次女という生き物

私の育児における最大の目標は、可能な限り自分と似ていない人間を育てることである。素直で、親しみやすく、思いやりがあり、自信家で努力家。全部は無理かもしれないけど、方向性としてはそんな感じだ。そのため、とにかく子供たちに対してはしつこいくらいに愛情を言葉で伝え、しらじらしいくらいに細かく頻繁にほめまくり、むやみやたらにスキンシップをとるようにしている。

とくに下の子に関しては、ただ一番年下というだけでとてつもないアドバンテージを持っているので、わざわざ心がけるまでもなく愛を伝えてしまうし、何をやったってほめてしまうし、どうしたってスキンシップを取りすぎてしまう。そんなわけで、この春5歳になった次女は、ほんわかおっとりいつも笑顔の素直な子に育ってくれている(親バカ)。少々マザコンが過ぎるきらいはあるが、そこは今だけのことと大目にみれば、わが子育ては現時点ではまあまあ成功といえよう。

この次女という生き物、何がいいかって、とにかく愛にあふれている。それが顕著に表れているのがそのボキャブラリーだ。例えば「好き嫌い」の表現。少し前の話になるが、保育園のクラスのお友達の話をする際、特に仲の良い子を「だいすき」と言う。これはまあ普通。しかし逆に、苦手な子については、「嫌い」ではなく、「だいすきじゃない」なのである。彼女の辞書に「嫌い」という文字はない。彼女の持つ価値基準は「だいすき」か「だいすきじゃない」かの2択なのである。ほっこりにもほどがある。まさにハートウォーミング、胸があったかくなるエピソードではないか。(現在はさすがに「嫌い」も言うようになっている、と思う)

さらに今は、ただの好きでは飽き足らず、その気持ちの大きさ、強さをいかに表すかのバリエーションを獲得しつつある。最初は、両手を広げたり狭めたり、ジェスチャーで表していた。次は比喩。天井まで、屋根まで、空まで、最上級は「宇宙まで」。これもこれでかわいい。そして今は、数字で順位をつけているのだが、これがまた独特。「おねえちゃんとおとうさんがいちばんにだいすき」というので、「えー、おかあさんは?」ときいたところ、返ってきた答えが「おかあさんはぜろばんにだいすき!ぜろばんはいちばんよりすきなんだよ」。ゼロ番!その手があったか!

ちなみに今のところゼロ番に好きの栄誉にあずかっているのは母である私と保育園の担任の先生で、先生に毎日のように書いている手紙にも「ぜろばんにだいすき」と書いたところ、「なんて素敵な表現」と感激されたのはちょっとした自慢である(親バカ)。

独特のボキャブラリーに加え、超がつくポジティブ思考もまた私が次女を愛してやまない理由のひとつである。4~5歳と言えば、なんにでも興味関心を持ち「なんで?」「どうして?」と聞いてくるお年頃。これはよいことなのだけど、全部をまともに相手にしていられるかと言われたら私にそんな根性はない。というわけで、ついつい適当にごまかす、というズルイ手を使ってしまいがちである。しかしそんな時にも、次女は想像のはるかナナメ上をいくポジティブリアクションで大人の腹黒さを一瞬にして浄化させてくれるのである。

子供用のエプロンを縫っていた時、紐を留めるためのマジックテープに興味を持った次女。「これなあに?」と聞かれ、「こうやって、紐とエプロンをとめるんだよ。マジックテープだよ」と答えると「どうやって(エプロンに)つけるの?」。普通にアイロン接着なのだが、説明するのがめんどくさかったのでつい「秘密だよ。寝てる間に魔法でくっつけるんだ」とごまかすと、「え~まほう?やったぁ知っちゃった♪」と、まさか今自分が適当にごまかされたなんて想像もしない、むしろものすごい秘密を打ち明けられてしまったという興奮がド直球で伝わってくるリアクションをしてくるわけである。その純粋さに胸を打たれるとともに、自らの怠惰を恥じる母。適当な母でごめんね。でもありがとう、めっちゃ癒される!!

そんな癒しはつい最近も。私は平日は仕事をしているので、夕飯はほぼ週末に作り置きをして温めて出すだけ、しかもご飯におかず1品、汁物はあったりなかったりという力の抜きようである。でも、休日は多少の余力があったり、単純に残り物を使い切りたいなどの理由で品数が少し増えることが多い。先週もやはり平日は1皿~2皿だったところ、土曜日に久しぶりにごはん、味噌汁(これは長女が作った)、さしみ、おひたし、の4品がそろった食卓となった。夕飯の支度が整い、席に着いた次女がテーブルを見て一言。「きょうはパーティーだね!」一同、「え?なんの??」とキョトンとしていると「だって、お皿がいっぱいあるからパーティーなの。いつもはもっと少ないでしょ」。

なるほど、ひとり4皿×4人で16皿。確かに皿の数は多い。だからパーティー。内容は全く大したことのない食卓だけど、そういわれると頑張って用意した苦労が報われる気がする。ありがとう次女。あなたは私の天使だよ…

これから大きくなるにつれていいろいろな経験をし、「計算」や「処世術」なるものもだんだんと身に着けていったりしてしまうんだろうけど。それは当然のことなんだけど。でも、できるだけ長く、今のこのポジティブ癒し系お花畑ガールでいてほしいという希望のもと、私はこれからも次女をこれでもかというほどに甘やかしまくっていくつもりだ。

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