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公務員家を買う⑲(自分で表題登記をしてみた)

引っ越し業者も決まって、竣工検査を終えると、ハウスメーカーから検査済証を渡されました。これは、建築基準法で定められている「建築確認申請」「完了検査」の2つの審査・検査が完了し、建物が建築基準法や関連法規の基準をクリアすると交付される書類です。
参考:検査済証とは?確認済証との違いやいつもらえるのか、検査の義務化、再発行などの疑問を一撃解明! | 住まいのお役立ち記事 (suumo.jp)

この書類を取得すると、表題登記を行うことができます。家主が自分で表題登記の申請を行うことは珍しいため、記録に残しておきたいと思います。

1 表題登記とは

家を新築した際は、いくつかの登記が必要となります。所有権保存登記または移転登記、住宅ローンを借りた場合であれば抵当権設定登記がありますが、こうした様々な登記を行う前に、まず行う必要があるのが、表題登記です。

表題登記は、書いて字のごとく、登記事項証明書の「表題部」に建物の所在を登録する手続きになります。

新築当初は、物理的な建物はあっても、登記簿上には当然ながら何も載っていません。家主が「ここに建物があります」と登録することで初めて建物の所在が明らかになります。

表題登記は法律で義務付けられている登記であり、新築した家主が必ず行わなければいけません。怠った場合は、10万円以下の過料となることもあります。
参考:不動産登記法
第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
第百六十四条 (前略) 第四十七条第一項、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条又は第五十八条第六項若しくは第七項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

2 登記は自分でできるのか

表題登記や所有権保存登記は、ハウスメーカーや不動産業者を通して、専門家に頼むことが一般的です。その理由は、登記自体に面倒・煩雑というイメージがあること、そして、住宅購入をするときは住宅ローンを組むことが多いため、登記の手続きを専門家に頼むことを融資条件とする金融機関が多いことによるそうです。

しかし、表題登記を専門家である土地家屋調査士に依頼すると、10万円ほど費用が掛かるようです。(ハウスメーカーを通すと更に追加料金がかかります。)

たまたまですが、今回の住宅購入にあたっては、所属自治体の住宅建設資金貸付を利用したため、表題登記を専門家に頼まなければいけないという縛りがありません。

不動産登記法の条文に「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は」と、本人が申請することを前提に書いている以上、専門家しかできないことはないだろうと、自分で申請する方法を調べてみることにしました。

「表題登記 自分で」と検索してみると、現役の土地家屋調査士や、私と同じような理由で、表題登記を自分で行った記事がいくつか出てきます。いくつかのサイトを見て分かったこととしては、申請自体はシンプルなので、自分でも登記はできそうだと感じました。

3 表題登記に必要な書類

表題登記に必要な書類は、①申請書、②図面、③建築確認書及び引渡証明書、④住民票、⑤住宅周辺地図、以上の書類です。

(1)登記申請書

登記申請書は、法務局のホームページにあり、申請の内容に沿って、word,RDF,一太郎の様式も用意されています。しかし、申請する人が少ないためか、表題登記の申請書は用意されていません。

そのため、他の登記申請書の様式をダウンロードし、『表題登記 登記申請書』で画像検索して見本を見つけ、表題登記用に申請書を修正します。

申請書の記載事項は氏名や現住所など、一見シンプルなのですが、『建物の表示』については、少し苦労しました。
「種類」「構造」「床面積」は、ハウスメーカーから受け取った建築確認申請書のとおり記載すればよいのですが、「原因及びその日付」だけ、どう書けばよいのか分かりませんでした。

原因は『新築』でよいのですが、日付は、引渡しを受けた日なのか、検査済証が発行された日なのか、それとも他の日なのかが分からず、調べてみても「私はこの日にした!」と人によって異なるため、決定的な情報を得ることはできませんでした。そのため、日付だけ空欄にして次の書類へ移ることにしました。(後日、法務局の担当から言われたことは、検査済証が発行された日付を書いてほしいとのことでした。)

(2)図面

図面が一番難しく、後に記載する修正作業も含めると、これが専門家に任せる理由なのだと納得しました。表題登記の申請に必要な図面は、1/250サイズの各階平面図と1/500サイズの建物図面です。

どう作ればよいか、まずはここでもインターネットに聞いてみて、情報を集めたところポイントは以下の通りでした。(「表題登記 図面」で画像検索すると山ほど出てきます。)
・PowerPointで作成するのが簡単で修正もしやすい
・B4横長サイズにして、線を0.2サイズにした図形を組み合わせる
・基本は実線、吹抜けは×マーク、2階と1階でサイズが違う部分は点線

ポイントをつかんだら、次は長さの計測です。実際の長さから1/500、1/250にしなければならないので、一辺一辺測るのは、かなり面倒です。しかし、ハウスメーカーから以前提示されていた設計図書を確認すると建物図面も各階平面図もあり、それぞれ縮尺は1/250となっていました。

設計図書をそのままトレースして送ればいいと分かったので、ハウスメーカーに、PDFでデータを送ってもらい、パワーポイントに取り込んで、微修正をするだけで済みました。(作業時間としては1時間ほどです。)

(3)建築確認書と引渡証明書

これは、ハウスメーカーに用意してもらう書類です。建築確認書は、建築する前に行った「確認申請書」と引渡しの際に手に入った「検査済証」です。申請書の原本は、後々色々なところで使用するので、原本証明をした写しをそれぞれ用意しておきます。

引渡証明書は、引渡し後すぐには手に入りませんでした。引渡し証明書は、建築したハウスメーカーから、所有権が施主に移ったことを証明する書類です。(厳密には登記をしていないので違うかもしれませんが、法務局の人からこのように説明されました。)

事前にハウスメーカーに送付をお願いしていたのですが、社印が必要であることから、2~3週間かかると言われました。そのことを法務局の窓口の人に伝えると、法人番号さえわかれば、それ以外の手続きを進めてくれると説明があったので、その場で、国税庁の法人番号公表サイトから、ハウスメーカーの社名を検索し、法人番号を余白に記入しました。

(4)住民票と地図

表題登記にて使用する住民票は、引っ越し前の旧住所でも良いそうなので、近くのコンビニでマイナンバーを使い住民票を取得して提出しました。(原本証明をすれば、写しでも良いそうです。)

地図は、住宅がどこにあるかが分かればよいので、ヤフー地図やグーグルマップを印刷して、住所地に印をつければ、問題ないようです。

以上ですべての書類が揃いました。表題登記に申請料は必要ないため、書類を提出して、引換券だけもらえば、手続きは終了です。

4 表題登記の修正と現地調査

提出してから3日ほど経った後に、申請書に記載した自分の携帯に法務局から電話がかかってきました。

登記の担当の方から説明があったことは、細かい点で申し訳ないが、図面で何点か修正があるため、一度法務局に来て、修正箇所を説明したいとのことでした。急ぎの仕事もなかったので、翌日の朝に時間給を取って、法務局によってから職場に向かうこととしました。

修正点は、1階と2階の重なっている部分が異なる。近隣の番地が書いていないなど、形式的な細かい点です。しかし、数が多いため、これは電話で聞いて修正するのは難しく訪問する必要があるなと納得しました。

その場で、修正方法を聞いて、法務局の近くのカフェでパソコンを広げて修正し、およそ30分ほどで再提出まで済ますことができました。

形式的な修正によって、図面がある程度固まると、次は、図面のとおりの家が本当にできているのか、法務局の担当者が現地調査を行います。その場で、日程調整を行い、決まった時間に家にいるように言われました。

現地調査は、担当の方が公用車に載って現れ、吹き抜けの位置や隣地との境界線は幅などを図面と一つ一つ突き合わせながら、30分ほどかけて、チェックを行っていました。

幸いなことに大きな修正点はなく、後は引渡し証明書だけ、届いたら郵送してほしいと言われ、現地調査は1時間もかからず終了しました。

5 登記の受領

現地調査から数日たって、ハウスメーカーから引渡し証明書が届き、その日のうちに、法務局に郵送しました。同じ県内であったため、翌日には届いたようで、担当者から電話がかかってきました。

図面も固まり、必要書類もそろったので、後は登記官の印を押すことができれば完了です。担当者からは2日ほどで渡すことができるので、取りに来てほしいと伝えられました。

きっかり2日後の午後に、法務局の申請窓口に行って引換券を渡すと、すぐに係の人が表題登記の完了証を持ってきてくれました。

この時に、「申請書の写しも持っていくか?」と聞かれたのですが、この後の所有権保存登記も行うのであれば、申請の際に提出することになる「住宅用家屋証明書」を取得するときに申請書の写しを使用するので、必ずもらうべきと言われました。

これで表題登記の完了です。全体を通して、法務局までの交通費以外に、登記申請自体に費用は掛からず、図面の作成と修正の手間と、現地調査に立ち会うなどの、労働的な手間だけでした。

私自身、図面など書いたことはありませんでしたが、今はインターネットで見本をいくらでも拾うことができるので、作業自体はパワーポイントが利用できるのであれば、さほど難しくありません。

表題登記を自分で行うことができるのは、住宅ローンを利用せずに戸建てを建築する場合と、現代ではなかなかレアケースですが、少しの手間と時間をかけるだけで、10万円以上の費用を浮かすことができるので、機会のある人は、挑戦してみることをお勧めします。

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