『冒頭キャラミステリー杯』の感想置き場36~40

玄武聡一郎先生主催の冒頭キャラミステリー杯の感想その8です。

感想における自分のルールはこちら。

・1作品30分~60分以内(書きだすと1時間以上とか素でやってしまうので)。

・感情、感覚的な感想については、そう感じた理由を付記する。

・推理可能な(気がする、情報がある程度揃っている)作品についてはできるだけ推理する。

・読み違え、勘違いしていたら笑って許してください。

・注)31からちょっと駆け足気味です、匿名期間に間に合わせたかったので。すみません。


36.変わり者探偵

変わり者探偵、とありますが、探偵小説の探偵はだいたい変わり者だよね、というのは置いとくとして。

事件そのものは小さなもので、キャラクターにウェイトを置かれています。むしろ、事件そのものがキャラ造形のために与えられたと言ってもいいかもしれません。推理の仕方やスタンスが見て取れるので、今後の展開の例示とも捉えられます。

作品としては1話目が完結としてまとまり過ぎてしまったかなぁと感じました。次話へ読者へ導く、興味を引くものが弱くなってしまったと思います。

ハシビロコウやら夢の話やら色々ネタを仕込まれていて、キャラのインパクトは強いです。


37.来る日、君は最悪な死にかたをするだろう。

これはー……。好みが分かれると思います、と先に宣言しつつ。

自分はどちらかというと否定的です。作中いくらかコメディタッチな部分はあったものの、タイトル含めて全体としては落ち着いたテンポの物語として印象を受けていました。

死刑、しかも冤罪で死ぬという状況において、コメディのようなオチをつけるのは、(もちろん、物語の構成手法として状況をひっくり返すというのは効果的ではありますが)なんというか梯子を外されたような感覚に近いものを覚えました。

そういう意味で好みが分かれる作品だと思います。


38.少年探偵の助手は謎が多い

何はともあれ、いろはさんのキャラの濃さというかアクの強さ。その分、いろはさんは倫理観やらを犠牲にされているみたいですが。

やや、フィクション感の強い、現代もの設定。国会を通した特別捜査員である少年探偵、謎の美女のいろはさん。しかもいろはさんは中学生の貞操を狙っているという。

謎についての焦点はいろはさんというキャラが焦点ですね。事件は起こったばかりなので。そのいろはさんの謎についてですが、もう少し読者側にとって想像が膨らむものがあったらなぁと思いました。

なぜかといえば、警察が調べても経歴不明の、美女、変態、料理も仕事もできる有能、だけど変態。と既に、経歴以外は明らかなんですよね。じゃあその経歴へと繋がる何かしらの示唆は何もなくて。

作品として考えると、少年探偵が謎の変態美女と事件解いちゃうよ! となるわけです。主人公も彼女の謎に対して興味がないわけではないけれど、強い執着があるわけでもないように見えます。つまり、謎が読者の興味を煽る謎になりきれていないので、結果的に次話以降に対する興味が弱くなってしまったかなぁと思います。


39.題名の無い絵

ほぼ短編のミステリ作品。とりあえず、序盤から掛け合いがコミカルで個人的にはこの辺りの台詞回しが結構好きです。「名探偵はいらっしゃいますか!」「私が名探偵だ!!」はずるいと思います。漫画的ですよね。

一方で、すさまじい勢いで解決まで書ききった作品だと思います。これはこれですごいことです。文字数的には苦慮されたことと思います。

その反動と言いますか、謎解きもけっこう急いでいる印象を受けて、謎解きのロジックのあと、読者が飲み込み切る前に、犯人指名、動機当て。と、怒涛のように進み、〆てしまっています。

無理にまとめずに前半のキャラ紹介と導入の流れのように、題名のない絵の名前当てもじっくりと書かれてもよかったかなぁと思います。ロジックも納得のいくものでもありましたが、もう少し補強されたほうがミステリらしさがあったかもと思います。若干、クイズっぽい? って感じでしたので。


40.氷の棺

SFミステリ。ここへ来て、ガチのSFです。

SFしかも宇宙系のミステリってあんまり見ない気がします。近未来系とかロボットものとか、あまり自分もSFミステリ読まないのでアレなんですけど。

SFミステリってジャンルだけでいえば石持浅海先生の『BG、あるいは死せるカイニス』とか、森博嗣先生の『女王の百年密室―GOD SAVE THE QUEEN』とか思い浮かびますけれど。宇宙系ではないんですよね。

さておき。

キャラミスなのにキャラよりもミステリ色を強く押し出してきた作品。構成としては倒叙ミステリに近く、犯人及び、犯人のやったことはほぼ明かされています(未判明部分もありますが)。どちらかといえばホワイダニットがメインかなぁと思いました。

代償と言いますか、現代もの以外でやる以上の必然ではあるのですが、世界観やルールに対する文字数の都合かキャラの掘り下げが最低限になっていると感じました。