今日の気分はこの曲
Vol.15「Waterloo Road」Jason Crest
ジェイソン・クレストというこのバンド、普通の人は知らないでしょうね。
イギリスで1967年から1969年までのわずか2年ほどの短期間、
活躍したサイケデリック・ポップバンド。
全然売れなくてシングル5枚を出したらレコード会社との契約が切れて、
そのまま解散となったグループです。
この曲は1968年2月28日に発売された、4枚目のシングル。
それまでのシングルは彼らが作ってました。
しかしこの曲は彼らの才能に限界を感じたプロデューサーが、
ビートルズのアップルレコードから買った曲です。
作詞はマイク・ディーガン、作曲はマイク・ウィルシュのコンビ。
それまでのシングル同様この曲も大して売れず、
歴史の中に埋もれてしまうはずでした。
今聴いたらなんだかゆる~い感じがして、悪くないのですが。
でも「他の曲よりズバ抜けて良い!」って程ではありませんね。
売れなかったのも、分かる気がします。
しかしこの曲に注目した男が、たまたま仕事でロンドンに滞在してました。
男の名はジョー・ダッサン。
彼は歌手で、さっそく作詞家のピエール・ドラノエに、
この曲にフランス語の歌詞をつけるよう依頼します。
ただ問題が一つありました。
それはこの曲の舞台とタイトル。
イギリスのウォ-タルー通りが舞台なので、
「Waterloo Road」というタイトルでした。
ウォータールー通りはイギリス人にはお馴染みの土地で、
キンクスにも「Waterloo Sunset」という美しい曲があります。
だけどその「ウォータールー」が大問題。
フランス語読みすると、「ワーテルロー」になります。
フランス人にとっては「ナポレオン皇帝が大敗を喫した忌々しい土地」、
それと同じ読みになってしまうのでした。
そのままでは発売なんて出来ません。
そこでピエールは一計を案じます。
「イギリスにウォ-タールー通りがあるなら、
我がフランスにはシャンゼリゼ通りがあるじゃないか!」
彼は舞台をシャンゼリゼ通りに置き換え、曲を完成させました。
完成した曲は「Les Champs Elysees」というタイトルになり、
1969年5月に発表されました。
日本でもお馴染みの名曲、「オー・シャンゼリゼ」ですね。
この曲が大ヒットして、今やフレンチ・ポップスの代表曲となってます。
つまりこの曲はフレンチ・ポップスの代表みたいに扱われてますが、
実はフランスじゃなくてイギリスの曲だった、ということなんです。
カバーですが、日本ではこちらの方が有名だと思います。
ジョー・ダッサンのバージョンは、日本ではヒットしなかったので。
1971年に発表されたダニエル・ビダルによるカバー。
彼女は親日家として有名で、日本での滞在経験もあります。
その為この曲には日本語で歌うバージョンもあります。
名作詞家である安井かずみの可愛らしい日本語詞と、
彼女のフランス訛りが入った声が見事にマッチしてますね。
日本語でのカバーと言えば、御大・越路吹雪によるカバーも。
こちらは日本語の歌詞を彼女のマネージャーもとい、
盟友の岩谷時子が手掛けてます。
歌詞の違いや歌い方の違いに注目ですね。
という訳でジェイソン・クレストの名曲、
「Waterloo Road」についてでした。