違和感の先にあったバウモン

モンスト開発者動画で仄見えたバウモン

筆者は基本的にソシャゲはゲームの形をしたギャンブルであり、実質パチンコと同じようなものと現状では認識しており、パチンコがそうであるように基本的に文化としては無関心に等しかったわけですが、ガチャ動画などはエンタメの一種として成立しているということで一定の受容はしていたわけです。

たとえばお笑い芸人が罰ゲームで叩かれて痛がる姿を見せる時に筆者は実際にはそんなに痛くないだろとさめた目でみてしまうタイプの人間なのですが、それに似たような感覚をガチャ動画では感じることができ、手持ちの揃った配信者が当たり外れで一喜一憂しているさまをみて実際にはそんなに興奮してないだろとさめた目でみてしまうわけです。
もちろん芸なのでおおげさでいいのですが。

もちろんミクシィの『モンスターストライク』も同様であり、筆者はそれをゲームとしてではなくガチャ動画の背景として観ていたので、一定期間観ていたにもかかわらず何のゲームか一切理解していないという奇妙なタイプの視聴者でありました。

最近になってゲームジャンルを理解しその歴史的背景についても考察するようになったわけですが、個人的な勘のようなものなのですが、どうも発売時期に違和感があり、2013年10月10日にサービス開始ということで、この手の流行をつくりだした作品の発売時期としてはやや後発だなと感じていたわけです。

たとえばソシャゲの先駆例であるDeNAの『怪盗ロワイヤル』は政権交代直後の時点で既にサービス開始していましたし、モンストのライバルとして有名な『パズル&ドラゴンズ』は2012年2月20日の時点でサービス開始しているなど、それらと比較すると時代を築いたソシャゲとしてはずいぶんと後発であるように感じられたわけです。

もちろんソシャゲの流行は2010年代をとおして続いたものなので、2013年もじゅうぶんに早いほうだとは思うのですが、パズドラなどに比べると明らかに後発組であるといえるでしょう。

最近になってゲーム部分の開発に携わったのが『ストリートファイターII』のプロデューサーとして著名な岡本吉起だということを知り、その背景にある流れのようなものを理解したわけですが、それでもどこかに歯に物がはさまったかのような違和感は残っていたわけであり、その解答になるかもしれないものとしてバウモンなる言葉を見つけたわけです。

ある動画のコメント欄に「昔バウモンという作品があってだな……」といったものがあり、筆者はこの手のコメントに瞬間的にひらめくものがあるタイプの人間なので、もしかしたらこれが違和感の正体なのかもしれないな、と感じたわけです。

それで調べてみたら、案の定モンストの生成原理のようなものを見出すことができたわけです。

ひっぱりアクションゲームの先駆例としての『BOUND MONSTERS』

当時の広告で「引っ張りアクションゲーム」や「指で引っ張ってバウモンボールを打て!」など、どこかでみたことがあるような文言が印象的なのがブシロードによって2012年12月25日にサービスの開始された『BOUND MONSTERS』でした。

サービスの終了日は2015年11月30日ということであり、約3年のソシャゲとしては比較的短命な作品だったといっていいのでしょうが、開発元のブシロードといえばヴァイスシュヴァルツやカードファイト!! ヴァンガードなどのカードゲームで有名な大手であり、前身がブロッコリーというゲーム会社でもあったことから『カオスオンライン』などオンラインゲームの制作もてがけるようになり、2010年代に入るとソシャゲにも手を出したようです。

ちなみに、大元であるブロッコリーは経営難から2005年にガンホー傘下となっており、ガンホーは2000年代においては『ラグナロクオンライン』や『グランディアオンライン』、『エミル・クロニクル・オンライン』などで知られており、エミルの制作にはブロッコリーも関与するなど、当時の日本のオンラインゲーム市場においては一定の影響力を有していたようです。
このガンホーは後に『パズル&ドラゴンズ』を成功させて2010年代のソシャゲ界を牽引することになったようです(なったようです、というのは、筆者はこの手の文化のことを一切知らないため)。

要するにパズドラと遠くない文脈の会社によって手掛けられたのが『BOUND MONSTERS』だったというわけであり、当時のパズドラ界隈の影響力を想像させるものであったわけですが、困ったことに想像以上に成功しなかったのか、Wikipediaでも単独の項目としては追加されておらず、ブシロードという項目に「過去に配信していたタイトル」として「BOUND MONSTERS(2012年-2015年)」として記載が残るのみのようです。

しかし、当時のゲーム画面などを眺めると時期的にみても『モンスターストライク』への影響は明らかに無視できないものであり、また岡本氏の開発秘話などを聞くと開発期間は半年程度とのことであり、バウモンが発売されてから半年以内に開発が開始され1年以内に発売にこぎつけていることから、突貫工事という性質上参考にせざるをえなかった部分もあるのでしょう。

もちろんこの点をパクリであるとして批判することはたやすいのですが、この世界に存在する創作でパクリの要素がない作品など微塵も存在しないでしょうし、それを制作者(モンストの場合は岡本氏)がどれだけ成功する作品として昇華できるか次第なので、この点は明らかにモンストにあってバウモンにはなかった要素であるといえるでしょう。

ただし、その程度が度が過ぎると昨今の中華タイトルのように明白なパクリとなってしまうのでしょうし、正直にいってモンストとバウモンの関係にそうした要素が皆無だったのかといわれればそれは微妙なところではあります。

この点に関してはブシロード側の寛大さを一番称賛すべきなのかもしれません。

そもそも岡本氏がゲーム業界に入った80年代初頭というのはアタリの『ブレイクアウト』(いわゆるブロックくずし)やタイトーの『スペースインベーダー』のパクリから市場が勃興していた時期でもあるので、そうした時代の空気感を知るものとしての創作態度というのもあるでしょうから、そうした歴史的背景も知ったうえで議論しないと話にならないかもしれません。

ちなみに、その点が度が過ぎているとして岡本氏もかつて所属していたコナミによって訴えられたのがCygamesの『ウマ娘 プリティーダービー』だということは歴史の皮肉というべきであり、こうした点においてもブシロード側の寛大さは特筆されるようです。

もちろんこうした背景を説明したからといって、バウモンという作品を過大に評価せよと主張しているわけではなく、より構造的にモンストという作品を把握するためには知っておかなければ困る知識として説明しているだけであり、それを太字で記しているわけではありません。

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