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173日目(同じ釜の飯)

つい最近ヤッフォクで楯の会の制服が二着出品されていて少し話題になった。

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個人的に三島由紀夫に関してはほぼありきたりな情報しか知らない程度の門外漢ではあるが、僕が自衛官時代に三島由紀夫というキーワードで唯一テンションが上がった出来事があった。
おそらくどこの駐屯地もそうだったと思うが、定年退官を迎える自衛官が出ると駐屯地全体の人員がグラウンドに集まり、その定年退官者のスピーチを全員で聞いてその後、警衛所がある駐屯地の入り口まで並んでお見送りするのが通例だった。
自分が所属する中隊の定年退官者ならまだしも、小さな田舎駐屯地とは言え1000人くらいの隊員がいる中で、顔もろくすっぽ見たことないような隊員のスピーチは聞くのが億劫であり、形式的な行事が早く終わらないかと過ごすのが常だった。

その時も、駐屯地内で何度か顔を見たことある程度の他中隊の定年退官者を見送る行事で、定年退官者が登壇して始めたスピーチを心ここに在らずと言った体で聞いていた。
もう20年以上前のことで話の内容はほとんど覚えてないが、その定年退官者は自衛隊生活の中で一番の思い出として

「私が新隊員時代に市ヶ谷駐屯地にいた時、ちょうど三島由紀夫のあの事件が起きました」

と語ったのだ。
それまで上の空だった僕もさすがにそんな話には食いついて一生懸命聞いていたが如何せん20年という月日は長く、その内容は忘却の彼方なのであった。
おそらくあの日の市ヶ谷にいた自衛官の中でほぼ最後の世代の人が密かに同じ駐屯地にいたのだ。


三島由紀夫が総監室のバルコニーから演説をしていた時、下で様子を見守っていた自衛官たちは三島由紀へ野次を飛ばしていたという。
それに関して、自身も三島由紀夫のその事件にある種の憧れを抱いて自衛隊に入隊した浅田次郎が「歩兵の本領」で、三島由紀夫が急に来て決起を呼びかけても同じ釜の飯を食っていない奴から何と言われようが響かなかったんじゃないだろうかということを書いていたと思う。(これもかなり昔に読んだもので意訳に近いかもしれない)
その言説は元自衛官として凄く同感だ。

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