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【美しい彼 考察2】エモい2人の交差する心とすれ違い Season1 – 2

1話については前回いろいろ書いたが、すごく端的にまとめると、スクールカーストの底辺にいる平良が、カリスマ的美しさを誇るカースト頂点に君臨する清居に恋をして、喜んでパシられる話だった。
底辺と頂点で二人の間には大きな距離があるように感じられるが、2話では早くも二人の関係性に変化が生じる。
もはやファンの間では伝説となったエモいシーンが連続する2話について、特に清居の心情に着目しながら、二人の力関係の揺らぎを見ていきたい。

カーストトップの孤独なキング

クラスのトップに君臨する清居の周りには常に人がいる。
清居自身も同級生の肩に手を回したり、放課後もつるんだり、取り巻き達との関係を維持したいという気持ちが垣間見える。
しかし、2話の前半では、実は本当には友人たちと打ち解けていない清居の姿がこれでもかと描かれている。

例えば、清居たちは現在高校3年生。夏休みを前に友人たちとの間で進路の話題があがるが、卒業後の進路を聞かれた清居は言葉を濁す。

実は清居は芸能人になるのが夢で、ボーイズコンテストに自ら応募し選考が進んでいる。
しかし、取り巻きの友人たちには「いとこが勝手に送っただけ。(芸能人には)興味ない」とあくまでクールを崩さない。
それが嘘だと知っているのは、たまたまダンススクールに通う清居を目撃した平良だけだ。
清居は友人たちには自分の本音を話さない。

さらに夏休みに入り、両親不在の平良の家でみんなで集まっているときも、清居は常にスマホをいじって退屈そうにする。(※1)
女の子たちを呼んで庭で花火をしているときも、話かけられたときに適当に話を合わせるだけで、花火を手に取ることすらしない。
清居が自分から話かけたのは、清居が夢の実現のためにダンスに通っているという「秘密」を共有する平良に対してだけだ。

花火の最中、平良はアイスを買いに行かされるが、ここで平良にハッピーなハプニングが起こる。
「パシる」側のトップであるはずの清居が、自転車を持って平良を追いかけてくるのだ。
なぜ来たか聞かないのか?という清居の問いに、平良は「清居くん、居心地が悪そうだったから」と答え、清居はそれに反論しない。つまり、図星だったのだ。

伝説のエモシーン① 自転車二人乗り

清居は平良に自転車を漕ぐように命じ、荷台に平良と背中合わせに座って、平良の運転で川辺の道を走る。
のどかな風景にゆったりとした音楽が流れ、絵的にも非常に印象的なエモいシーンだ。

自転車で揺られながら、清居は平良に何故写真を撮るのか、と問い、平良は「透明人間になりたいから」と答える。
ファインダーをのぞくと、世界から自分だけが切り離された気持ちになって、一人でいてもいい世界にいる気がする、と。
清居はそれを聞いて「変なやつだな」と反応し、清居の顔が見えない平良は、清居はきっと「いつものウザッという顔をしている」と推測する。

しかし、実際はそんな顔はしていない。
実際の清居は、ウザっという顔とは真逆の、穏やかな柔らかい表情をしているのだ。

「吃音症」を患い人とかかわることが苦痛で、いっそ透明人間になりたいと願う平良。
一人にはなりたくなくて、たくさんの取り巻きを連れているけれど、心許せる友人はいない清居。
ヒエラルキーの「底辺」と「頂点」、生きる場所は違うけれど、「孤独」を感じている点で実は二人は共通している。

でも、平良はあこがれの清居と石ころのような自分に、共通点があるなんて露とも思わない。
「変な奴だな」という清居の言葉を言葉の通り受け取って、自分の気持ちなんて絶対に清居に理解してもらえないと信じている。
交差しているようですれ違う二人の心情を、清居の表情と平良のモノローグから、視聴者だけが窺い知れる憎い演出となっている。

伝説のエモシーン② 水の掛け合い

ところ変わって学校。二人乗りしていたことが問題となり、平良と清居は罰として、バスケのユニフォームの洗濯やボール磨きを命じられる。(※2)

洗濯したユニフォームを干し終わり、ボールを磨いていると、あまりの暑さに、清居は突然制服を着たままシャワーホースで水浴びをはじめる。
平良は、水も滴る清居のあまりの美しさに目を奪われる。

清居は平良にも水を浴びせ、なぜそんなにいつも自分を見るのか、と問う。
「清居くんが、綺麗だから」と答える平良を、清居は「ほんとキモいね、お前」と一蹴しつつ、「清居くんて呼ぶのやめろ。(中略)普通に清居って呼べ。」と伝える。
そして、二人で水を掛け合う、最高にエモーショナルなシーンが始まる。

清居が一方的に平良に水を「掛ける」のではなく、平良も時折清居からホースを奪い、水を「掛け合う」姿からは、一時的でも二人からヒエラルキーが薄れている。
平良に抵抗されて「生意気だ」と言いながら清居は心底嬉しそうで、平良も清居も、今まで見せたことのない心からの笑顔ではしゃぐ。

キングとスレイブの関係の揺らぎが、青春の1ページとして美しい映像と音楽で表現され、視ている私たちの心をわしづかみにする。

伝説のエモシーン③ 夜の花火

日が暮れた頃、ずぶぬれになった二人は平良の家へ行き、庭に制服を干して休憩する。
清居は平良に服を借りるが大きすぎてダボダボで、これまでのキング感が薄れ、平良との体格差を視聴者に意識させる。(※3)

みんなが居たときは花火には全然興味がなさそうだったのに、少し残っていた花火を見つけた清居は嬉しそうに一人で花火を始める。
笑顔で花火を振り回す清居はとんでもなくかわいくて、ピュアで、美しい。
誰もが目を奪われる、圧倒的な「美しい彼」がそこにいる。

ただただ清居を見つめるしかできない平良に「お前、花火嫌いなの?」と清居は問う。
平良は「そうじゃないけど、花火より好きなものがあるから」と答える。
この言葉の意味に、清居は気づかない。

座り込んで線香花火をする清居に魅了され、平良はカメラを手に取りファインダーを覗き込む。
「清居」と平良が初めて呼び捨てで呼ぶと、ファインダー超しの清居は「呼べたじゃん」と優しい笑顔を向ける。

1話では、平良が清居を勝手に撮って「二度と撮るな」と怒られるシーンがある。
横を向き、無表情でジンジャーエールを飲む清居の写真。(※4)
一方、今回撮れたのは、平良の方を向き、線香花火を持って笑顔を浮かべる清居の写真だ。
平良が清居を撮ったことを、清居は咎めなかった。

こうして二人の関係性のさらなる発展を期待させ、2話は幕を閉じる。

さて、次回第3話!高校生編ラスト!
二人の関係はどうなるのか…?

(続く?)

(※1)しかも清居がスマホを使っているのは、SNSなどの人との繋がりを目的としたものではなく、ゲームである。相当やりこんでいる様子で、無課金でありながらハイグレードな装備を獲得している。たくさん取り巻きがいるのに、暇つぶしにひたすら一人でゲームをする清居を想像するとなんだか苦しくなってくる。

(※2)1話では化学室の掃除当番を平良だけに押し付け取り巻きと騒いでいた清居だったが、ここではダルそうにしながらも一応ボールを磨いたりして、行動に違いがみられる。

(※3)いわゆる「萌え袖」が見られるが、正直にいうと私は初見では気づかず、この時点では清居を「受け」とは意識していなかった。今みるとダボダボ服の清居かわいすぎるのだが…。

(※4)しかし平良はこの怒られた写真をちゃっかり印刷し、1話で自慰行為のネタにしている。

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