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公務員のムダ作業

先日、書店をのぞいていたら、面白そうな本を見つけました。
無くせる会社のムダ作業100個まとめてみた」という本です。

当たり前になっているけれど、多くの人が気づいていないムダ作業。
複雑なシステムを入れなくても「Excel」「スプレッドシート」「ドキュメント」のような一般的なツールを使いこなせれば、簡単に解決できます。
いやそもそも、その作業、必要ありますか?

本書の紹介(amazonより)

早速購入したところ、まだすべてを読み終えていないのですが、「あ~あるある」といった会社のムダ作業、問題点を指摘するだけでなく、簡単に出来る解決案も示されていて、なかなか面白いと思います。

また、残念ながら、うちの職場にも当てはまるものがいくつもありました。「これ中々直らないんだよなー。」と言う公務員の悪癖のようなものもあります。

私は、基本的に地方公務員の仕事に対して肯定的な姿勢でいます。子どもにも胸を張ることのできる良い職業だと思います。ただ、全部が全部完璧かといえばそうではありません。

15年ほど地方公務員をやっていますが、入庁から未だに変わらない、公務員のムダ(と自分が思う)作業を今回はまとめてみようと思います。

公務員志望の人が見たら、入庁後にがっかりしないで済むかもしれません。

1 細かすぎる文章校正

自治体あるあるだと思うのですが、文章作成に並々ならぬ情熱を持っている人が非常に多いです。

首長のイベントでのあいさつ文や、関係団体への依頼文、そしてもちろん議会答弁など、公務員は文章を作成する機会に嫌と言うほど恵まれます。

文章作成と言っても、0から創ることはほとんどなく、過去の文章を時点修正したり、類似の照会文を転用したりして作成することが7~8割を占めるのではないかと思います。

一方で、例え過去の文章を修正したとしても、それで決裁が通る(上席の昇任を得る)ことはほとんどありません。各人、様々なこだわりを持っており、てにをはレベルでチェックされることもしばしばです。

先日も隣の班で、まだ若い職員が係長と1対1で長時間挨拶文の校正作業を行っていました。
(翌朝「2時間ですよ…ひどい目に遭いました」とぼやいていました。)

明らかな間違いが多いのであれば、時間も多少かける必要があるのですが、「速やかに」「直ちに」「遅滞なく」の使い分けや、「取組み」の「み」を入れるかどうかなど、公務員的には大事かもしれないけど、まあ正直どっちでもいい場合がほとんどです。

入庁して10年くらいたつと、気を付けるべきポイントや最低限必要な文章の流れを組み立てることができるようになるので、そこまで時間をかけてつぶさにチェックされることはなくなります。

ただし、修正なしで通ることばかりという訳ではなく、赤字がついて直ってくることも多々あります。「好みによる」と思うものも多く、皆が修正した修正した結果、もとの原案通りになって返ってきたという笑い話もありました。

もちろん、腹落ちする指摘も多くありますが、数時間もかけて行うような作業ではないだろうと思うこともしばしばです。

2 固すぎるガード

公務員をやっていて,個人的に一番嫌いな作業が割り振り変更です。

私の職場では、答弁でも、要望でも、誰かの質問に何か応える必要があって、担当が異なっている場合、他の所属へ変更する作業のことを割り振り変更と言っています。

以前から、三遊間のゴロを拾うと言われ、民間企業もあいまいな仕事は避けたがるようですが、公務員は、その傾向がより顕著であるように思います。

公務員は、曖昧な仕事を引き受けても予算や人が増えるわけでもないし、ましてや、担当の給料が増えるわけでもありません。引き受けるインセンティブがないのです。

もちろん担当によるのですが、所属する課の守備範囲に50%入っていたとしても、やってくれない人は引き受けてくれません。

例えば、熱中症について質問が来た場合、まず健康増進の所属に打診が行って、「熱中症は健康問題だけでなく、環境問題でもある。」と環境系にも話が振られ、熱中症に子どもがなったならば学校関係にも聞いてみなければとなり、最終的に所管はどこだともめることになります。

はっきり言って笑い話なのですが、やっている本人たちは大まじめです。何で誰も受けないのだろうと思うのですが、受けたが最後、来た質問に関する事柄は全て引き受けることになるため、ガードを固くすることになります。

そして、質問を引き受けたことによって何か得することもなく、ただ仕事が増えるだけです。皆が皆お互い様の精神で、「この間はうちが引き受けたから次はそちらで」と、分け合えばいいのですが、そう上手くはいきません。

私の自治体では、どこの部にも「ここに断られたらお終い」という責任感の強い課があります。最後の最後、本当に困ったらそこに頼んで、断れたら、幹部で決定してもらうということがたまにあります。

ただ、それだと責任感の強い課の負担が重くなるばかりなので、個人的には、質問の所属を決定してくれるAIの導入か、答弁多く書いた所属の課長に特別ボーナスを出してほしいと願っています。

3 根強い紙文化

「公務員は紙ばかり」と言われます。これは誇張なしに、本当に紙を求める人は多いです。単に紙で決裁を回さないと見てくれないという人は多くないのですが、資料を紙でほしがる人は幹部クラスは未だに多いと思います。

理由としては、議員と相対するときに、PCを開きながら話すことにためらいがあったり、答弁をするときに、PCだとロックがかかってしまって、すぐに該当のページを開けないといったこともあると思います。

また、電子だと見るのに時間がかかるということもあります。私の自治体にも電子決裁のシステムは導入されているのですが、電子決裁だと、急いで決裁が必要なものかが一目ではわからず、溜まってしまう事例が多発しています。

そのため、紙の決裁と併用して回して、嫌でも現物が目に入るようにして回議を早くするといった解決策(?)が行われています。

これと同様に、上司に確認してもらいたい趣旨のメールを送っても、毎日大量のメールがそこらかしこから届く課長級は、見ないまま埋もれていく、または「あとで見よう」と思って既読にしたまま忘れるといったこともあります。

そうなると、紙で持って行って「これ見てくれました?」と聞くのが一番早いことになります。

また、長年積み上げた紙文化を変更するには、意識改革だけでも多大な労力がいりますし、現存するファイルを電子データに変更するのも大変です。

「まあ、今までやっていたことに習うか」と、郷に入っては郷に従えを言い訳に、紙文化が継続することになります。

個人的にも、2010年代に派遣された民間企業では、紙を印刷することは1年間でほとんどなかったのに、役所では今でも数十倍の紙を印刷しているのは、自分としても改めないとなと思っています。

以上、3つの公務員の無駄と思う作業を並べてみました。
 ・文章校正
 ・割振変更
 ・何でも紙での印刷

批評家ぶるのも良くないので、私も無駄だと思いながらも改められない加害者側の立場にいることは確かです。公務員職場をより魅力的なものにするためにも、まずは隗より始めよ、公務員の無駄と思えることは少しずつでも直していきたいと思います。

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