見出し画像

リリカル・レモネード「All Is Yellow」: ミュージックビデオの名手がアルバムで魅せる新たな挑戦

Lyrical Lemonade(リリカル・レモネード)は、2013年にCole Bennett(コール・ベネット)によりインターネットブログとして創設されました。シカゴ出身である彼は、地域のラッパーたちに焦点を当てたミュージックビデオの制作を始め、その中でもジュース・ワールドの『Lucid Dreams』のビデオを手掛けたことで、全米レベルでの認知度を獲得しました。この楽曲は全米チャートで2位に達し、ベネットリリカル・レモネードの名前を広く知らしめる結果となりました。

以後、多数の新進ラッパーの台頭に貢献し、リリカル・レモネードのYouTubeチャンネルは登録者数2,100万人を超え、総再生回数は100億回を突破するなど、ヒップホップシーンにおける大きな影響力を持つようになりました。

そして2024年1月26日、リリカル・レモネードとして待望のデビューアルバム『All Is Yellow』をリリースしました。

この記事では、アルバム『All Is Yellow』に焦点を当て、その魅力を探求します。興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

レーベル  : Def Jam Recordings, Grade A Productions, Lyrical                Lemonade & Universal Music Group
リリース日 : 2024年1月26日
名前    : Lyrical Lemonade
本名    :   Cole Bennett
年齢    :   27歳
出身地   :   イリノイ州プレイノ


Cole Bennettが語る、アルバムのタイミングと自身の成長

コール・ベネットは、エミネムジャック・ハーロウLil MoneyInternet Moneyなど多くのアーティストのミュージックビデオを手掛けてきましたが、リリカル・レモネード名義でのアルバム制作には以前は消極的でした。これは、レコード会社や業界への不信感からでしたが、最近になってその考えを少しずつ変えてきたと述べています。

いつも「Lyrical Lemonadeのアルバムがあったら本当にいいな」という話をしていたよ。それは、俺らと一緒に仕事をしているたくさんのアーティストたちと協力して、さまざまな雰囲気を創り出し、異なる世界を結び付けるためのコンピレーション・アルバムなのだけど、俺は絶対にやりたくなかったんだ。なぜなら…。ずっとずっとレーベルが本当に嫌いだったんだ。ただ、俺を不快にさせたからね。
でも今は、そのありがたみをもっと理解できるようになった。成長したんだと思う。俺はDIY精神が強かったから、反産業的で、やりたくなかったし、タイミングも悪かった。レーベルは、こぞってLyrical Lemonadeをサブ・レーベルにしてジョイント・ベンチャーをやりたがった時だったから、俺はそんなことはしたくなかった。俺は自分が何をしているのか分かっていなかったし、状況を十分に理解していなければ何にも関与したくなかった。俺は数字に強い人間でもない。誰との契約にも縛られたくない。好きだからやっているんだ。これが俺の情熱なんだ。だから、金銭的な動機だけで動いている人たちを見ると、深く関わりたくないと感じる。自分の望まない方向に引っ張られているような気持ちになるんだ。

彼は以前からリリカル・レモネードのアルバムを作りたいと考えていましたが、実際、準備が整ったと感じたのは最近であったと明かしています。

俺は何年も前から「Lyrical Lemonade」のアルバムを作ることについて話していたんだけど、準備が整っているとは感じなかったんだ。でも、今がベストなタイミングだと思う。なぜなら、俺は長い間ミュージックビデオを制作してきたし、たくさんの素敵な関係を築いて、自分の好みをこれまで以上に理解しているからね。
俺は常に過去を振り返っているんだ…もし2017年や2018年にLyrical Lemonadeのアルバムを制作していたらどうなっていただろう?どんな感じになっていただろう?俺のセンスでは熟成できなかったと思うし、十分に誇れるものになったかどうかもわからない。でも今は、サウンド的にどうしたいのか、どういう流れにしたいのか、どういうストーリーにしたいのかを理解している。コンピレーション・アルバムだけど、すべての曲がゼロから作られていて、一貫したテーマがある。世界を構築しているんだ。それを2018年や2019年に作れたかどうかはわからない。無意識のうちに、そういうものに足を踏み入れる前に、アーティストとしてもっと成長する必要があると気づいたんだと思う。

コール・ベネットは、アルバム制作において監督だけでなく、制作全体をゼロから手掛け、統一された世界観の構築と多様なアーティストの集結を行ったことを強調しています。彼はこのアルバムの全曲にミュージックビデオを制作するという野心的な決断をし、その挑戦についても語っています。

このアルバムを通して、監督として、アルバムのプロデュースから全曲の創作、この独自の世界観の構築、さまざまなアーティストたちとのコラボレーションに至るまで、一手に担ったんだ。参加したアーティストは35組にも及ぶんだよ。正直、初めは自分にそれが可能かどうか確信が持てなかったけどね。少なくとも、今回のように全員に統一された衣装を着せて、一つのテーマに沿って整えることは、以前の自分にはできなかったかもしれないね。アルバムの全曲にミュージックビデオを作るというのは、自分自身に課した約束だったんだ。どんなに野心的で大変な作業だったとしても、全曲にビデオを制作しなければならないと心に決めていたんだよ。それは本当に充実感があり、楽しい作業だったんだ。時には「こんなことをする必要があるのか?」と疑問に思うこともあったけど、自分自身に約束したからには、全曲にビデオを作らないとアルバムは完結しないと自分に言い聞かせていたんだよ。もしビデオを8〜9本だけ撮っていたら、もしかするとそれで満足していたかもしれないし、全てが上手くいっていたかもしれない。最後のビデオを撮っていないことに気づかない人もいたかもしれないし、ミュージックビデオに興味を持たない人もいる。多くの人は気にしなかっただろうけど、自分にとってはそれがとても重要だったんだ。

収録曲について

新作は、全14曲が収録されており、ゲストにはエミネムJuicy Jなどのベテランから、Lil DurkLil YachtyJoey Bada$$CordaeJIDなど、コール・ベネットが述べられた通り、30組以上のアーティストがゲスト参加しています。
コール・ベネットは、アルバムに入れたいアーティストのリストがありましたが、彼らに合った曲が見つからない場合は省くことも検討しました。曲作りには多くのテイクが必要で、この作業は細部にまで注意を払い、アーティストとの共同作業で意味を持つ瞬間を作り上げることが重要だったと明かしています。

アルバムに参加させたいと思っていたアーティストのリストはあったけれど、最終的にその曲がそのアーティストに合わないと感じたら、迷わず外すことにしていた。Lil Skies、Ski Mask the Slump God、Lil Tecca、そしてThe Kid LAROIは、特に一緒に作業したかった人たちだった。Famous Dexもそうだね。いくつかの曲では、何回もテイクを繰り返したよ。「This My Life」でのSkiesのバースは16小節だけど、俺が満足する完璧な16小節を得るために、彼には32小節を2回、つまり多くの歌詞を書いてもらった。この瞬間を彼と共有するなら、それには意味がなければいけないと思っていたんだ。ただ単に「さあ、バースを書いてみよう」というわけにはいかない。まるで本当の再会のように感じられるように、細部にまでこだわることが必要だったんだ。

『Guitar In My Room』

アルバムの2曲目である『Guitar In My Room』は、Lil DurkKid Cudiをフィーチャーした曲で、2023年9月にリードシングルとしてリリースされました。コール・ベネットは、2人のアーティストとの信頼関係や協力を強調し、彼らとの関係に対する感謝と尊敬が述べられています。

お互いによく知らない2つの世界が、一緒になって美しいものを作ることができるなんて、オーディエンスも知らなかっただろうし、最高の栄誉だよ。そのアーティストの1人であるDurkは、俺と親しいコラボレーターであり、本当に良い友人だ。何故かわからないけど、彼は俺を信頼してくれるし、そのことにとても感謝している。
もう1人はCudi。彼は俺が昔から大好きなアーティストの一人で、人は彼のことをどうこう言うかもしれないけど、彼に対する俺の気持ちは変えられないんだ。信頼というのは本当に特別なもので、俺は彼達から信頼されることをとても光栄に思っている。それが一番いい表現かな。

Lyrical Lemonade, Lil Durk & Kid Cudi - Guitar In My Room

『First Night』

5曲目の『First Night』は、Teezo TouchdownJuicy JCochiseDenzel CurryLil Bが参加した曲です。この曲は、まだミュージックビデオは公開されていませんが、コール・ベネットはこの曲の撮影を終え、ベテランから若手までのアーティストが1つの曲に集まることは稀であり、興奮を覚える出来事だったと明かしています。

2日間に渡って撮影したんだ。その間、出演しているアーティストたちは出たり入ったりしていたよ。一緒にも撮ったし、個別にも撮った。でも、どこかで必ず顔を合わせることになったんだ。マジで最高にクレイジーな体験だった。何年にも一度、いろんなアーティストが一つの曲で集まるのを聞くことはあっても、そのミュージックビデオを実際に見る機会はほとんどないからな。だから、5つもの全く異なる場所から来たアーティストが同時に集まったってのは、俺にとってめちゃくちゃエキサイティングなことだったんだ。

この楽曲では、一夜限りの男女関係について多角的に掘り下げています。歌詞の一部では、一晩の関係に対して肯定的な見方を示しつつも、楽曲の終盤には、愛や尊重の重要性を訴え、必ずしも一夜限りの関係に留まる必要はないというメッセージを伝えています。

Lyrical Lemonade, Teezo Touchdown, Juicy J, Cochise, Denzel Curry & Lil B - First Night

『Doomsday』

8曲目『Doomsday』は、ジュース・ワールドCordaeがコラボレーションした曲で、2023年6月にリードシングルとして発表されました。この楽曲は、エミネムの1999年のヒット曲『Role Model』を大胆にサンプリングし、曲全体を通じて自信や成功への彼らの考えを深堀りしています。Cordaeは自らの音楽やキャリアに確固たる自信を持ち、自分の名前や経歴に誇りを感じていることが歌詞から伺えます。彼は自身の才能と経験を最大限に活用し、成功を目指す強い意志を歌詞に込めています。一方で、ジュース・ワールドは成功への切望や過去の困難な経験について語ります。彼の部分では、成功を強く望む心と逆境を乗り越えようとする決意が表現されています。

Lyrical Lemonade, Juice WRLD & Cordae - Doomsday

Eminem - Role Model (1999)

『Stop Giving Me Advice』

アルバムの締めくくりを飾る『Stop Giving Me Advice』は、ジャック・ハーロウDaveが共演する楽曲で、2023年12月に先行リリースされました。コール・ベネットは、この曲が個人的に特別な意味を持つ作品であると語っています。もともとはジャック・ハーロウのソロプロジェクトとしてスタートしたこの曲に、Daveが加わったことで、一層特別な楽曲に仕上がったと述べています。

Jackのラップが大好きだから、本当に特別な曲なんだ。彼彼が歌詞に深みを加えて、ストーリーを語るのが最高にいいんだ。Jackはアルバムのいくつかの曲に参加する予定だったけど、彼に合う場所が見つからなくてな。で、この曲がアルバムでJackのソロ曲として唯一のものになるはずだったんだよね。だけど、Daveがこの曲をめちゃくちゃ良いと思ってくれてさ。この曲はすごく自然にできあがったんだ、それにこれがアルバムが完成する直前に出来上がった最後の曲だったんだよ。

Lyrical Lemonade, Jack Harlow & Dave - Stop Giving Me Advice

若手クリエイターへのアドバイス

コール・ベネットは、ミュージックビデオ監督としてのキャリアをスタートさせた後、リリカル・レモネードというブランド名で商品やレモネード飲料の製造に手を広げ、さらにはリリカル・レモネードのビデオに登場する小道具を購入できる『By Cole Bennett』というバーチャルの小売スペースを開設するなど、ブランドの世界観を広げています。彼は若手クリエイターへの指導にも熱心で、作品作りにおける世界観の構築やストーリーテリングの大切さを説き、一貫性のあるテーマや多層的な内容が重要であるとともに、創作活動が自己満足や幸福感に繋がる影響の重要性を強調しています。

話したいことは、世界観の作り方について。世界を構築し、一貫したテーマを持つことが大切。多くの人が気づかないかもしれないけれど、ストーリーを築くのは大事なこと。それはジャーナリズム、音楽、映画など、どんな分野でも良い。作品に深みを加え、レイヤーを重ねて。レイヤーは重要で、人々は表面しか見ないこともある。だけど、もしその奥に、自分だけの何かがあれば、それを知るのは親しい人だけかもしれないけれど、それはとても素晴らしい。アートはインスピレーションから生まれる。今日の会話が何か新しいものを生み出すかもしれないね。それに気づくのは素敵なこと。影響を受けたことを知り、それをどう表現するか。ストーリーテリングや世界観の構築は本当に素晴らしい。でも、過剰になる必要はないんだ。自分のためにも、ストーリーがあることを大切に。それによって、創造的な満足感と幸せを感じることができるよ。

おわりに

『All Is Yellow』のリリースによって、リリカル・レモネードコール・ベネットは、現代のヒップホップシーンにおいて革新的な一歩を踏み出しました。このアルバムは、幅広いアーティストの才能を結集させることで、異なる音楽スタイルと文化の融合を実現しました。各トラックは、参加アーティストの個性とクリエイティビティが反映された作品となっており、リスナーに新たな音楽体験を提供しています。

アルバムの中で、コール・ベネットの独自のビジョンが最も顕著に現れているのは、異なるジャンルのアーティストを一つのプロジェクトに統合し、それぞれの楽曲に独自の物語を織り交ぜた点です。このアプローチにより、アルバム全体を通じて一貫したテーマ性が保たれつつも、各トラックが独立した作品としても成立しています。このような編集手法は、アルバム『All Is Yellow』が単なる音楽作品を超え、リリカル・レモネードのブランド哲学を体現したアートワークであることを示しています​​​​。

ただし、アルバムがすべてのリスナーに同じように受け入れられるわけではないことも事実です。一部のレビューでは、アルバム全体としての一貫性の欠如や、多様なアーティストの組み合わせが混乱を招く可能性について言及されています。それにもかかわらず、『All Is Yellow』は音楽業界におけるコラボレーションの新たな可能性を提示し、リリカル・レモネードの影響力とクリエイティブな力を改めて証明した作品として評価されています。

コール・ベネットリリカル・レモネードがこのアルバムを通じて達成しようとしたのは、異なる音楽の世界を橋渡しすることで、新しい音楽の形を探求し、リスナーに未知の体験を提供することでした。『All Is Yellow』は、その目標に向かって着実に進んでいることを示す、重要なマイルストーンと言えるでしょう。このアルバムは、今後の音楽制作における新たな方向性を示すものとして、音楽業界内外で注目されています。

今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️

※ DIGTRACKS.comは、音楽プロモーター、音楽業界に携わるプロフェッショナル(DJなど)専門のデジタル・レコードプールサービスです。
ご利用の際は必ず「ご利用規約」をご確認ください
最新HITチャート Digtracks.com ランキング #hiphop #rnb #dj #新譜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?