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僕たちはあの日家族になった8






8




○○:着いた〜!




オランダのアムステルダム・スキポール空港に代理人として正式に契約していた美波と共に降り立った




美波:騒がない!



引率の先生かのような美波がスマホ片手に○○を叱っていた



○○:だって〜
海外って独特な匂いがして来た〜って感じするんだもん。

美波:遊びで来たんじゃないんですよ。
それに今、トラブル発生中なんで少し大人しくしてて……っていない!



突如として走り出す○○を目で追うとお土産屋に入って行った



5分後…


紙袋を持った状態で帰ってきた




○○:お土産買っちゃった 笑

美波:それは…オフに観光も兼ねて買いに行くって言いましたよね!?
ってかいつ両替したんですか!?

○○:前に遠征来た時の残りだよ?

美波:そうですか…でも勝手な行動はやめて下さい!

○○:は〜い。
でも、今ので全部使っちゃったから両替はしたいな〜

美波:……それはやるべき事やってからにしましょう。着いて来てください。

○○:うっす。




怖い顔をしながらスタスタと○○の前を歩き出し空港を出る

すると空港近くの駐車場の中の車に近づき手当たり次第運転席を覗いていくとそのうちの一台のドアをノックする


コンコン



美波:起きてください!

??:……スゥ…スゥ…


ゴンッ


??:…ハッ!



車のボディが少し凹んだんじゃないかと思わせるぐらいの力で殴られた音を聞いて


その人物は美波の怒った顔に怯えながら車から降りて来た





??:…寝ちゃってた。苦笑

美波:見れば分かります!
お仕事でお疲れなんでしょう…とはいえ久しぶりに息子さんに会えるって日にそれは無いと思います。




そこにいたのは○○の父親だった




○○:……美波さん…そこ一瞬どいてくれる?

美波:…うん。





美波は言われた通り左に少しずれると
背後にいた○○の蹴りが右側から父親のお腹にヒットする




○父:グフッ……蹴るとは…

○○:会って言うことは?

○父:……久しぶり息子よ。

○○:もう一回蹴られたい?

○父:やめて!
次蹴られたら肋骨折れる…

○○:…ハァ…母さんは1番だけど、さくらも蓮加も寂しがってるんだからたまには帰って来なさい。

○父:……有給取ります。

美波:(この親子どうなってんだ…)




呆然としている美波を他所に○○は車のトランクに2人の荷物を載せて○○と美波は後部座席に座り目的地に向かう事に




○父:まず練習場の近くのウィークリー物件を借りたからそこに向かうぞ。

○○:父さんも住むの?

○父:そのつもりだけど…ダメか?

○○:オレは良いけど梅澤さんどうすんの?
男だらけの家に女性1人は流石に嫌でしょ。

美波:それなら平気ですよ。
私、近所が家なんで。

○○:どこの近所?

美波:練習場です。

○○:マジ?

○父:日本に住んでると思ってたのか?

○○:うん…

美波:大学の時にこっちに来てからずっとオランダ住みです。

○父:恋人は!?

○○:…その質問なに?…浮気でもする気?

○父:そんな訳ないだろ…

○○:母さんに今の話されたくなかったら
運転に集中して!

○父:…はい。

美波:一応言っときますけどいませんよ。笑
(なんか2人って友達みたい…)

○○:……仕事が恋人ってヤツですか?

美波:そうね。



ほとんどが美波の身の上話しだったが話題の尽きない車内に終わりの時間がやってきた



○父:そろそろ着くぞ〜




到着したのはレトロな街中にあるリビングが広い2LDKの一軒家だった




○父:ここだ。

○○:なんか古そう…

○父:外装はな。笑
でも、中はリフォームしてすぐの最新だぞ?

○○:へぇ〜




ガチャ




○○:本当だ梅澤さんすげ〜!



建物内はどちらかと言えば別荘のような暖炉もあるような西洋的な内装でとても綺麗だった

 

○父:なぜオレじゃない!!

○○:だってこれ決めたの梅澤さんでしょ?

美波:よく分かりましたね。笑

○○:父さんだったらホテル借りそうなんで。

○父:って事はウィークリーの物件借りたって言った時から…

○○:こういうキッチン使えるところとか女性の方が気が利きそうだし。

何より面倒くさい事が嫌いな父さんが料理しなきゃいけないこういう物件借りないだろうからね。

○父:それでも…最終決定はオレです〜!!

○○:子供か!

美波:フフッ






移動で疲れた○○達はすぐに部屋割りして決めた自室にすぐ行き明日に備え

美波は久しぶりの自宅へと帰って行った






次の日




○○:…おはよう。

○父:おぅ。


リビングのソファーにノートパソコンと向き合っている父がいた


○○:仕事してるの?

○父:ああ。
ドイツとオランダ時差がないの助かるわ。

○○:そっか朝飯は食べた?

○父:以前は朝飯なんて食べるタイプじゃなかったのに変わったのか!?

○○:……蓮加が毎朝起こしに来るから。

○父:妹達と本当に仲良くなったな〜
なんかシミジミするわ。

○○:そう?

○父:初体験がさくらってのもシミジミするわ〜




○○は父の言葉に恥ずかしいと言うより
ビックリしていたそして同時に睨みつけた




○○:………母さんか…

○父:あの家壁薄からな。笑

○○:日本とドイツの距離が壁1枚の筈ないよな?

○父:近況報告聞いただけだ…だから母さんには怒るなよ?

○○:怒んねーよ。

○父:それなら良い。笑

○○:にしても良い人じゃんあの人。

○父:今更か!?

○○:そりゃこっちは父さんと違って引っ越しの時が初対面なものでね!!

○父:あの時は悪いと思ってる。苦笑
さくらと蓮加の編入を考えたら急にはなるけど春前が良いって話になってな。

○○:付き合ってる人がいるってのは前々から知ってたけど子持ちなんて一言も聞いてなかったしな!

○父:でもそのおかげで…

○○:皆まで言うな///

○父:笑




やっと恥ずかしがった息子を見て大爆笑の父




○父:でも正直美月ちゃんとの方が先だと思ってた。

○○:……それも皆まで言うな…

○父:お前中学の時好きだっただろ?

○○:時代も変われば好きも変わるんだよ!

○父:本当にそうか?

○○:………

○父:俺が言えるのは悔いが無いように生きろ。
子供にとって学生時代は長く感じるけど、なんだかんだ人生なんてあっという間に終わるからな。

○○:良い事言ってくれてる所悪いんだけど…今何時?

○父:7時45分。


前日、美波とクラブ関係者に挨拶するからと言っていた時間を過ぎていた





○○:なんで起こしてくれないんだよ!!

○父:良い大人なんだから1人で起きろ!!

○○:今、子供って言ってただろ!!
親の責任果たせや!!

○父:それとこれとは別!



ガチャ


そんな言い争いしている2人の前に鬼の形相の人物が現れた




美波:うるさい!!

2人:シュン…

美波:7時40分に家の前に出ててって昨日言いましたよね?

○○:はい…

美波:いま何時?

○○:……7時45分です。

美波:○○はさっさと行く準備する!

○○:…呼び捨て……

美波:悪い?

○○:全然!




○○はすぐに身支度を整える





美波:お父様にも○○はいつも蓮加ちゃんに起こして貰ってるから初日だけでも起こしてあげて下さいって昨日言いましたよね?

○父:…はい。

美波:分かっていながら起こさないのは寝坊した○○より罪重いですよ?

○父:…すみません。




そこにスパイクと練習ウェアをカバンに詰めた○○がダッシュで走って来た



○○:もう行けます!

美波:チームによっては遅刻だけで数十万とか数百万の罰金がある所があるんですから気を付けて下さい。

○○:数百万!!

○父:破産だ!

美波:ハァ……自覚持って下さい!

2人:ごめんなさい…






こんなハラハラした初日ではあったが
アヤックスのゴルフ場の様な練習場での日々は過ごしやすくさすがオランダを代表するクラブだと言わしめるものだった

 




2日後
練習終わり帰りの車





美波:今日の練習どうでした?

○○:オランダ語は相変わらず良く分からないけどキャプテンの人はよく話しかけてくれた。

美波:ドゥシャンですか?

○○:そう!
あの人英語も喋れるらしくて助かってる。

美波:プレミアでプレーしてたからでしょうね…というか英語喋れたんですね!?

○○:勉強は嫌いだけど、英語は幼少期から習わせて貰ってたから流暢とまではいかないけど理解できるし喋れるよ?

美波:勝手にバカだと思ってました…苦笑

○○:バカではあるけどね……って失礼な!!

美波:笑

○○:後は…サブ組の練習試合に参加させて貰ったけどアヤックスって相変わらず特異的なポジショナルプレーだね。

美波:ポジショナル…ね。

○○:笑

美波:ちゃんと帰ったら調べるし!

○○:苦笑
簡単に説明すると…この現代サッカーにおいて戦術ってのは大きく分けて3つになるんだけど…

美波:それしか無いの!?

○○:まぁね。

美波:…本当に勉強しよ。

○○:契約とか法的な事が専門の梅澤さんが別にそこまでしなくても。笑

美波:私が目指してるのは選手に寄り添える代理人…だから詳しくは分からなくても話しが分かるぐらいにはならないと。

○○:……梅澤さんが代理になってくれてったかも。

美波:かもは余計です!

○○:笑





その後その日の出来事を車内で喋りながら家の前まで美波に送って貰うと






美波:明日はオフなので通訳も兼ねて観光地案内しますね?

○○:明日オフなのか…練習すげ〜楽しいのに…

美波:サッカー少年からしたらオフの方が苦痛かもしれないですけどちゃんと休むのもお仕事です。

○○:分かってますよ〜
それじゃ明日はよろしくね?

美波:はい。




走り去る車を見送り家に入る




ガチャ



○○:ただいま〜

○父:おかえり。客来てるぞ。

○○:客?




来るまで隠れていたのかソファーの裏側から登場したのは顔が分からなくてもすぐに分かる人物だった




??:来ちゃった!オランダ!!

○○:……美月!
なんでいるんだよ!

美月:夏休みだから?

○○:そういう事じゃない!

○父:俺が空港に迎えに行ったんだ。

○○:父さんは美月が来るの知ってたの?

○父:あぁ。

○○:なぜ教えない…

美月:私が来るって知ったら○○…なんて言う?

○○:受験生だろ…かな?

美月:それが分かってるから言わなかったの〜

○○:…とはいえ勉強どうすんだよ。

美月:飛行機の中でもちゃんとやってたし!
とはいえ息抜きも大事だからってお小遣いとママの支援のおかげでで遊びに来れた!

○○:安くないだろ…

美月:そうなんだよ…だから飛行機代しか無理でさ今日から帰るまでここ泊まるから。

○○:別にいいけど美月の寝る部屋…

○父:お前の部屋な?

○○:は?

○父:当たり前だろ?
ソファで寝させられないだろ。

美月:私はそれでも良いって言ったんだけど○○パパが…///

○○:……ハァ…昔は一緒に寝た事あるし別に良いよ。

美月:やった///

○○:とはいえ寝相悪いんだから睡眠妨害だけはしてくるなよ?

美月:いつの時代の話ししてるんですか〜!

○父:笑





幼馴染らしい微笑ましい会話を聞いて1人嬉しそうにしている父親






○父:そういえば○○は明日オフだろ?

○○:らしいね。

○父:美月と一緒に観光して来いよ。

○○:いいけど梅澤さんもいるよ?

美月:梅澤さん?

○○:俺のサッカーの代理人。

美月:へぇ〜

○○:出来る女って感じの良い人だよ。

美月:女の人なんだ…

○○:なんだよ…嫉妬か?笑

美月:…そんなのするわけないでしょ///

○○:笑

美月:…………





妹2人に色々と先を越された美月は

○○と美月の思いをある程度知っている父親の力も借りながら怒涛の追い上げを見せようとしていた



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