見出し画像

3Dプリンターを用いた最新の筋電義手で周りの人を笑顔にする森川章さん

結婚相談所エニシィ代表、NPO法人Mission Arm Japanの
森川さんにお話を伺いました。

プロフィール
大阪市出身
結婚相談所エニシィ代表
NPO法人Mission Arm Japan 所属

2013年の右腕の切断をきっかけに、2014年ロボット開発ベンチャーexiii の
エバンジェリストとして3Dプリンター製電動義手“Handiii “のデモンストレーションと普及の為、国内外のイベントで活動。
現在は市販前の電動義手の評価試験、教育機関等での講演で障害の有無に関わらずバリアフリー社会の普及活動を行っている。


記者:本日はよろしくお願いいたします。森川さんは、まるでSF映画に登場するような、未来的でかっこいい義手をつけていらっしゃいますが、まず義手をつけるようになった経緯をうかがえますか?

森川章(以下 森川 敬称略):はい。僕は元々業務用の洗濯洗剤を自分達で作りながら営業していました。
ある時新しい機械を入れ、最終の確認をやっていたんですね。
その時に機械の中に袖がひっかかって、僕はそこへ落ちてしまいました。
その結果、全身切られ、血だらけになって、腕もバラバラにという感じです。しばらくしてから社員が僕を発見してくれ、レスキューの方が来て助けられました。そして救急車に乗ってる間に意識が消えて、目覚めたらICUの中です。2日間くらい意識を失っていたようです。

記者:それは大変でしたね。そこからどのくらい入院していたんですか?

森川:入院期間は1年くらいですね。耳も3つに裁断してたので縫ってもらい、血管も足の大動脈をカットして腕に移植をしたり、骨盤を切り抜いて腕に埋めてもらったりしました。指も現場から拾ったものをつけてもらっていました。
しかし、神経が通っていないから「冷たい」「暑い」もわからないし、動かないから邪魔なだけ。電車に乗って人に当たっても気づかないんです。
だから僕の希望としては、使えないのであれば落としてほしかった。
でも整形外科の先生からみれば、あるものは残す考えなので、切り落とすという考えはないんですね。なので毎晩先生と切り落としてほしい、落とせないの押し問答でしたね。

記者:腕を落とすというのは、計り知れないショックがあったのではないかと思います。その時の気持ちはどのようなものでしたか?

森川:実際に落とした時には喪失感がすごくありましたね。これから腕のない人になるんだと。腕を落として仕事もできなくなって、この先どうしようと。といっても、それも2、3日でしたけど。(笑)

記者:その後、若いエンジニアが集まって筋電義手を開発されている株式会社exiiiの近藤玄大さんたちとの出会いがあると思うのですがそのきっかけは何ですか?

森川:僕が事故で入院している時に、彼らが世の中の不便を便利に変えるアイデア国際コンペであるJames Dyson Awarodで2位になったのをFacebookでみつけて、メールを送ったのがきっかけです。

日本人でこういうことをやっている人がいるんだと興味をもって、ダメ元でメールを送りました。「大阪で事故で入院している森田ですけど、あなたたちの義手に興味があってメールします」と。すると返事がきて、もうテンションがあがりましたね(笑)
実際にお会いして話を聴くと、彼らは義手を作ったけど実際に手を失った当事者に受け入れてもらえるかわからないという段階でした。
そこで、すぐに腕につけるバージョンを作るからと言われ、その4-5か月後には作られてきました。

スニーカーとかメガネとか手袋みたいな感覚で義手を楽しむ

記者:exiiiの義手に魅力を感じたところはどこですか?

森川:彼らの義手はわざわざ人間の肌に寄せていないことですね。僕は義手というのは腕に着けるものだから、スニーカーとかメガネとか手袋みたいな感覚で楽しめるものだと思っています。
だって肌色のスニーカーとか履かないでしょ?だから肌色の義手義足は抵抗がありました。僕はexiiiの義手を見て「これや!」と思いました。

それと彼らのやっていることが面白そうだった。だからそういうので成功してほしいと思いました。

記者:彼らのどんなところが面白かったんですか?

森川:腕を落とすまでは、自分の人生の中で彼らのような若いエンジニアと接触する機会はありませんでした。でも、話をすると自分の知らない世界をすごく知ってるのと、そういう彼らと義手という一つの内容で話が通じることでどんどん惹かれていきました。

単純に義手を開発している人と、義手を求めている人、需要と共有という感覚ともちょっと違ったんです。彼らとは。

記者:その後出来上がった義手のお披露目をやった訳ですよね。

森川:はい。メーカーフェア東京で行いました。メーカーフェア東京は色々な人が集まって、現代のテクノロジーを使って楽しいものを作るという趣旨のもの。そこで初お披露目した時に、すごく義手がウケたんです!

記者:その時はどんなお気持ちでしたか?

森川:もう全員ドヤ顔ですね(笑)「どや!すごいやろ!」って。

その後、テレビの取材も来ました。その繋がりでアメリカのテキサスまで行ってSXSW(South by Southwest)という大規模なイベント参加しました。そのイベントは10日間あって、音楽、映画、インタラクティブなどのコンテンツを組み合わせたもので、私たちはインタラクティブ部門で展示をしました。
そのイベントでひたすら握手をするのが私の役割です。(笑)
トイレに行かれないくらいの長蛇の列になりましたね。

記者:海外の企業でも義手を作っていると思いますが、exiiiが開発してる義手とどう違うのですか?

森川:3Dプリンターでセンサーを使って動く電動の義手をここまでの完成度で作れるのはexiiiが先端を走っていたんですね。近藤さんたちのチームがここまでくるのはすごい努力があったと思います。何か不都合を伝えると、早い時には翌日には改良版ができていましたから。

思考回路の道を一つ変えてあげるだけで、人生は変わる

記者:腕を失ったことをきっかけに、新しい出会いがあり森川さんの次の人生のステージが開けたのだと思いますが、森川さんの使命は何だと思いますか?

森川:片腕になってから思っていることですが、世の中には色々な人がコンプレックスを持っていて、そのコンプレックスを自分の中の理由にして新しいことができないという人がいるじゃないですか。

でもその原因が、あなたのコンプレックスが原因ではなくて、あなたの受け取り方が、間違ってはいないけど、残念な方向にいってるから、そのコンプレックスが原因ではないということを知ってもらいたいと思っています。

要は自分の思考回路の道を1つ変えてあげるだけで、人生が変わるということ。例えば明日から違う趣味を1つやってみようかなとか、苦手だった会社の上司に思い切ってオープンになってみたら、気兼ねなく会話ができるようになったり。

僕の腕も肌色ではなく、あえて見せることで新しい世界が広がり、変わっていいきました。なんというか、普通に肌色の義手をチョイスしていたら東京に行く事もなかったし、exiiiの3人とも接する機会はなかったと思います。

事故にあう前の僕は、常に自分の立てたノルマに追われたり、後悔とか、脅迫観念で何とかしないと、という想いでいっぱいの人間でしたから。
もし、自分が変化することを選択しなかったら、今もシンドイ生活が延々と続いていたのかなと思います。

記者:事故がストップしてくれたということですか?

森川:そうですね。この義手をつけるようになってから、周りの人がこの義手に興味持って話しかけてくれるので、人との出会い方や関わり方も大きく変化しましたし、性格も随分丸くなったと言われます。
昔は自分にも他人にもえげつない人間でしたから(笑)

記者:今、森川さんはどんなビジョンをお持ちですか?

森川:事故を経験したことによって、具体的なこういう家に住みたいというような物質的な欲望は一切なくなりました。
3食食べれたら、橋の下で寝ててもオッケーなんです。(笑)
だけど周りに人はいっぱいいて欲しいというのはあります。
何をするでもなく、今の自分の心境を話しするだけでもいい。例えば若い人だったら恋愛の相談とか。一緒に作戦を練ってるうちに、自信なくて相談に来てる人が「やってみます!」ってなることがすごく嬉しいんです。
目の前の人にスイッチが入ってドンドンやる気になって、その人からエネルギーをもらえるのが、僕の養分になるんです。
それが今の僕の中で一番幸せですね。

未来を変えたかったらまずは自分を変えること。

記者:最後に読者へのメッセージをお願いします。

森川:未来を変えたかったらまずは自分を変えましょう。
よく森川さんは大変な目にあって、すごい苦労したでしょと言われます。
でも僕は努力らしい努力ってしていないのね。やったことは、自分のやってきた行動パターンとか、自分のクセとか、そういうパターンを思い出して、選択をしてきた。
一秒一秒の選択の瞬間ってあるじゃないですか?
その時にミニマムではなく、マクロでみるクセをつけてきました。
マクロな視点で判断していくと、必ずそのおつりは自分に返ってくるから。
その積み重ねが5年後10年後の自分になると思っています。

メッキも重ねたら無垢になります。剥がれても金が出てきたらメッキじゃない。
まずはチャレンジして一回やったことは二回やってみよう、三回やってみよう。

そうやって、自分の人生に納得いってなかったら変えられるよということをこれからも伝えていきたいです。
これを健常者の方が言ったら問題発言になるかもしれないですけど、僕は腕かこうなってるお陰で好きなこと言わせてもらってます。(笑)

記者:ありがとうございました!

----------------------------------------------------------------------
森川章さん所属のMission ARM Japanの詳細はこちら
http://www.mission-arm.jp/
【編集後記】
インタビューを担当した龍飛・福田です。
大事故による腕の切断。普通であればハンディを感じてしまいそうですが、
自分の意識を変化させることで、人生を大反転させた森川さんの言葉には強さと優しさ、そして周りの人を楽しませてくれるユニークさがあります。
森川さん、これからも活躍を応援しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?