『冒頭キャラミステリー杯』の感想置き場31~35

玄武聡一郎先生主催の冒頭キャラミステリー杯の感想その7です。

感想における自分のルールはこちら。

・1作品30分~60分以内(書きだすと1時間以上とか素でやってしまうので)。

・感情、感覚的な感想については、そう感じた理由を付記する。

・推理可能な(気がする、情報がある程度揃っている)作品についてはできるだけ推理する。

・読み違え、勘違いしていたら笑って許してください。

・注)31からちょっと駆け足気味です、匿名期間に間に合わせたかったので。すみません。

31.雨を呼ぶ少女と願いの対価

SF(少し不思議)な物語にしてキャラ『の』ミステリー。ヒロインの謎についてお話です。雰囲気的に辻村深月先生の「ぼくのメジャースプーン」や「名前探しの放課後」を思い出しました。

メインのお話が2人の関係性や雨宮さんの謎にまつわることなので、キャラがとっても立っています。一方で、ヒロインの雨宮さんが毒舌過ぎてちょっとツンツンを通り過ぎているかなぁとも感じました。この辺りは個人差があるとは思いますが、悪人ならいいのですが主要人物が主観の人物をなじる行為は少し読者にも心構えが要るかもと思いました。特に、この手の冒頭企画では、タグやあらすじによる補足ができないので。


32.現代ミステリー考案店

2人称から始まる独特な作品。キャラミス参加作品の中でもかなり捻った作品だと思います。謎としては最後のクイズよりもこの語りかけてきた人物だと思います。

トリックのネタは幅広く、作者様の知識の広さを感じます。クイズについては"かな入力"でしたね。

無理に謎としてクイズを出すよりは、語りかけてきた彼女(?)について、もっと情報があったほうが連載として考えれば面白そうかなぁと思いました。店長についてはあくまで、ミステリーのネタを出す役割として、個性は出されていないので、メインとなるのは彼女かなぁと思います。


33.魔王シャーロックホームズと魔犬バスカヴィル

キャラ名にホームズシリーズの名が使われたファンタジーミステリ。

ネタを知っていれば、人物の関係性や役割を想像しやすくて効果的に機能しますね。一方で、世界観がちょっと違和感を覚えました。理由は、勇者として過去処刑された人物が『神の子』『オルレアンの乙女』と殉教者であるのに、ここへ来て、自殺したのが勇者『ワトソン』なんです。

もちろん、これは殺され方の違いを示すという意味にも通じますが、世界観や命名則からずれてしまうので読んでいて、あれ?と思いました。

自分は比較的、理由や必要性を重視する人間なので、こういう分かりやすい意味がある名前をつける際には何らかの理由があると考えるのですよね。なので、この違いにもきっと意味があると思うのですが……。


34.桜宮財閥ご令嬢アイの妄想プロファイリング

ものすごい状況から始まる2人のやり取り。緊張感のない監禁状況の中で行われるプロファイリング。と、なんというかインパクトと真新しさを感じます。

海外ドラマでプロファイリングといえば「クリミナルマインド」が有名ですね。自分はまだ見れていないのですが。

話を戻しますと、この場合、監禁の必要性とは何だろう、となるわけです。もちろん、監禁状況とそれに順応してる主人公と、なぜか気にせずお茶を飲みながらミステリ問題を出す、監禁した張本人であるアイさん。

逆に、監禁という行為によってキャラクターが立つとも捉えられます。監禁したからこそ、監禁状況を特に気にせず進めるからこそ、2人の異質さが際立つと言いますか。この場面がもし、喫茶店や学校の教室とかであれば、2人の性質は際立つことはなかったでしょう。

なので、今後がどのように展開するか、この監禁の意味が出てくるかどうかという意味で気になる作品でした。監禁の意味がなかったらなかったで、ちょっとしたコメディ的な肩透かしにもなりそうです。


35.妙能力者達のタソガレ・アフタースクール

妙な能力、微妙な能力という意味での妙能力かなぁと思ったり。妙能力についてはメインになるのではなく、どちらかといえば物語上の潤滑油に近いのかな。小能力と作中でも言われていますし。

内容は何気ない学園ミステリ。出題者となる主人公と、解答者となる幼馴染。情報の優位性を持ちながら観察するという行為は倒叙ミステリの読者のような感覚に近いのかもしれません。この作品においては、読者にも犯人は明かされていませんが。

冒頭が倒叙ミステリにおける倒叙部分に近く、一瞬、冒頭の「彼」がラブレターを幼馴染の机に動かしたのかなとか考えたのですが、それは妙能力によって(悪戯ではないと)否定されました。ミステリとしてフェアにするために、こういう使い方もあるんだなぁと思うと目から鱗でした。