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ウルフズ・ワンナイト・スタンド ep-6 #ppslgr


※本稿には一部グロテスクな描写が含まれています。

◆前回までのあらすじ

スーパーロボット、ソウルアバター(略称:SA)乗りロックミュージシャンのリキヤが襲撃を受け、応戦する。リキヤは飛行ステージでもって敵の集団を撃破したが、遠距離に砲塔が現れステージを破壊されてしまう。一方、アイネとA・Zは破壊した敵機に包囲されていた。

 軟泥装甲に無数の穴を穿たれながら、灰色のSAが吹き飛ばされる。至近距離からのショットガンを見舞ったアイネ機、ラフィングジェミナスはその射撃反動でもって急旋回し、第3腕のパイルバンカーを別の一機に叩きつける。
 頭部を粉砕されたSAはぐらりと膝を付き、わずかに発光して塵になった。吹き飛ばされた1機も後を追って粒子化していく。

「弱い」

 病人の歩みのような歩調でジェミナスに殺到するは十数機の灰色SA郡。その緩慢な散兵達に向かって、アイネは右腕ライフルを向け発砲した。頭部に2発、腰部に2発。右腕が乗用車組み立て機械のような動きを続け、包囲者たちを射撃していく。

「手応えがなさすぎる」
「こっちもだ」

 アイネから離れた位置で応えるA・Zもまた、瓦割りでもするように灰色SAの頭部を手刀で割砕いていく。背後から組み付かれればその腕を引きちぎり、足にすがりつかれれば腰部を踏み砕く。戦いというよりもそれは作業のようだった。

 しかし、敵はいっこうに減らない。

 視界の隅で鈍い輝きを認め、アイネは舌打ちしてそちらを注視する。粒子化した軟泥装甲機体の中から棺桶のようなものが浮かび上がり、強い光を放つ。砂漠の真砂が巻き上げられれば、あっというまに元通りの灰色SAが出現した。

「確かあいつは、3回位壊したかな」
「彼らは一切兵装を積んでいないようですが、その代わりに再生にかかるコストを切り詰めているようですね」
「いくら切り詰めたって、こんなのおかしいでしょ。パイロットにどれだけ負担がかかると思ってるの」

 砂中深く潜航する機体の中でD・Aはうなずいた。レーダーで砲撃塔をにらみつつ、アイネとA・Zの視界をザッピングする。

 アイネの言う通り、ソウルアバターはパイロットの精神力をも使用して起動させる。その転送と構築にはそれなり以上の負担になる。よって短時間の機体送還と再構築は物理的に不可能である、はず。

 だが彼らは明らかにその無理を通している。単純なデザインに非武装と、低コストを目指した機体であることは間違いない。だがそれだけのことでパイロットの負担が目に見えて軽くなるものではないはずだ。

「アイネさん、そろそろ攻め方を変えましょうか」
「賛成。ちょうど我慢の限度だったところよ」

 ラフィングジェミナスの周囲で灰光が立ち上り、破壊した軟泥装甲巨人達が再生する。その一番手近な一体へブースト光を上げて踏み込み

「貴方、ちょっと顔を貸してくれる?」

 第4腕をその胴体へ突き刺した。
 途端に周囲の灰色巨人たちが地を蹴り、ジェミナスへ殺到する!

「A・Z、お願い!」

 アイネは鋭く叫ぶとともに貫いた敵機ごと跳躍!灰色巨人たちの包囲から飛び出す!それを彼方から砲撃塔が見咎めた!

 天体望遠鏡のような砲塔がおごそかに回転し、高度を上げていくジェミナスを照準する。だがその照準のど真ん中に灰色の塊が飛び込んできた!

「もう一丁!」

 複合重機巨人がカンジキキャタピラで砂地を疾走しながら、ふらふらと歩く軟泥装甲機の首根っこを捕まえる。そのまま米俵担ぎに肩へ乗せ、さらに加速!機体総身のバネとブースト噴射でもって高らかに投げ上げた!

 砂漠へ高らかに砲撃音が響き渡り、中を舞う灰色巨人が吹き飛ばされた。第二射も過たず巨人に突き刺さり、その巨躯を粒子還元させる。

「やっぱりフレンドリーファイアを気にする相手じゃないか」

 ため息とともにA・Zは投げ渡されたものを受け取る。遅れてジェミナスが粒子光を伴って着地し、複合重機巨人に並走した。

「いくらでも再生するなら気にするわけもないでしょ。さ、解体をお願い」
「あいよ」

 右腕レーザートーチが展開し、中から一回り小さなマニピュレーターが現れる。アイネから受け取った棺桶のようなものにその機械の指があてがわれた。

「開閉機構は、あった。これをこうして…」

 するすると指がなぞり、端から棺桶状物体が解体されていく。やがて、中身が姿を表した。

「……パイロットだ」

 D・Aの声だけが各機のコクピットに響いた。
 現れたのは人間だった。ソウルアバターには人間のパイロットが必要。当たり前のことだ。だがその有様にリキヤ、アイネ、A・Zは息を呑んだ。
 男のようだった。わずかに露出する顎。その無精髭からのみ、そうと判断できた。

 全身は何らかの化学繊維でミイラのように巻かれ、固められ、身動き一つ取れない。目元は分厚いゴーグルで覆われて判然としない。口元には呼吸器のようなものがあてがわれ、そこから何本ものチューブが胸元の機械へ伸びている。股間のあたりも機械で覆われてはいるが、汚液が染み出している。時折、自身の生存を主張するようにびくんと全身を震わせた。

 D・Aは機械的にそれらの構成要素を抜き出し、表示や刻印を読み取った。

「彼はパイロットだ。ただ本人の意思は無視されている」
「改造、されちまってるのか?」
「外科的なところまではわかりません」

 各機に解析結果が届く。胸の機械に酸素、栄養剤のほかに、向精神薬の名称が読み取れた。

「推測ですが、五感すべてを騙してソウルアバター起動に必要な状態を作り出しているのかもしれません。解析データをすぐ知り合いの医者に送ります。急いで確認してもらわないと」
「そんなの、いらないでしょ」

 アイネが小さくつぶやき、操縦桿を握りしめた。
 意思の感じられない動きや再生能力。その不自然な性能を数十機もの機体が持ち合わせている。訓練や統一した意思によって同一規格のSA部隊を結成する者たちはいる。だがこのパイロットを見れば自明のことだった。

「みんな同じなのよ。こいつらみんな」

本稿は以下の物語の二次創作小説です。スーパーロボット活劇!

筆者は以下の物語を連載中です。


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