見出し画像

飛び出せ!佐久間探検隊

第二十四回 遠くて近い秘境駅を探検してみた!


ドモ。佐久間探検隊の隊長、佐久間ディックです。

秘境駅鉄道以外の交通手段では辿り着くのが困難な駅。
都会に住んでると「そんな駅なんてあるの?」と思いがちだけど、
日本って広いんで結構ある
大半は都会から離れた北海道や九州、中部地方に存在しているが。
しかし大阪の中心地の難波駅から僅か1時間半で辿り着ける駅も存在する。
その駅の名は

紀伊神谷駅


南海高野線の駅である。
終点の極楽橋駅の1つ手前になる。
お手軽に秘境駅を体験できるなら、探検してみよう!
探検隊は紀伊神谷駅へと向かうことにした。
出発地は南海高野線の橋本駅。
高野線の始発駅は難波駅だが、
有料特急の「こうや」以外は殆どがこの駅での乗り換えが必要になる。
実質上難波駅からここ橋本駅までの通勤路線と、
橋本駅から極楽橋駅までの山岳路線に分離されているのだ。
探検隊はちょっと派手な赤い2300系に乗車した。

画像1




橋本駅を出た電車は街を離れ、国道やJR和歌山線を潜り、
和歌山県紀北地方随一の河川である紀ノ川を渡る。
ここ橋本市は1936年のベルリンオリンピック女子200m平泳ぎで、
日本女子初の金メダルを獲得した前畑(兵藤)秀子さんの出身地
ここ紀ノ川をホームグラウンドにして彼女は泳ぎを鍛えたそうだ。

画像2




紀ノ川を渡り終えると、のんびりとした雰囲気の土地を走る。

「山岳路線じゃなかったの?」

そう言われそうだが、まだまだ予告編にすらなっていない

画像3




このあたりでは沿線の桜並木が有名。
しかし探検隊が取材したのは、4月8日。
どうやら来るのが少し遅かったようである。

画像4




そうこうするうちに、九度山駅に到着した。
九度山は関ヶ原で敗戦後に、真田昌幸・幸村親子が流された土地。
父の昌幸はこの地で生涯を終えたが息子の幸村は1614年に脱出し、
大坂冬の陣へ参戦の為大坂城へ馳せ参じた。

さて、駅の先には何やら急勾配が見えているが、
ここからが山岳路線の本領発揮なのである。

画像5




九度山駅を出た途端、急勾配と急カーブだらけに。
当然、スピードもガクンと落ちる訳でして。
チラッと写ってる道路からは竜王溪という渓谷が見られるが、
高野線からはちょっと無理のよう。
カーブの先の鉄橋は、丹生川橋梁。
1925年に架設され、全長は約73m。
経済産業省の近代化産業遺産にも登録されている。

画像6




高野下駅から先は、更に山岳鉄道の雰囲気に。
駅を出た途端、更に厳しい急カーブと急勾配がお出迎え。
建設に携わった方々の苦労が偲ばれる。

画像7




写真ではそう大した事無いような勾配に思える。
が、歩いてみるとすぐ根を上げてしまうだろう。

画像8




山陰本線の余部橋梁が架け替えられた今、
現存する数少ないトレッスル橋の中古沢橋梁を渡る。
トンネルとトンネルの間で全長67.6m、高さ33.4m。
1927年に竣工し、2011年に土木学会選奨土木遺産に選奨されている。

画像9




急勾配や急カーブだけでなく、トンネルも多い。
このようにトンネルを抜けたら急勾配&急カーブも、しばしば。

画像10




紀伊細川駅で対抗列車待ちの間にパチリ。
2300系はお顔が赤いせいか、可憐なイメージが。
差し詰め「山ガール」と言ったところか。
しかし伝統のズームカーの一族だけあって、
山岳区間での走りはしっかり「山男」であった。

画像11




対抗列車は31000系の「こうや」だった。
高野線のクイーンとして君臨する30000系と比べて地味だが、
1編成しか存在しない貴重な裏方さん的存在。

画像12




そんなこんなで橋本駅を出発して、山岳区間を行く事44分。

探検隊は紀伊神谷駅に到着した。


極楽橋駅側は、直ぐにトンネルの入口が口を開けている。

画像13




紀伊神谷駅が開業したのは1928年6月18日。
高野山電気鉄道の終着駅として開業した。
当時の駅名は神谷駅。
1930年3月1日に現在の駅名に改称され、
1947年3月15日に高野山電気鉄道が南海電気鉄道と改称された。
書類上だけではあるが、

現在の南海電気鉄道は高野山電気鉄道の後身なのである。


ちなみに戦前の南海鉄道は1944年に関西急行鉄道と合併し、
近畿日本鉄道となっている。
そして1947年6月1日に合併前の南海鉄道だった路線は、
近畿日本鉄道より南海電気鉄道に譲渡されている。

画像14




橋本駅側の風景。
右側にある構内踏切で、駅舎とは連絡している。
安全側線が存在するあたり、ここが山岳路線の駅であることを表している。
ちなみに紀伊神谷駅の標高は473m
橋本駅の標高は92mなので、381m登った事になる。

画像15




駅舎は線路より一段低い位置に建っている。
秘境駅の殆どは無人駅なのだが、

ここは駅係員配置駅。


おそらく急カーブの上にホームが存在する為であろう。
列車の発着時には駅係員さんがホーム上に立ち、
運行の安全を確保している。

画像16




趣ある木造駅舎には、見慣れた存在が。

ICカード対応の自動改札機がある!


駅係員配置駅だし、2020年の乗降人員が1日9人と南海で最も少ないから、
自動改札機の必要性を感じないのだが。

画像17




駅窓口の風景
切符の自動販売機はない。

窓口はあるのだが切符の販売は行っていない。


勿論ICカードのチャージも出来ない。
乗車する場合は窓口から乗車駅証明書を取って、下車駅で精算となる。

画像18




定番の駅ノートと、周辺の観光案内図。
ノートを見る限りでは、乗降人員は1日9人を上回ってると思う。

画像43




駅舎の入口には、個人名が掛かれた札がついた謎の木箱が。
実はこれ、地元の人専用の下駄箱なのである。
駅に至る道は急勾配なので、雨や雪の日には長靴が必須となる。
しかしそれを履いたまま列車に乗る訳にいかないので、
下駄箱に入れてある靴を履いて乗車するのである。
早い話、靴のボトルキープですね。
スナックみたいな言い方ですけど。

画像21




駅舎の全景。
南海電気鉄道標準の駅名標が、駅舎の雰囲気にそぐわない。
墨書きされた一枚板の方が、良い雰囲気を醸し出すと思うのだが。

画像22




駅前の道なのだが、右に曲がるとこんな感じ。
小川を渡ると、いきなりハードモードですか。

画像23




その先は、更にハードモードになってる模様。
こちらを進むのは、止めておいた方が良さそうだ
転倒してケガでもしたら、シャレにならないだろうし。

画像24




左側へ行こうとして、こんな看板を発見。
喫茶店があるみたい。
だけども今日は金曜日
ヒジョーに残念だ。

画像25




左の道を右折すると、絵に描いたような山道が。
今にも水戸のご老公一行がやって来そうである。

画像26




周辺の案内看板。
どうやら駅にあったパンフと同一の品のようだ。
あまり遠くに行っても疲れて帰られないかも知れないので、
旧白藤小学校を目的地に決定する。

画像27




暫く歩くと、分かれ道が。
さっきの案内図だと、直進が正解のようだ。
しかし先がハードモードになってるのが、気がかりである。

画像28




角にあった道標。
「日本最後の仇討」は面白そうだけど、ちょっと遠そう。

画像29




道は細く、樹々に覆われて薄暗くなっていく。

「待てい!」


そう声がして、刀を持った賊が今にも表れそうだ。

時代劇の見過ぎなのだろうか。

画像30




道は相変わらず険しく、かつ薄暗い。

「ゴォォォォォ~!」


唸り声のような音を出しながら、
前から道幅いっぱいの大きな石の球がやって来そうだ。
今度はなんかの洋画の観すぎのようである。

画像31




日ごろの運動不足のせいか、息が上がってくる。
マメに運動はしなきゃダメですなぁ。

画像32





ここにも「コーヒーしらふじ」の看板が。
案内図通りだと道がある筈なんだが、
獣道しか見当たらないのだけど。

画像33




ようやくT字の交差点に差し掛かる。
探検隊は右折した。
「日本最後の仇討」はまたの機会にしよう。
またここにやって着る機会があれば、の話だが。

画像34




右折すると勾配が緩やかになった。
集落が近いのだろう。

画像35




そんな事を考えながら歩いていると、再びT字の交差点が。
左側手前の桜も綺麗だな。

画像36




「右高野山」の看板が良い味を出してるなぁ。
探検隊は右折した。

画像37




右折した先は、集落の外れの模様。
道はすっかり平らになっている。

画像38




石で出来た道標。
高野山までは一里と少しのようだ。
問題はその一里の間に、どれだけ標高が上がるかという事だけれど。

画像39




道端に突然現れた建物。
看板を見る限り、ここが集会所のようだ。
という事はここは集落の中であるという事だ。

画像40




のんびりとした集落の中を歩く。
都会とは違って、ここでは時間がゆっくり進むようだ。

画像41




突然、道が細くなる。
この道幅が本来の道幅なのだろう。
樹木のトンネルが探検隊をやさしく包む。

画像42




トンネルを過ぎると、建物が。
どうやらここが「コーヒーしらふじ」のようである。

画像43




「はて、旧白藤小学校はどこだろう?」


そう思いながら辺りを散策すると、こんな看板が。

コーヒーしらふじ=旧白藤小学校


だったようである。
閉校になった旧白藤小学校の校舎で、カフェを開いてるんですね。
それが「コーヒーしらふじ」。
探検隊は駐車場のベンチで一休みしてから、
帰還の途に就いた。

「遠くて近い秘境駅を探検してみた!」

おわり。

画像44


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?