『冒頭キャラミステリー杯』の感想置き場16~20

玄武聡一郎先生主催の冒頭キャラミステリー杯の感想その4です。

感想における自分のルールはこちら。

・1作品30分~60分以内(書きだすと1時間以上とか素でやってしまうので)。

・感情、感覚的な感想については、そう感じた理由を付記する。

・推理可能な(気がする、情報がある程度揃っている)作品についてはできるだけ推理する。

・読み違え、勘違いしていたら笑って許してください。


16.表裏同体『君が悪ければ僕も悪い』

独特な僕と彼の物語。読者への挑戦もあり、ミステリしてます。キャラとしての要素はほぼ、僕と彼の特異性によって成立している感じですね。けっこう不気味な作品。

思いつきやすいのは"解離性同一性障害"ですが、この場合は警察が「お前」「お前ら」といった個体認識をしていたり、僕と彼が個別の人格であれば人格同士がリアルタイムで会話していることもおかしな話です。警察とも3人で会話していたりしますし。なので廃案。

となると、「物理的に縦真っ二つ」「一心同体」「存在は違うが概念は同じ」といった言い回し、及びタイトルから"結合双生児"という解が浮かびます。これについては、解として否定する要素が浮かばなかったのですが、エグいと言いますか、デリケートな解だなぁとは思いました。そもそもミステリは往々にして不謹慎だったりはするので今更な話なのかもしれませんが。

"人面瘡"というのも思い浮かんだんですけど、さすがにオカルトが過ぎるかな……。

自殺か他殺かについては時間切れでした。僕と彼の言い回しに引っかかるものがあるのですが、どうにもロジックになりませんでした。ホワイダニット的には、彼女に別れ話でも切り出されて殺したんじゃないかなぁとは思うんですけどね。


17.我が家の座敷童子は名探偵

SF(少し不思議な)現代ミステリ。現代ファンタジーにはなりきらず、ちゃんとしたルールやロジックの下で成り立っています。ある意味では東川篤哉先生の「魔法使いは完全犯罪の夢を見るか? 」のような、異能(能力)は使うけど推理はロジックでと言った雰囲気を感じました。

『不思議なことなんて、この世にはないかもしれない』という一文が、それを裏付けするような印象を覚えました。好きな一文です。

何となく、短めの話を重ねながら解決していくのかな、って思いました。

幽霊や妖怪もルールの上で成り立っているので、そちら側の人物も出しやすくて拡張性のある設定、作品だと思います。

謎についてはこの段階では難しいかなぁ。物理トリックなどは苦手です。ストーカーという観点で考えますと、被害者の対人トラブルがなく、暴力といった被害もないことから、攻撃的なストーカーという感じがしないんですよね(拒絶型や憎悪型、親密希求型など)。そもそも、文章的には顔見知りの犯行を示唆している気がします。被害者を心配する過保護な家族とかだとあんまりだろうか。シスコンなお兄さんとか。娘を心配するパパとか。


18.隙間探偵~隙間女は謎を解かない~

こちらはしっかり不思議な人外探偵。零子さんは隙間を見つけるだけで、タイトルからすると推理しなさそうですよね。隙間という事件を見つけて、金田君が色々苦労しそうな関係性になりそう。

概念的な隙間という言い回しが魅力的でした。

一方で、最後が零子さんが謎を問いかけるだけ問いかけて、引きを作っているのが勿体なかったかなぁと思います。首吊りの状況描写がなかったので、読者的に推理する余地と言いますか、想像する楽しさ、次への期待が弱くなってしまったと思います。

無理にミステリらしい出題をする必要や義務はないのですけど、読んでいてキャラミスなので期待してしまったのはあったかもしれません。その分、2人の関係性やキャラクターはしっかり描かれていました。零子さんが一方的に振り回すだけでなく、金田さんが反撃しているところなど楽しく読めました。


19.エビフライ・エフェクト

タイトル1本釣りと言われがちではありますが、作中でもしっかりと絡んできます。小さな謎を追う学園ミステリー。青春や恋愛、そういった要素もあるので、ミステリーとして読まなくても楽しめそうです。

とはいっても、ミステリーの定義から会話が始まるのを考えると、やっぱりミステリーなのかもしれません。こういった言葉遊び的な(ひと昔前なら戯言めいた)会話もミステリ作品ではよくあるものですし。

2人の関係性が丁寧に描かれており、タイトルの意味も含めてちゃんと意味があり、もしかしたらエビフライ・エフェクトが作中の謎についても関わってくるんじゃないかなぁって思いました。

エビフライで蓮様、地味子さんに落とされた可能性があったりしそう。

作中の話にあまり関係のないん妄想なんですけど、地味子さんがスクールカースト上位の蓮様を振っても付き合っても、いじめられそうですよね。とか不穏な想像がよぎったのはミステリ脳過ぎるかもしれません。


20.刑事 九十九結衣はヴァンパイアなので利き血ができます。

人外探偵。アイデアが素晴らしくて、それを踏まえた魅力的なタイトルだと思います。吸血鬼だから血の味が分かる、それを推理に使うのかな? というイメージが沸きますし、タイトルだけでキャラが立ってるんですよね。

ちょっと世界観がはっきりしなかったことが勿体なく感じました。吸血鬼の存在する現代世界なのかなぁとは思いましたが、そのあたりのルールが見えてこなかったので。ミステリとして読む際に、どのあたりまで現実世界のルールを適応していいのかなーと。噛み跡の唾液からDNA鑑定とかありなのかな……?

謎について。ヴァンパイアの同族殺し、血を吸う意味はない、というところから、偽装の可能性もあるんですよね。ヴァンパイアによる殺人と思わせるために、とか考えたんですよね。この段階の情報だけで考えるには無理があるとは思いますけど。とはいえ、不可解な死体という謎はミステリーの醍醐味で、とっても色々考えたくなる謎だと思います。

犯人がヴァンパイアと人のハーフなら、ヴァンパイアに恨みがあって殺すとか、そういった動機が作れそうとか妄想しました。犬歯の問題もクリアできますし。