- 運営しているクリエイター
記事一覧
Overland Mermaid
深い青い暗い世界。
そこが私の居場所だった。
誰にも邪魔されない。
私だけの世界。
広いこの場所には
陸と水が半分づつ。
私1人には勿体無いくらい。
生まれてからずっと1人だった。
どこへ行くにも独りだった。
でも本当は
私はずっと見られていた。
"ヒト"と呼ばれるもの達に。
”今日から君は自由だ。”
ある日
私は突然1人じゃなくなった。
目の前にはたくさんの"ヒト"が
きゃらめる・くらっち
とある休日の昼下がり。
ドスドスと階段を駆け上がる音がする。
来る…ヤツが来る…!!
3…2…1…
「こらぁ、○○!」
ほらね。
「どしたんだよ。日奈子姉ちゃん。」
怒っている理由はとうに検討がついている。
だからこそ
最大限にシラを切って返事をした。
「今正直に言ったら許してあげる。」
いったいどんな悪の所業で
ここまで怒らせてるかって?
それは単純明快。
日奈子姉ちゃん
そっけない君の隣しか
明日は僕の誕生日。
朝起きたらきっと君が祝ってくれるんだろう。
なんて淡い期待を持ってみる。
スヤスヤと寝息を立てる君の隣で
僕は眠りについた。
午前6時。
目覚ましの音とともに起床し、
隣でまだ眠る天使の顔を拝む。
『飛鳥、起きて。』
少し体を揺さぶると
天使はゴソゴソと体を動かしはじめた。
『おはよう。』
そう言うと君はまだ寝ぼけているのか
「よっ」という口で軽く手を挙げた。
ほ
な つ の お は な し
真上をとうに過ぎた太陽がジリジリと地表を照りつける。
年季のはいった扇風機が縁側でカラカラと音を立てて廻り、蚊取り線香のけむがそれに乗って流れてきた。
平屋の畳に寝転び、呼んでもない夏の到来を全身で感じてみる。すると、線香とは違う甘い香りがふわっと鼻腔を擽った。
「入ってくるなら玄関から来いよ。」
「こっちの方が慣れてるの。」
「そんな来られ方すると寒気感じるんだけど。」
「はぁ?そう