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「ディグディガ」元ネタ紹介:第18話

これは、漫画「ディグインザディガー」第18話公開に際して、原作の栄免建設と漫画の駒澤零(と、たまにゲスト)が淡々と元ネタ紹介をしていくコーナーです。

ゲスト:鉄砲女郎

原作担当:栄免建設

◆John Coltrane - My Favorite Things

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John Coltraneはモダンジャズを代表するサックスプレイヤー。
波乱の音楽人生を歩みながら多くの名曲を生み出し、ジャズのみに限らず数多くのミュージシャンに影響を与えた。現在でも高い人気を誇り、アルバムは何度も再発、流通しており、今月9月16日も名盤、「Blue Train」の未発表音源を収録したリマスター盤が発売予定である。

ちなみに現在ビートシーンで絶賛活躍している、Flying Lotusの大叔父にあたる。

本作はJohn Coltraneの死後、1969年にリリースされた作品。
1963年のNew Port Jazz Festivalでの「My Favorite Things」と「I Want To Talk About You」、1665年にスタジオで収録された楽曲、「Selflessness」が収録されている。「My Favorite Things」は多くの演奏が残されているが、その中でも人気の高い録音となっている。個人的に「Selflessness」もなかなか攻撃的な楽曲になっており好み。

今回は京都といえば「そうだ 京都、行こう。」でお馴染みのJR東海のCMでバックに流れる「My Favorite Things」……と思い選びました。

本楽曲は現在でもスタンダードナンバーとして幅広く演奏されているが、原曲は名作ミュージカル、サウンドオブミュージックの楽曲の一つ。

他にも多数のカヴァーが存在し、最近だと2019年リリースのAriana Grande「7 rings」でメロディが引用されている。

個人的にはサウスヒップホップグループ・OutKastのAndré 3000がドラムンベース、ジャングル風にアレンジしたものが好きで、DJでよくプレイしている。

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ゲスト:鉄砲女郎

◆Atrax Morgue - Sickness Report

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私がAtrax Morgueに出会ったのは3年程前、インターネットでエクストリーム・ミュージックをディグっていた時のことである。当時はDead Heroを筆頭とするコロンビアパンクやThe Conet Projectを筆頭とする乱数放送(諜報活動に使用されるラジオ放送)などをよく聴いていた覚えがある。そして、John Zornが主宰する〈Tzadik〉経由でノイズミュージックにも手を出しており、そんな折に彼の音楽に触れたのである。同じくイタリア出身のMaurizio Bianchiを彷彿させる単調な重低音を響かせる雑音がなんとも不気味だったことを覚えている。

Atrax Morgueの音楽は「統合失調症」「死」「サディズム」などのテーマを落とし込んだ病理パワーエレクトロニクスだ。そして、彼は2007年に37歳の若さで自ら命を絶ってしまう。彼の音楽は狂気であると同時にまるで遺言のようにも感じられる。

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『Sickness Report』は漫画に記載の通り、1996年に〈Relapse Records〉のサブ・レーベル〈Release Entertainment〉より発表された作品だ。2021年に〈Urashima〉より初のアナログ再発。狂った芝刈り機のようなパワーエレクトロニクス9曲を収録している。録音はリリース1年前の1995年だ。機材に関しては詳細不明だが、恐らくKorg MS-20などのモノシンセを使用していると思われる。

◆DSM-XXX - cure N

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漫画に登場した「割れているCD」とはDSM-XXXが2022年に自主レーベル〈Bipolar Creep Organization〉よりリリースした『cure N』である。

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前作『Wrenched Brain』同様、「割れているCD」と「割れていないCD」の2枚組だ。ノイズミュージックの世界には、コンクリートの中にカセットテープが入っていたり、レコードに釘が打ってあったり、などの「聴けないブツ」があり、通称「アンタイレコード」と呼ばれている。DSM-XXXは沖縄電子少女彩と並んで、新世代のジャパノイズを牽引する寵児だ。


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漫画担当:駒澤零

◆パララックスレコード

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京都河原町にあるレコードショップ。個人的に、京都に訪れたら絶対一度は行ってみてほしい場所。ノイズ ・現代音楽などアバンギャルド作品を中心に、DUBやhip-hopなど様々なジャンルの面白い音楽を置いている。

主に扱っているジャンルはノイズミュージック、実験音楽、現代音楽、サウンドアート、電子音楽、即興、インプロ、フリージャズ、アバンギャルド。

漫画内でも描いたがマジで内装への拘りがえぐい。ポップアップの書き込みがアツいレコ屋は数多くあれど、この内装に行き着くレコ屋はなかなかないだろう。店内のデザインはすべて店長の毛利桂さんが手掛けており、随所には彼女の作品も展示されている。

今回前半で取り上げたイーノ展もあってか、Brian Enoのコーナーもあった。

毛利さんは京都を拠点に実験ターンテーブリスト / サウンドアーティストとしても活躍しており、実験的な即興演奏やターンテーブルを楽器のように扱ったライブパフォーマンスを行っている。

近年は石膏を使ってターンテーブルを製作し自分の演奏する音を視覚化した立体作品や、森の中でターンテーブル10台を使って再生したフィールドレコーディング映像作品など、音楽にとどまらずターンテーブルを使った作品を精力的に制作しているそう。先ほどの店内の作品もその一つだ。

はじめて訪れた際はなぜか内装の石膏像にVaporwaveみを感じてしまい、「Vaporwaveすきなんですよね…」と漏らし、確かMacintosh Plus=Vektroidの別名義であるNew Dreams Ltd.の『Sleepline』を購入して帰った記憶。未だにリアルのレコ屋で見かけたの後にも先にもパララックスしかないよ。

公式サイトにこの記事を書くために公式Instagramを開いたら、トップに最近わたしが絶賛リピート中のDoMi & JD Beckの新譜が載っていて「もー!この店のセンスは~!」と泣きながら頷いてしまった。

そんなパララックス・レコードと駒澤の出会いは2019年8月。わたしが初めて京都に一人旅をした際、何を血迷ったのか「京都のレコードショップ17選」という記事に掲載されているレコ屋を全部回ったことがあり、その際にダントツで食らったお店。ちなみに前回17話掲載のLOS APSON?はその時に当時の店員さんにお勧めしてもらって知ったお店でした。「東京住んでるなら絶対行ってみて、たぶん好きだと思うよ」って。

どちらのお店もそこにしかない音源に出会える場所なので、皆様も機会があったら是非訪れてみてください。通販もぜひ!

ちなみに、その日わたしは京大吉田寮でやっているライブイベント「吉田寮LIVE」に出演する予定だったので店員さんとその話で盛り上がり、なんか本日休演のドラムの方?という風に伺った気がするのですが…どうやら違うらしいです。誰だったんだあのお兄さん…

Twitter / 公式HP / Instagram 

◆BRIAN ENO AMBIENT KYOTO

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ヴィジュアル・アートのパイオニアおよび、アンビエントの創始者として知られるBrian Enoの展示会。

世界で最も多く聞かれたサウンドのひとつWindows95の起動音を制作したように、実は彼の活動は、われわれの身近なカルチャーや生活にまで及んでいる。さらに彼は、デヴィッド・ボウイ、U2、コールドプレイと多くのアーティストを手掛ける世界的大プロデューサーであり、環境問題をはじめとする社会活動にいち早く取り組んできたアクティヴィストでもある。

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場内には盆栽とのコラボレーションもある。作中でも書いたように、今回の展示は現代盆栽家・川﨑仁美とのコラボレーションから生まれたもので、会場の随所に彼女の手掛けた盆栽があった。

イーノが‟Visual Music”として着想し、今回16年ぶりの日本展示となった『77 Million Paintings』でも、そそり立つ屋久杉の削る過程で出た木のかけらを砂の山のようにライトアップして照らすなど、”盆栽” ”京都” ”日本古来の自然”といったキーワードが作品に反映されている。

場内は結構暗くて、写真を撮ってもほとんど細部が映らないため、今回の取材はほぼすべての作品でスケッチを取っている。訪れた知人の多くが2~3時間滞在したと話していたが、本当に暇さえ許せば半日ぼうっとしていたくなるような、現実感の喪失した空間だった。

今回のプレイリストはこちら。

以上、ディグディガ18話の元ネタ紹介でした。ありがとうございました!


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