見出し画像

ポメラDM250を冷静に評価してみた【総括編】

ポメラの新機種DM250の前機種DM200からの変更点については、前回の記事で個別に評価してみた。

今回は、その総括とDM250から見えるポメラの現在地と今後について書いてみる。

6年振りの割に小改良に留まる

DM250は筐体はDM200とほとんど同じに見えるが、内部の部品や基盤はほとんど作り替えたそうだ。ただ、ユーザー側から見た使い勝手は小改良がほとんどで、画期的と感じる変化はない。

敢えて言えば、スマホとの双方向のデータ更新機能の実現とアプリのAndroid対応は大きな改良だが、あくまでソフトウェアレベルの改良であリ、データ更新もファイル単位限定のようだ。

要望が多かったはずのDropbox等のオンラインストレージサービスとの連携は、キングジムのポリシーなのか、リリース後のシステム変更に対する対応が難しいからか、今回も見送られている。

このように、DM250の前モデルとの変更点は、かかった時間の割には小規模だ。

DM250は型番からわかる通リ、DM200のマイナーチェンジモデルとの位置付けの製品である。実際、同じストレートキーボードを持つDM100とDM200の間にあった機能差ほどの差はない。型番がバージョンを現すのなら、今回の機種はDM230ぐらいのネーミングが妥当と感じるほどだ。

前モデルから6年経って「マイナーチェンジモデル」が出るというのは、電子機器の世界では例外的にゆっくりした進歩だ。もう少し率直に言わせてもらえば、遅すぎる。

内部の部品の変更やバッテリーの持続時間や内蔵メモリーの向上についても、6年間の技術の進歩を考えれば、同程度のサイズ・価格で部品調達した結果、自動的に良くなった(変えざるをえなかった)ようにも見える。

一番大きなトピックは「出た事」

では、DM250の登場に意味がないのかといえば、そんなことはない。

DM250の発表こそ、キングジムがポメラというプロダクトを今後とも続けていく意志の表明と取ることができるからだ。

ポメラは、最初のDM10から世間の話題となり、それなリに地歩を築いた製品ではあるが、キングジムにとって大きなプロダクトではない。DM250の「初年度の販売目標8,000台」というのは、目標通り売れても売上高は5億円程度で、キングジムの年商360億円(2021年6月期)の1.4%に過ぎない。(電子製品に限っても売上が277億円あるので、1.8%)

つまり、キングジムにとってのポメラは、大きな売上・利益をもたらすプロダクトではない。(「ユニークな製品を出す会社」とのイメージアップには繋がったはずだが)

一方、キングジムは大手文具メーカーではあるが、アイデア商品メーカーの一面も持ち、毎年多くのユニークな新製品を発売している。

ただ、それらの商品の全てが市場に受け入れられるわけでなく、「ポータブック」「フリーノ」「ピットレック」等々後継機が出ずにラインナップから消えた製品も数多い。

そんな中で、ポメラの新製品を4年ぶり(全機種のDM200からなら6年振り)に発表したという事は、当面5年程度は、ポメラが現行製品であり続けるという事だ。

このポメラの今後と開発間隔の長さに関しては、発表会でも話題になったようで、「今後とも開発を続けていく」「次の製品は、もう少し短い間隔で発売したい」と述べられている。

次に出るのが折り畳みキーボードを持つ2桁の「DM5O(仮名)」なのか、ストレートキーボードの3桁モデル「DM300(仮名)」なのかはわからないが、DM250に関しては、長らく中断していて存続が危ぶまれたポメラの継続が決まっただけでも出る意味があると思う。

(なお個人的には、最上位機種の前に、中級機として「DM50(仮名)」が出ると予想している)

ポメラからポドラ(?)へ

そして、今さらの話になるが、今回のDM250を見て、ポメラがますます「文書を作る道具として進化しようとしている」と感じる。

ポメラはその名の通り「パーソナルメモライター」として企画された。元々は、会議の場などでさっと取り出して起動してメモを取ることを主要な用途と想定していた事から、この名前になった。

ところが、「モノクロの液晶モニターと充分なピッチのキーボード、ATOK搭載」という内容に琴線を刺激されたのは、ライターやブロガー、脚本家、小説家などの文書を作ることを趣味・生業にしている人たちだった。

DM1Oが発表になったときのある種「祭り」と言える反応については、当時を知る人でなければ理解しづらいと思うが、ポメラはおそらくメーカーが全く想定していなかった熱量を持って迎えられたのである。

それらの人たちがDM1OやDM20を買い、使い込むことで出てきた要望に対して、「マイクロSDからSDカードへの変更」「アウトラインモード」「ATOKをProfessional版へ」「アップロード機能」等々の改良を続けてきた集大成がDM200であったと言える。

こうして、徐々に「メモから文書へ」軸足を移していたポメラだが、今回の、DM25Oの改良点を見ると、ポメラが改めて「(メモではなく)文書を作るツール」として進化しようとしていると感じる。

「最大文字数の倍増」「校正機能」「シナりオモード」の強化・追加された機能は、全て公開する文書の執筆に役立つもので、自分しか見ないメモを書くための機能ではない。

DM250の全ての改良点を見ると、ポメラが「文書ライター」として進歩しようとしている事がわかる。

言わば「ポメラ」が「ポドラ」(パーソナルドキュメントライター)になって行くとも言える。(実際に、名称が変更されることはあるまいが)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?