悪いのは彼女だけか

シングルマザーによる子供の虐待死のニュースを見ていつも思うんだけども、虐待死に至るまでの母親の素行や事件の詳細を報じる際にはどういう意図があるのだろうか。

こんなにひどい母親がいるんですよ、と言いたいのか。これだからシングルマザーは、とか言いたいのか。そういう意図はないといわれても、そういうふうにしか見ない人は絶対にいるし、シングルマザー家庭への差別を助長する効果しかないように思える。

彼女がなぜシングルマザーになったのか、それは彼女が望んだ結果だったのか、なぜ家族や周囲の支援が得られなかったのか、そもそも父親はどんな人物で、どういう経緯で彼女を妊娠させなぜ今一緒にいないのか、など、もっと立体的かつ多面的に報じてほしい。

特にいつもいつもいつもいつも思うのは、父親は何してるんだということ。なぜ影も形も報道されないのか。女性を妊娠させて、子供を産ませて、でも結婚してないから何も責任はありませんよ、って何なのか。それを全く追求しないこの社会って何なのか。男のプライバシーは最大限守られて、当事者の女性はどこまでも責められる。過ちを犯してしまったのだから甘んじて受ける以外にない。いかなる事情もここに至る経緯も斟酌されない。

犯した罪を責められるのは仕方ないとしても、しかし子供がいるってことは父親もいるんだよ!女ひとりじゃ子供は作れないんだよ!父親にも責任あるだろう。直接手を下してないからって無関係ではないだろう。少なくとも母親とその子供を「虐待」の当事者に至らしめる、その第一歩にはかかわっているわけだから。別に実名と顔写真を出せとは言わないけど、少しは男の側の責任を明らかにするような伝え方があってもいいように思う。

仮に今は別の家庭を持っていたとしても、仕事で重要なポジションについていたとしても、それらはすべて当事者親子の犠牲の上に成り立っているのではないか。にもかかわらず良心の呵責も感じず、関係ないところからニュースを見てため息をつき、ひどい場合には当事者の女性を貶めるような発言をする…とか、すべては私の妄想だけど、でも何も情報がないからそんな妄想までしてしまう、とにかくそれくらい、こういうニュースの報道のされ方はアンフェアだし、それが積み重なってこんなありもしない妄想に怒りを燃やすような不毛なエネルギーを使うに至っているのである。

もちろん、虐待はダメ。育てられないなら、何らかのサポートを頼るべきで、子供の命を危険にさらす前に何とかする責任が親にはある。でもその責任は母親、父親両方が負っているはずであって、どちらかの存在がそもそもなかったかのように切り取られるのは、やはりおかしいと思ってしまうのだけど、わかってくれる人いるかな…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?