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Pop Smoke亡き今、ドリルミュージックを牽引する、Fivio Foreignって何者?

近年、アメリカのヒップホップシーンで特に注目されているサブジャンルが『ドリルミュージック』で現在主流となっているトラップミュージックから派生したものと言われています。

この『ドリルミュージック』は、ヒップホップの聖地であるニューヨークのブルックリンにも大きな影響を与え、Bobby ShmurdaPop Smokeといったラッパーがヒット曲を発表し『ブルックリンドリル』と呼ばれるサブジャンルが誕生しました。

今回は、その『ブルックリンドリル』で特に注目をされているラッパーFivio Foreign(ファイヴィオ・フォーリン)をピックアップ。

現在32歳と決して若手とは言えない年齢ですが、長年ラップスターを夢見てきた彼は、今や『ブルックリンドリル』を代表するラッパーの1人となっています。

ここでは、待望のデビューアルバムがリリースされた彼の経歴について解説します。

レーベル  : Columbia Records & RichFish
リリース日 : 2022年4月8日
名前    : Fivio Foreign
本名    :    Fivio Foreign / Maxie Lee Ryles III
年齢    : 32歳


出身地   :    ニューヨーク


ブルックリンからラップスターの夢を描く

2011年にLite Fivio名義でキャリアをスタートさせ、2013年に現在のFivio Foreign(ファイヴィオ・フォーリン)に改名。友人たちと「800 Foreign Side」というラップグループを結成します。

同じ頃、Bobby Shmurda率いるGS9がニューヨーク、ブルックリンで脚光を浴び、シングル「Hot Nigga」(2014)は全米チャート5位を記録。
無名のラッパーがこの曲で一気に注目され"Shmoney Dance" と呼ばれるそのダンスは、RihannaをはじめとするセレブがSNSに投稿し、アメリカ全土で社会現象になりました。
Bobby ShmurdaとGS9の記事はこちら。

この活躍を見ていたファイヴィオ・フォーリンとその仲間は、シカゴのドリルサウンドや2010年代初頭のアトランタのグループによるクラブヒットに大きく影響を受け、曲やMVをリリースを開始するようになります。

しかし、その後メンバーは刑務所に入り、ラップをやめてしまう者もいたようですが、DesiignerCasanovaなど次々と地元で成功を収めるラッパーを目の当たりにし、ファイヴィオ・フォーリンの中で火がついたと明かしています。

ある時期から、みんなあきらめていたような気がするんだ。
でも俺は心の中でこう言ったんだ「いや、これだ」って。
他の奴らが俺を追い越していくのを見たくないんだ。
俺たちは長い間、これををやってきたんだからな。

Bobby Shmurdaに続けと、ドリルミュージックに焦点を置いて制作を続けていましたが、イギリス発祥と言われる『UKドリル』の存在に「俺たちはUKの本当にヤバイのを聴いていなかったんだ」と振り返っています。

イギリスの黒人たちはビートを作る方法を知っているんだ。
俺たちは彼らがそういう音楽をやっているとは知らなかったが、彼らはビートを作ってYouTubeに『Chief Keef type beat』とか『G Herbo type beat』とかアップしていて、俺たちはそれがイギリス製だとは知らずにそれを拾っていたんだ。

そうした中、イギリスのプロデューサーがYouTubeにアップしていたビートを聴いて制作したシングル「Big Drip」(2019)をリリース。
この曲はYouTubeで7500万再生を記録し、その後QuavoLil Babyが参加したリミックスが発表され、一躍注目を集めることになりました。

AXL(プロデューサー)のビートは、ただ、彼がインターネット上にアップしていただけなんだ。
彼はYouTubeにアップして、俺はYouTubeでゲットしたんだよ。
でも、当時はまだAXLとコネクションはなかったんだけど、だんだんコネクションができ始めて、俺のビートはほとんどAXL BEATSなんだ。
彼が作るビートの音は、俺が学んだ音と同じだった。
グロウリングとかいうやつだね。
それはUKの音で、彼らはすでにやっていたんだ。
でも、俺らもやっていることだったから、それをニューヨーク流にアレンジしてバイラルにしたんだ。
それでしばらくして、彼とコネクションを持つようになったんだ。
AXLも見たよ。彼はイギリスから来たんだ。

Fivio Foreign - Big Drip (2019)

その後、同曲が収められたEP「Pain and Love」(2019)をリリースし、90年代にBad Boy Recordsで活躍したラッパーのMa$eが率いるレーベルRichFish Recordsと共同でコロンビアレコードと100万ドルで契約を交わします。

ドレイクに見出され、一躍その名を知られることになる

2020年、ファイヴィオ・フォーリンDrake(ドレイク)のミックステープ「Dark Lane Demo Tapes」に抜擢され、自身初のチャートインを果たします。

Drake feat. Fivio Foreign, Sosa Geek - Demons (2020)

また、Lil Tjayはニューヨークドリルにフォーカスしたミックステープ「State of Emergency」を発表し、Pop Smokeとのシングル「Zoo York」はYouTubeで5000万再生を記録して、クラブヒットとなりました。

Lil Tjay feat. Fivio Foreign & Pop Smoke - Zoo York (2020)

その夏には、ニューヨークの重鎮Nas(ナズ)のアルバム「King’s Disease」 (2020)にゲスト参加し、グラミー賞「最優秀ラップアルバム賞」を受賞。
またヒップホップメディア誌XXLの「Freshman Class 2020」の1人に選出され、全米中にその名が広く知れ渡ることになりました。

翌年には、イギリス出身のラッパーRuss MillionsTion Wayneのシングル「Body」のリミックスに参加。
前述の通り、UKドリルに大きく影響を受けていた彼がこの曲に加わり、YouTubeではオリジナルの再生回数を上回る9500万再生を記録し、イギリスのヒップホップシーンでもその名を広めた1曲になりました。

Tion Wayne x Russ Millions  feat. Arrdee, 3x3E1 & ZT, Bugzy Malone, Fivio Foreign, Darkoo, Buni - Body 2 (2021)

またファイヴィオ・フォーリンは、地域社会に貢献するため非営利団体「Foreignside Foundation」を設立。
この団体は日常生活が困難な若者、ホームレス、現在および過去のギャング関係者、逮捕歴のある人、そして教育支援を必要としているコミュニティに対して、有益なリソースやプログラムを提供することを目的としています。
ファイヴィオ・フォーリンは、かつて自分がそうであったように、現在苦境に立たされている人々に恩返しをしたいと考えているようで、地域社会への恩返しを好んだ亡き母に敬意を表しているとInstagramで述べています。

カニエに才能を認められた?!

Pop Smokeの死後、ニューヨークのドリルシーンを牽引するラッパーとなた彼は、Kanye West(カニエ・ウェスト)のアルバム「Donda」(2021)にゲスト参加。

「Donda」の記事はこちら。

アルバムからシングルカットされた「Off the Grid」での制作について、ファイヴィオ・フォーリンは次のように明かしています。

彼は俺にラップするスペースを与えてくれたけど、8小節ごとに俺が感じたものラップすると、彼は「続けろ」という感じだった。
だからヴァースが長くなってしまったんだけど、彼は僕に「続けろ」って3回くらい言われたよ。
彼のキャンプはイカれていたよ。
15人のエンジニアと15人のライターがいて、まるで音楽工場のようだった。クレイジーだった。

アルバムはカニエにとって10作目の全米チャート1位を獲得し、グラミー賞で2部門にノミネートされるなど、2021年を代表する1枚になりました。

Kanye West feat. Fivio Foreign & Playboi Carti - Off The Grid (2021)

終わりに

チャートインするほど目立った楽曲はなかったものの、ドレイクにフックアップされたことによりその名を広め、カニエのアルバムに抜擢され高い評価を得ているファイヴィオ・フォーリン
同時にニューヨークドリルの発展にも大きく貢献しましたが、ラジオ局ではシーンの裏側にある暴力を賛美するリリックが議論されており、ファイヴィオ・フォーリンは次のように明かしています。

人を殺しているのは音楽じゃない。フッドから出る男たちを助けているのが音楽なんだ。

デビューアルバムと併せて、彼のこれまでの作品を一度聴いてみてはいかがでしょうか。


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