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チャットでラップバトル!?TDE所属のラッパーAb-Soulとは?

ジェイ・ロックスクールボーイQをはじめ、Isaiah RashadSiRなど、新進気鋭なアーティストが多く所属するレーベルTop Dawg Entertainment(TDE)

中でも2022年は、同レーベルの中心アーティストであるケンドリック・ラマーシザが数年ぶりにアルバムをリリースし、ケンドリック・ラマー「Mr. Morale & the Big Steppers」がグラミー賞で「最優秀ラップ アルバム」「年間ベストアルバム」など、8部門でノミネートされる快挙を達成。
一方、シザのアルバム「SOS」はR&Bアルバムとして発売初週に今年最高のストリーミング数を記録しました。

さらに、XXLの「Freshman Class 2022」に、所属する女性ラッパーDoechiiが選ばれるなど、この年レーベルは大きな飛躍を遂げました。

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのTDEから、ラッパーのAb-Soul(アブ・ソウル)が2022年末にニューアルバムをドロップ。

ここでは、彼のこれまでのキャリアに迫りたいと思います。

レーベル  : Interscope Records & Top Dawg Entertainment
リリース日 : 2022年12月16日
名前    : Ab-Soul
本名    :    Ab-Soul / Herbert Anthony Stevens IV
年齢    : 35歳


出身地   :    カリフォルニア州カーソン

常に掛けているサングラスの意味・・・?

ロサンゼルスで生まれたアブ・ソウルは、父親が軍に所属していた最初の4年間を韓国で過ごし、その後両親が離婚して母親と共にアメリカに戻り、カリフォルニア州カーソンで祖母の家で暮らすようになりました。

10歳の時、彼はスティーブン・ジョンソン症候群(別名:皮膚粘膜眼症候群)に感染し、入院することになります。
この病気は、口唇・口腔、目などがただれ、重症薬疹のひとつとされており、彼の黒い唇と光に弱い目はこの病気によるもので、現在もそのためにサングラスを掛けています。

幼少期には家族がレコード店を経営しており、ここで初めて音楽と出会い、ラップの世界に魅了されたようです。
その後、インターネットの世界に没頭し、アメリカのSNS「BlackPlanet」でラッパーになることを意識するようになります。

あまり馴染みがない「BlackPlanet」ですが、これはアフリカ系アメリカ人のSNSで、マッチングや求人情報のほか、政治や社会問題についてのディスカッションの場も設けられており、ラップもこのチャットでスキルを磨いたようです。

俺はBlack Planetのフリースタイル・チャットでラップしていたんだ。
テキストバトルなんだけどね。とても面白い世界だよ。
フリースタイルだけどタイプする、そんなオンラインが今でもネット上に存在すると思うよ。キースタイルって呼ばれている。
そこで韻を踏むスキルが身についたと思うね。
それ以前、12歳くらいからラップをしていたんだけど、オンラインでその文化、(テキストシー文化)に飛び込んだことが、ラッパーになるきっかけになったんだ。

また、ラッパーを目指す上でエミネムカニエ・ウェストジェイ・Zなどに大きな影響を受けているようで、中でもジョー・バドゥンの考え方や彼のアルバムを絶賛しています。

エミネム、カニエ・ウェスト、ジョー・バドゥンのような人たちから大きな影響を受けている。
自分を表現する方法を知っていて、それを恐れていない普通の人たちだね。
たとえそれがクールでないとしてもね。
ジョー・バドゥンは葉っぱを吸わず、タバコを吸っている。
俺はそういうのが好きなんだ。
俺の仲間はそれを嫌だと思うかもしれない。
でも、彼はそれを認めるほど自分の肌に馴染んでいるんだ。
ジョー・バドゥンのファーストアルバムは時代を先取りしていると思う。
自分でも名盤だと思う。
「Mood Muzik 2」も本当に好きだよ。
「今すぐジョーイ(ジョー・バドゥン)の小節を引用したいくらい、彼は僕らに大きな影響を与えた男の一人だ。彼は本当に自分自身であり、それを恥じない人だった。

TDEと元カノの死

その後、ブルックリン出身のラッパーSnake Hollywoodと共にラップグループArea 51で活動していた彼は、2007年にTDEに加入し、2009年にデビューミックステープ「Long Term」をリリース。

また、同時期にレーベルメイトであるジェイ・ロックケンドリック・ラマースクールボーイQとラップグループBlack Hippyを結成し、2010年には彼らが参加した続編のミックステープ「Long Term 2: Lifestyles of the Broke and Almost Famous」(2010)をリリースし、ケンドリック・ラマーとの「Turn Me Up」はYouTubeで1000万再生を記録しています。

Ab-Soul feat. Kendrick Lamar - Turn Me Up (2010)

2011年「Long Term」シリーズ3作目で、デビューアルバムの「Longterm Mentality」をリリース。
Black HippyJhene Aikoの他にTDEの社長を務めるPunchがゲスト参加したこのアルバムについて、アブ・ソウルは次のように語っています。

このプロジェクトは、俺のサポーターやフォローしてくれている人たちが、成長を実際に目にできるようなものを作りたかったんだ。
だから「Longterm」は紹介に過ぎなかった。
「Longterm 2」は、より個人的な内容で、その時々の俺の状況について書いたものだね。
「Longterm Mentality」は、アイデア全体の概要を説明するものなんだ。
俺の人生と、このビジネスで目指していることの本質をとらえようとしているんだ。

Ab- Soul - Longterm Mentality (2011)

2012年2月、レーベルメイトでソウルシンガーAlori Johがコンプトンのラジオ塔から飛び降り、自ら命を絶つという悲しい出来事が起き、TDEファミリーのケンドリック・ラマースクールボーイQがTwitterで公に彼女の死を悼んでいます。
アブ・ソウルと彼女は高校生の時に恋人関係であり、彼女との関係や喪失感を歌にした「The Book Of Soul」を収録したセカンドアルバム「Control System」をリリース。
彼女は彼の人生に影響を与え、自分の体にタトゥーを刻むほど、アブ・ソウルにとって大切な存在だったようです。

だから、どうしても...彼女は俺の人生の半分を左右するような存在だったから、その状況を話さなければならなかったんだ。
俺はアーティストであり、プラットフォームを持っているから、その状況について話さないのは自分勝手だと思うし、そういうことの一つだったんだ。
でも、この曲は、自分の人生を顕微鏡で見て、ネガティブなことに出くわしても、ポジティブなことを見つけられるような曲だ。
教訓を得たんだ。

Ab-Soul - The Book Of Soul (2012)

また同年には、彼の憧れのジョー・バドゥンとコラボレーションを果たし、2013年にはトラヴィス・スコットスクールボーイQらとXXLの「Freshman Calss 2013」に選出されます。

これに選出されたことで、全米中から注目を浴びる事となり、2014年にリリースした3枚目のアルバム「These Days...」は、自身最高位のR&B/Hip Hopチャート2位を記録。

彼はこのアルバムで、自分なりのサウンドを意識し、多くのレジェンドラッパーのパンチラインを多く引用したようです。

このアルバムは、俺が自分なりに感じた「あの頃…」(These Days...)
のサウンドなんだ。もちろん、あざといものではないけど。
今の時代、現在と過去のものをたくさん参考にしたんだ、それも人気があるからね。
YGのアルバムを聴くと、彼はShort DawgやSuga Freeなど、古いものをたくさん引用している。
それがリスペクトということなんだ。
古い世代がまだここにいる事を伝えているんだ。
だからNasの言葉を引用するのは、俺が27歳だけどまだ君の声を聞いているよ、ということをNasに伝えるためなんだ。
個人的に彼のことは知らないけれど…偉大なアーティストの言葉はすべて引用しているんだ。
それは、"あなたの詩を聴いたよ、あなたがどう思おうと、俺はあなたと一緒にそれを説明できるんだ "ということを伝えるためです。

Ab-Soul feat. ScHoolboy Q - Hunnid Stax (2014)

2016年には4枚目のアルバム「Do What Thou Wilt.」をリリース。
アートワークではトレードマークのサングラスをかけず、素顔を見せることに挑戦しており、「すべてをさらけ出すことが好き」と語っています。

光の感度で、難しいとは思ったけど、挑戦してみたんだ。
みんなが俺に求めていると思ったから。
俺は、すべてをさらけ出すことが好きなんだよね。とても正直だよ。
このアルバムは、そういう誠実さを求めていたんだと思う。
俺はハッピーな男なんだけど、このアルバムのトーンからはそれが伝わってくるよ。
あのジャケットは、このアルバムのトーンをちゃんと表現していると思うんだ。

Do What Thou Wilt.

Ab-Soul - D.R.U.G.S. (2016)

おわりに

TDEケンドリック・ラマースクールボーイQを筆頭にキャラが濃いメンツが並んでいますが、アブ・ソウルも独自の路線を貫き、今やそのスタイルでTDEの顔となっているように感じられます。

次回は彼がこの度ドロップした5枚目のアルバム「Herbert」(2022)について解説します。

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