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リハビリテーションの研究はすぐに役立つことが必要か?

タイトルはよく相談されることでもあります。
「臨床に役立つ論文でないと意味がない」とか、「何でもかんでも平均値にするな」とか、これらのような言葉をよく耳にします。それの成否はさておき、こういった言葉が出てくる背景は一体何なのでしょうか

それらはその研究方法がもっている世界観に依存しているようです。

例えば、「すぐに役立つことが必要だ」と言うのは、決まって臨床研究をしている人です。なぜこのような言葉が出てくるのか、それは、臨床研究が「有用性」に重点をおいた研究方法だからです。役立つというキーワード自体が臨床研究法の利点を述べただけなわけです。

一方、基礎研究は「真理の探究」がキーワードです。なぜそのような現象が起こるかを説明することが、その役割です。真理の探究という視点から見た場合には、臨床研究の結果はどうしてそうなるのかわからない。極端に言えば、理解できないものを、効果があるがメカニズムのわからないものは患者さんには使えないということになります。

臨床研究や基礎研究は数字で表現できるので、量的研究と呼ばれます。
量的研究に対して対になる言葉は質的研究です。

質的研究のキーワードは「個別性」です。そのため、平均化や一般化することを嫌います。「それはそれ、これはこれ」という世界観です。人の数だけ世界があるという考え方です。そのため、量的な側からみれば、「だからどうしたん?」、「それで何が言いたいん?」みたいなことになります。もちろん、出てきた言葉などを少し抽象化していくという方法もありますが、しかしながら、それはそれでいいのです。そういう研究方法なのだから。逆に質的研究者から量的研究に対しては統計とか何でいるんだ、めんどくさい、そんなものは、結局嘘だろうという話が出てきます。

それぞれの研究法はそれぞれの利点を追求・強調する方法をとっています。それに対してどうこういうのは、好みの問題だけです。

タイトルのような言葉は、まるで車がバイクに「何で2つしか車輪がないんだよ!」みたいな話に近い。

だから相談されたらとりあえず、知りたいことに合わせて考えればいいと答えます。

大学で、研究法の講義を担当しているのですが、この辺りをかなり詳しく説明する必要があり、伝わりにくいところです。


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