見出し画像

超音波の「トルネード」で血栓を分解する新ツールが登場。

米国のNSF(National Science Foundation/全米科学財団/国立科学財団)は2023年03月01日に、平均29時間かかるCVSTの血栓溶解の時間を30分以内に短縮するアプローチを報告した。

研究者らは、超音波トルネードの一種である「ボルテックス超音波(vortex ultrasound)」を用いて、脳内の血栓を破壊する新しいツールと技術を開発した。この新しい方法は、CVST(Cerebral Venous Sinus Thrombosis/脳静脈洞血栓症)のvitroモデルで形成された血栓を除去するために、既存の技術よりも速く作用した。

この研究は、NSFの支援を受けて行われ、その結果を報告した論文は、学術誌「Research」に掲載された。

A Model of High-Speed Endovascular Sonothrombolysis with Vortex Ultrasound-Induced Shear Stress to Treat Cerebral Venous Sinus Thrombosis
BOHUA ZHANG ,
HUAIYU WU ,
HOWUK KIM ,
PHOEBE J. WELCH,
ASHLEY CORNETT,
GREYSON STOCKER,
RAUL G. NOGUEIRA,
JINWOOK KIM,
GABE OWENS, [...] , AND
XIAONING JIANG+3 authors Authors Info & Affiliations
RESEARCH
11 Jan 2023
Vol 6
Article ID: 0048
DOI: 10.34133/research.0048

私の父も、私がドイツにいるときに、脳内の血栓で死亡した。
いつか、この技術は、私に直接関係するかもしれない。

「私たちの以前の研究は、本質的に前向きの波を使って血栓を除去する超音波を使用する技術について調べました。」「私たちの新しい研究は、超音波がらせん状の波面を持つ渦巻き超音波を使用しています。」と、この研究に関する論文の共著者である姜 暁寧(ジャン シャオニン/Xiaoning Jiang)は言った。

「言い換えれば、超音波は前進しながら渦を巻いています。」「我々の試験管内テストによると、この方法は、既存の技術よりも血栓をより早く除去することができます。今回の我々の研究が重要な理由は、CVSTに対する現在の治療法が20%~40%のケースで失敗することです。」と、ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)の姜 暁寧は言う。

CVSTは、脳から血液を排出する役割を持つ静脈に血栓が形成されることで発症する。
CVSTの発生率は、2018年と2019年の米国では10万人あたり2~3人であり、発生率は増加している。

「CVSTの血栓が脳の血管の圧力を高めるため、我々の新しい技術が迅速に機能するという事実は重要です。」「これは、脳内出血のリスクを増加させ、患者にとって致命的なものとなり得る。」「既存の技術は、血栓を溶かす介入に大きく依存しています。しかし、これは時間のかかるプロセスです。我々のアプローチは、より迅速にこれらの血栓に対処し、患者のリスクを軽減する可能性を持っています。」
と、この作品の共著者であるジョージア工科大学(Georgia Tech)のシー・チェン(Chengzhi Shi)は言う。

新しいツールは、竜巻に例えられる渦巻き、ボルテックス効果(vortex effect)を生み出すように特別に設計された1つのトランスデューサ(transducer)で構成されている。このトランスデューサーは、カテーテルに組み込むことができるほど小さく、循環系を通って血栓のある部位に送り込まれる。

「利用可能なデータによると、CVST血栓を溶かすための医薬品による治療には、少なくとも15時間、平均で約29時間かかります。」「試験管内テストでは、急性血栓を30分未満で溶解することができました。」と、シー・チェンは言う。

https://beta.nsf.gov/news/new-tool-uses-ultrasound-tornado-break-down-blood?utm_medium=email&utm_source=govdelivery
https://www.nsf.gov/awardsearch/showAward?AWD_ID=2142555&HistoricalAwards=false
https://spj.science.org/doi/abs/10.34133/research.0048
https://spj.science.org/doi/suppl/10.34133/research.0048/suppl_file/research.0048.f1.pdf
https://spj.science.org/doi/suppl/10.34133/research.0048/suppl_file/research.0048.f2.mp4

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?