映画ポスターから見る海外と日本のデザイン
こんにちは
Creative.Divの村上です。
映画のパッケージやポスターを見て「なんかごちゃごちゃしているな」「受賞歴推しの圧がすごいな」と思ったことはないでしょうか?
今回は、なぜ日本と海外で映画ポスターのデザインが違うのかをいくつかの事例から掘り下げていきます。
■事例.LA LA LAND
アカデミー賞を6部門受賞し、日本でも特に話題になった作品です。
※受賞したのは「監督賞」「主演女優賞(エマ・ストーン)」「撮影賞」「美術賞」「作曲賞」「主題歌賞(City of Stars)」の6部門
まずは、アメリカ版のポスターを見てみましょう。
タイトルと1画像だけのシンプルなデザインです。真夜中で街灯だけが光っていて、主演達が踊っているのを照らしています。
次に、日本で上映された時のポスターです。
「アカデミー賞・キャッチコピー・キャスト・公開日」とテキストが増え、画像も複数シーンを切り取っていて、情報量がかなり増えました。
最後に、韓国版です。
アメリカのデザインと構図は同じです。
キャスト・アカデミー賞の情報は載っていますが、フォントも小さく色も薄いので、違和感はないです。
画像はアメリカと違って、夜明けで抱き合っているシーンになっています。
比べると、日本は海外と比べて、アカデミー賞などの評価、複数のシーン、コピーを入れることで映画の内容や魅力を伝えようとデザインしていることがわかります。
他の国のデザインが気になる人は、15か国のデザインをまとめている記事があったので、ご覧ください。
■事例.万引き家族
日本→海外の事例を事例を紹介します。
まずは、日本版
監督の有名作品名が載っています。
次に中国版
イラストになりました。監督名や作品名もイラストに合わせたデザインになっていて、左下に情報が詰まっていますが、違和感はそんな感じません。
日本のデザイン変更と比べると、世界観も含めごちゃごちゃしたデザインになっていません。
中国版のポスターを作ったデザイナーの黄海さんは、他にも「千と千尋の神隠し」や「となりのトトロ」のポスターを手掛けたことでも有名なデザイナーさんです。
■事例.パラサイト
2019年に公開された韓国のブラック・コメディスリラー映画です。
第72回カンヌ国際映画祭では韓国映画初となるパルム・ドールの受賞を果たし、第92回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞し、非英語作品(英: Foreign-Language Film)の作品賞受賞は史上初めてということで話題になった作品です。
まずは韓国版から見ていきましょう。
一見、とある家族のワンシーンのようですが、棒立ちしてこちらを見る父親らしき人・左下に横たわる足・目に入った黒線と白線が、独特な雰囲気を出しています。
次に日本版
受賞歴・コピー・見出し・サブタイトルがついてこちらも情報量が増えています。韓国版と比べると、目の黒線が全て白線に統一され、画面下の足もなくなっています。どちらも映画の中で重要な要素でしたが、変更されてしまっています。
最後にイギリス版です。
ポップなイラストになりました。イギリスでは横長のポスターがポピュラーなようです。韓国版とかなりデザインは変わりましたが、映画の内容に合わたデザインになっていて、カンヌのトロフィーが隠れているのもポイントです。
■事例.あなたのままになるために
2015年に公開されたスペイン映画です。
乳がんの告知を受けた主人公のマグダががんと闘いながら、子供たちに母としての愛を残す。~~~~お話です。
本国版では、シンプルですが全体的に暗い印象を受けます。
日本版では、暖かみのあるデザインに変わり、子供も登場していますね。
主人公マグダを演じたペネロペ・クルスさんは、スペインの人気女優ということで、デザインされたそうです。日本でそこまで知名度が高くないことを考えると、個人的には良いデザインの変更だったのかなと思います。
■数字から見た要因
年間の公開本数
また、2020年はコロナの影響もあり少なくなりましたが、2010年の公開本数716本から、2019年が1,278本、2020年でも1,017本と、10年間で1.4倍以上に増加しています。
日本の映画規模
世界の映画市場のランキングは、1位アメリカ約1.1兆円、2位中国8,200億円、3位の日本が2,000億円です。
日本の映画市場が世界の中でも大きく、年間の公開される本数が段々増えているからこそ、より多くの人にまず興味を持ってもらうために監督や様々な受賞歴など色んな情報をパッケージやポスターに追加していることが予想できます。
まとめ
色んな事例を見ると、日本のデザインが違うのは、以下の要素がありそうです。
・日本では広告、海外では作品の一部
・パケ買いしてもらうためのデザイン
・映画業界の市場規模が大きいことも要因の一つ
イギリスや中国、韓国の事例を見ると、日本がごちゃごちゃしたデザインが意外と好んでいるのか、デザインよりも情報を重視しているのかもしれませんね。
海外と日本のデザインが違うことは、クリエイティブを作る中でよくある悩みなので、こう言った事例から考えていけるといいかもしれません。
参考資料
https://www.globalnote.jp/post-14369.html
この記事はDigital Identity Creative Div.アドベントカレンダー 12日目の記事です。
明日の担当は松下さんです!