテーマを率直に探求し、歌詞は情熱溢れる無垢な関係を描き出しています。特に、この曲はコメディアンかつインターネットパーソナリティ、Jeffrey "J" Cyrusへの隠し気のない愛の賛歌として位置づけられており、彼女は2人の関係を公に示す勇気を表明しています。

「Agora Hills」は、ドージャ・キャットの最新アルバムからのセカンドシングルとして2023年9月22日にリリースされました。この曲では、R&BグループTroopの1989年にリリースされたヒット曲「All I Do Is Think of You」のサンプリングがフィーチャーされており、そのメロディは曲の0:24秒のマークで(そして曲全体にわたって)聞くことができます。

なお、曲のタイトル「Agora Hills」は、ロサンゼルス郊外の「Agoura Hills」の誤字であり、これはDoja Catの幼少期の住んでいた地域を指していますが、歌のテーマとは直接関係ありません。

Doja Cat - Agora Hills

Troop - All I Do Is Think of You (1989)

「Attention」

15曲目の「Attention」は、アルバムからの先行リードシングルとして2023年6月にリリースされました。この曲は、ブーンバップなビートを背景に、ドージャ・キャットが自身の外見の変化やソーシャルメディアの存在、ニッキー・ミナージュとの比較について語る1990年代風のヒップホップ曲です。歌詞では、他者からの注意や愛情を求めるテーマが探求され、普段は自信満々に見える彼女の脆弱性と謙虚さが強調されています。また、この曲はドージャ・キャットがポップ音楽からヒップホップへの転向を示すものとなっており、彼女自身がこれを「再生することを意図していないメッセージ」と説明しています。

Doja Cat - Attention

おわりに

ドージャ・キャットの新作「Scarlet」は、これまでのポップスターとしてのイメージから一転し、ヒップホップとパンクの要素を取り入れた新たな音楽的方向性を示しました。アルバムは彼女のボーカルパフォーマンスの幅と深さを再度披露し、歌とラップを自在に切り替える才能をさらに見せつけています。しかし、テーマの不足やフィーチャーの欠如、そして長めのランタイムが指摘されている点は改善の余地があると言えます。

このアルバムでは、ダークでパンクテイストのスタイルが前面に出ており、ドージャ・キャットの音楽スタイルの変化が明らかになっています。批評家とリスナーからのフィードバックはさまざまで、一定の評価は得ているものの、全体的には高評価は得られていないようです。特に、この作品は彼女のユーモラスな個性を新たなレベルで表現しており、過去の作品と比較してもその予測不能な個性がより明確に表れています。

全体として、「Scarlet」はドージャ・キャットが新しい音楽的挑戦を行い、自身の音楽スタイルと才能をさらに拡大する舞台として位置づけられています。しかし、一部のリスナーや批評家には受け入れられていないようで、期待と実際の受け止め方の間にはギャップが見られます。

それでも、「Scarlet」はある種の勇気を示す作品であり、ドージャ・キャットが既存の枠を超えて、自身の音楽道を探求し続ける意志を明示しています。アルバムに対する評価の多様性は、音楽というアートが常に進化し、異なる解釈を受け入れる余地があることを示しているのかもしれません。
ドージャ・キャットはこれを認識し、自身の音楽的道を歩み続けています。

今後も彼女の音楽は進化し続けるでしょう。おそらく、未来のプロジェクトではさらなる評価と共感を得ることができ、そして、「Scarlet」での挑戦が彼女にとって重要な一歩であったことを証明することになる… のかもしれません。


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