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オートチューンの先駆者が自身の楽曲をサンプリング! T-Pain & Kehlani - I Like Dat (2021)

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2000年代にオートチューンを駆使し、数々のヒット曲を連発したT-Pain

彼が巻き起こしたムーブメントも相まって、昨今の音楽業界では日本も含め、オートチューンは欠かせない存在であるように感じます。

そんなブームの先駆者になったT-Painが、人気フィメールシンガーKehlaniと新曲「I Like Dat」をドロップ。

この曲は2007年に全米チャート1位に輝いた自身の代表曲を、自らがサンプリングしたことで話題を集める1曲となりました。

今回はそんな話題沸騰のこの曲と、オートチューンのルーツにについて解説します。

レーベル  : Nappy Boy Entertainment

リリース日 : 2021年5月14日

名前    : T-Pain & Kehlani

年齢    : T-Pain 35歳 Kehlani 26歳


出身地   :    T-Pain フロリダ州タラハシー
            Kehlani カリフォルニア州オークランド

T-Pain & Kehlani - I Like Dat (2021)

オートチューン (Auto-Tune)とは

昨今のHip HopではTravis ScottFutureLil Uzi Vertなど人気ラッパーに数多く取り入れられているオートチューン。

これは1997年にAntares Audio Technologies社によって発表されたオーディオプロセッサーであり、音程の狂いを修正したり、音程が少しずれていたボーカルトラックを完璧にチューニングすることができる機材となっています。

70年代から活躍していたFunkバンド "Zapp" のメンバーであるRoger Troutmanが "トークボックス" を使用していたことは有名ですが、Michael JacksonBobby Brownなどを手掛けたTeddy Rileyが"トークボックス"を用いていたことが、T-Painのオートチューン使用に大きく影響を与えたと明かしています。

そんな彼のデビューアルバム「Rappa Ternt Sanga」(2005)を耳にしたKanye Westはそこから大きく影響を受け、アルバム「808s & Heartbreak」をリリース。この作品ではT-PainKanye Westにオートチューンの活用方法をコーチングしたとも言われ、これまでのラップスタイルから大きく路線を変えた作品となりました。

また、このKanyeの作品をきっかけにThe WeekndLil Uzi Vertといったアーティストが影響を受け、"エモラップ" や現行のR&Bのブームを作り上げたとも言われています。

その後オートチューンは、Lil Wayneの「Lollipop」(2008)Snoop Dogg「Sexual Eruption」(2007)など全米中のラッパーにも大きく影響を与え、一躍世界的に認知されることになりました。

このブームにベテランラッパーのJay-ZがDisソング「D.O.A.(Death of Auto-Tune」(2009)をドロップ。この曲ではT-Pain個人を批判するものではなく、業界全体がブームに乗っていることに一石を投じており、彼が考えるHip Hopカルチャーを先導しようとしていたのかもしれません。

経歴

T-Painのキャリアスタートには、Akonとの出会いが大きく影響しています。 Akon「Lonely」(2004)Don't Matter」(2006)などが全米中でヒットし、グラミー賞にノミネートされたシンガーです。

そんな彼のヒット曲「Locked Up」(2004)T-Pain「I'm Fucked Up」と題したカバー曲をドロップ。この曲を耳にしたAkonは、すぐさま自身が率いるレーベル "Konvict Muzik" とサイン。このレーベルには世界的ポップアイコンでもあるLagy Gagaも過去に在籍していました。

契約後にデビューシングル「I'm Sprung」(2005)をドロップし、全米チャート8位にランクイン。近年ではT-PainTory Lanezによるシングル「Jerry Sprunger」(2019)でセルフサンプリングされたことでも話題になりました。

T-Pain - I'm Sprung (2005)

2007年に発表したアルバム「Epiphany」「Buy U a Drank (Shawty Snappin')」やレーベルメイトのAkonが参加した「Bartender」などのヒットソングを収録し、初の全米チャート1位を獲得。

T-Pain feat. Akon - Bartender (2007)

また同時期に数多くのコラボレーションをしていたT-Painは、Plies「Shawty」(2007)Chris Brown「Kiss Kiss」などにゲスト参加、ヒットソングに欠かせない存在となっていました。この中でもFlo Rida「Low」(2008)は、10週に渡って全米チャート1位に輝き、年間シングルチャート1位を獲得。

またKanye Westとの「Good Life」(2007)はグラミー賞「Best Rap Song」を受賞しています。

またT-Painは、Bruno Marsのアルバム「24K Magic」(2018)収録曲の「Straight Up & Down」ではソングライターとして楽曲提供。アルバムはグラミー賞で7部門を受賞し、T-Painのマルチな才能も垣間見れるヒット作となりました。

"I Like Dat" 元ネタ情報

元ネタとなったのは、前述したアルバム「Epiphany」に収録している「Buy U a Drank (Shawty Snappin')」(2007)です。

セルフプロデュースとなったこの曲は、キャリア初となる全米チャート1位に輝き、音楽メディア誌 "Rolling Stone" の「2007年のベストソング100」で63位に選出されています。

またこの曲についてT-Painは次のように語っています。

These days lots of people begin their relationships in the clubs.
Whole conversations begin with some guy buying a young lady a drink.
 I wanted to make a song for those folks

最近はクラブで恋愛を始める人が多い。
若い女性にお酒をおごることから会話が始まる。
そんな人たちのための曲を作りたかったんだ。

T-Pain feat. Yung Joc - Buy U A Drank (Shawty Snappin') (2007)

I Like Dat

イントロからサンプリング全開のこの曲は、歌詞も元ネタを踏襲し、女性にお酒を奢ろうとしている様子を描写しています。しかし女性がお酒を奢られるより、お金が直接欲しいと、現金主義なのが印象的です。

She don't want drinks no more if you ain't bringin' no dough to the table
Ooh, ooh, you know that your bank account big, come back on a weekend, you ain't able
Ooh-ooh, ooh-ooh, she gon' be like, "I got it," pull a thousand dollars out her side pocket
Ooh that lil' bit of drank you tried to buy, stop it
Bottles on me, the cork look like a skyrocket, pop it
Ooh, ooh-ooh, she don't want the drink, she want the rent paid
Ooh, ooh-ooh, she don't pay for nothin', she just get paid
Ah, ah, ah-ha, I like that
She don't even need me to try
Ooh, ooh-ooh, she pull up in the 'Rari with the roof up
Ooh, ooh-ooh, I'm just buying drank, she doin' too much, oh-oh, oh-oh, oh (Ooh yeah)
I like that, she don't even need me to buy her nothin'

君がテーブルに金を持ってこないなら、彼女はもうドリンクを欲しがらない
銀行に貯金があっても、週末に戻ってきてはもう手遅れだ
彼女は「わかった」と合図して、サイドポケットから1000ドルを引き出す
君が買おうとしてやめた、ちょっとしたお酒
ボトルは俺の奢り、コルク栓はロケットみたいだ よし開けよう
彼女はドリンクが欲しいんじゃない、家賃が欲しいんだ
何も払わず、ただお金をもらっている
俺はそれが好きだ
俺が試す必要さえない
彼女はオープンのフェラーリで登場
俺はただ酒を買っているだけ、彼女はやりすぎだ
気に入ったよ、彼女には俺が何も与えなくていいんだ

終わりに

T-Painは4月に発表したラッパーのAJ Tracey「Summertime Shootout」でコラボレーションし、続いて翌月に今作がリリースとなりました。

これらの曲は、有名人やミュージシャンからの何百もの共演願いのメッセージを見逃していたことに気づいたT-Painが、数年かけてそれを回収するという計画の一部となっているようです。

今後どんなコラボ作が出てくるかワクワクしますね。

2000年代に数多くの客演業、オートチューンでムーブメントを作った彼が、再び旋風を巻き起こせるのか。今後の動きに要注目です。

こちらで紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

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