南アフリカにとってのCOVID-19ワクチンの特許放棄の意味。

毎日新聞は2021年05月19日に、新型コロナウイルス関連のワクチン・医薬品を巡る国際的な議論で、南アフリカが特許権(知的財産権)停止の急先鋒(せんぽう)に立っていると報告した。

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そこで早速、南アフリカの新聞を調べたら、南アフリカのgroundupは2021年に05月11日に、弁護士ジョナサン・バーガーが(Jonathan Berger)が「What a waiver on Covid-19 vaccine patents may mean for South Africa(南アフリカにとってのCOVID-19ワクチンの特許放棄の意味。)」を公開していた。

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さらに、health24ではビデオを公開していた。

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https://time-az.com/main/detail/74430

米国通商代表部のキャサリン・タイ(Katherine Tai, the US Trade Representative)は、「パンデミックを終わらせるために、COVID-19ワクチンの知的財産権保護を放棄することをバイデン政権が支持している。」と発表したが、これは「異常な時代だからこそ、異常な手段が必要だ」という意味だと訴えた。

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これまでの政権が、どの政党であっても知的財産権に対して強硬な立場をとってきたことを考えると、これは非常に異例のことである。

しかし、これは実際にどのような意味を持ち、何か違いがあるのか?

1995年01月にWTO(World Trade Organization/世界貿易機関)が設立されたとき、「TRIPS(Trade-related Aspects of Intellectual Property Rights/知的財産権の貿易関連の側面に関する協定)」も設立された。

これにより、WTOに加盟している国は、TRIPSの義務を果たさざるを得ない。

具体的には、例えば、「新規性があり、進歩性があり、産業上の利用が可能であることを条件として、技術のあらゆる分野において、製品またはプロセスを問わず、すべての発明を20年以上保護することを保証する法律を制定する。」ということである。

特許保護の意図しない(しかし期待される)結果の一つに、過剰な価格設定がある。
誰も製造する権利を持たない、命を救う薬の特許を持っていれば、その製品に対して好きなだけ値段をつけることができる。その薬を必要としている人は、その薬を買うためには何でもするでしょうし、余裕のある金額よりもはるかに多くのお金を使うでしょう。これを経済学者は「非弾力的需要(inelastic demand)」と呼んでいる。

もう一つの意図しない。しかし予想される結果は、供給の制限である。

特許権者が他社に製品の製造を許可しないと決めている場合、需要が供給を上回ることがある。これはまさに現在、COVID-19ワクチンに関して起こっていることで、多くの国では国民にワクチンを接種する能力が供給可能かどうかで制限されていru。南アフリカも例外ではない。

知的財産が悪用される可能性があることを認識した上で、TRIPSは各国に公衆衛生上のセーフガードと柔軟性を認めている。

20年前、HIV感染症治療へのアクセスに焦点を当てた世界的な活動を受けて、WTOは「TRIPSと公衆衛生に関する『ドーハ宣言(Doha Declaration)』」を採択し、「TRIPS協定は、加盟国が公衆衛生を保護するための措置を講じることを妨げるものではなく、また妨げるべきでもない.」との認識を示した。

しかし、HIV以外の分野では、まだ変化が見られません。様々な理由により、公衆衛生に関するセーフガードや柔軟性を最大限に活用するために国内法を改正している国は非常に少ないのが現状である。
ここでも南アフリカも例外ではなく、特許法はTRIPSの要求をはるかに上回る保護を提供している。

しかし、「ドーハ宣言」が完全に実施されたとしても、現在のパンデミックに対処するために必要な措置を、世界レベルで講じることはできない。代わりに必要なのは、グローバルなルールを一時的に免除し、その後、新しいルールを国内法に反映させるための立法および行政上の行動を広範囲に行うことである。そしてもちろん、製造能力を高め、ノウハウを共有することが必要である

これらのいずれか、あるいはすべてが実現できるのか?それを判断するにはまだ早すぎる。

可能性があるのは、特許権者がワクチンへのアクセスを向上させるために積極的な手段を講じることである。
これは、権利放棄が採用されるのを防ぐため、あるいは各国が国内法を改正・実施するための行動を阻止するためである。

このような措置には、主に生産と供給を強化することに焦点を当てた、世界中の製造業者との合理的な条件でのライセンス契約や技術移転契約が含まれる可能性がある。

特許権の放棄だけでは問題は解決しない。

しかし、インドや南アフリカが提案しているような権利放棄が、米国の支持を得て採用された場合、特許権者は他社の動きを黙って見ていることはない。

それどころか、歴史が強く示唆しているように、特許権者は、他の有利な分野で自分たちの独占権を守るために、アクセスを増やすために必要なことは何でもする。

ジョナサン・バーガーは擁護者でもある。
彼は、2000年代にTreatment Action Campaignが製薬会社を相手に競争委員会で訴訟を起こし、抗レトロウイルス薬の価格を大幅に引き下げた際に責任を負った弁護士の一人である。

南アフリカを馬鹿にする人も多いが、実は世界最初にモバイル・マネーで成功したケニアのサファリコム(Safaricom)のM-Pesaがケニア政府に規制されそうになった時、m-Pesaの権利をイギリスの親会社ボダーフォン(Vodafone Group)からサファリコムと一緒になって、購入したボーダーコム(Vodacom Group)は、南アフリカの会社である。

また、ガンジーは南アフリカで弁護士であった。

2021-05-06---EU、米国のワクチン特許の放棄案検討で支持表明、検討追随。
2020-04-06---私が大好きなアフリカのモバイル決済「m-Pesa」の買収手続きを完了。
1907-03-22---南アフリカでガンジーが不服従運動を開始した。

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