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海牛(Sea Cow)に隠された言葉を解読する新たな研究成果。

サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)のロゴ

Nature Briefingは2022年03月30日に、サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American)からの情報として、フロリダのマナティーは嵐のように「おしゃべり」している。7年間その音を録音してきたチームが、そのおしゃべりを理解し始めていると報告した。

サイエンティフィック・アメリカンの「60秒科学」(Scientific American’s 60-Second Science)のアシュレイ・パップ(Ashleigh Papp)は、MP3で、マナティー(manatee)と呼ばれる体長1mの海牛の鳴き声を公開した。

フロリダ周辺の暖かく浅い海域でコミュニケーションをとるマナティは、このような声で鳴くそうである。そして、研究者たちは、この狂ったような高音のおしゃべりを解読する方法を学び始めている。

https://time-az.com/main/detail/76575

マナティは、人間や他の哺乳類が音を出すのと同じように、喉の声帯を使って発声することが分かっている。

マナティーの声は、イルカがするようなエコー探知には使わず、お互いに話すために使う。

これまでの研究でも、マナティーの鳴き声は記録されているが、新しい研究では、野生のマナティーのおしゃべりが、さまざまな社会的環境での行動とどのように関連しているのかを調べた。

フロリダのモート海洋研究所と水族館の海洋哺乳類学者であるベス・ブラディ(Beth Brady, a marine mammalogist at the Mote Marine Laboratory and Aquarium in Florida)が、この新しい研究を実施した。

彼女によると、マナティーは発声によってあらゆることを伝えているそうである。家のペットが、新しいブランドの食べ物に興味がないことを知らせたり、長い一日の終わりにあなたに会えて本当にうれしいと知らせるのと同じようなものだそうである。

ベス・ブラディは、犬や猫を飼っている人なら、猫がニャーと鳴いたり、犬が吠えたりすることで、外に出たいのか、遊びたいのかがわかるように、彼らも吠えたり、ニャーと鳴いたりする。マナティーも同じで、音の高さや構造をほんの少し変えて、さまざまな意味を伝えていると言う。

アシュレイ・パップは、マナティは単独で行動する海洋性草食動物である。浅瀬で草を食む時間が長いため、「海牛」という愛称で親しまれている。マナティは一般的に内気でおとなしい生き物なので、野生のマナティに近づくのは難しく、本当の意味で研究するのは難しい。」とベス・ブラデは言う。

ベス・ブラデと彼女のチームは、約7年かけてマナティの声を録音した。海草の原野を漕ぎながら、あるいは淡水の河口付近をクルーズしながら、カヤックの横からハイドロフォンを落とすのだ。そして、マナティが騒いでいるときに何をしていたのか、メモに書き留める。

研究チームは、生物音響研究と保護活動のために開発されたコンピューターソフトウェアを使って、録音された音をひとつひとつ分析した。それぞれの鳴き声の音波を分解し、鳴き声の持続時間や周波数などを調べた。その結果、録音された音声の99%が3つのタイプに分類されることが解った。

また、録音した音とそのときのマナティの行動を関連付けて観察することで、ある音とある行動を関連付けることができた。こうして、おしゃべりの意味がわかってきたのだと言う。

鳴き声([Audio of 「squeal」])は、cavorting、つまり社会的な遊びや陽気な行動の際に記録される最も重要な鳴き声であった。

ストレスを受けたマナティは、ほとんどこの音[Audio of a 「squeak」]しか出さず、ブレイディたちはこれを「squeak」と表現している。

この鳴き声、ハイ・スクイーク[Audio of a 「high squeak」]は、主に母親マナティーと子マナティーの間で使われた。

この研究成果は、学術誌『Marine Mammal Science』に掲載された。

【Beth Brady, et al., Behavior related vocalizations of the Florida manatee (Trichechus manatus latirostris)】と発表されました。

この新しい情報は、いろいろな意味で有用で、マナティーは、いわゆる「キーストーン種(keystone species)」である。つまり、この1つの種の状態をよりよく理解することで、フロリダ沿岸部の生態系全体の健全性をより多く推測することができる。と解説している。

ベス・ブラディは、たとえば、インディアンリバーラグーン(Indian River Lagoon area)では海草が大量に失われ、そのために多くのマナティが残念ながら死んでいる。海草は他の生物種にとっても重要でである。スポーツフィッシュ(sport fish)やゲームフィッシュ(game fish)は、海草藻場を稚魚の養殖場として利用している。海草を利用するタツノオトシゴ(sea horses)などの動物もいるし、カメ(turtles)の餌にもなる。ですから、マナティーを失うということは、生態系の健全性を示す指標を失うということでもある。

アシュレイ・パップは、また、気候変動の問題もある。海洋生態系は、気候変動によって世界中で急速に変化している。マナティーの隠された言葉を理解することで、私たちが知らなかった音波の警告システムを提供できるかもしれない。

また、フロリダのマナティーについて学んだことは、世界各地のあまり研究されていない他のマナティーのグループを理解し、保護する際にも役立つと、ベス・ブラディは言う。世界共通のマナティー言語が存在するかどうかはまだわからないが・・・、マナティーの鳴き声や鳴き声には、純粋なおしゃべり以上のものがあることがわかり始めている。

マナティーの方言の研究も面白いし、マナティー語の文法も面白い。


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